菅官房長官が記者会見で、2013~2017年の桜を見る会招待者名簿は、行政ファイル管理簿にも記載がなく、同意手続きをおこなわないまま「廃棄」されたとして、公文書管理法に違反していることを認めました。

 

 2013年から2017年の桜を見る会の招待者名簿をめぐる問題のきっかけは、私の質問主意書に対して、安倍内閣が12月17日おこなった答弁書にあります。

 

 政府は2018年4月1日以前は、桜を見る会の招待者名簿は1年保存文書と説明してきており、1年以上の保存文書は、行政文書ファイル管理簿に記載し、保存期間終了後、廃棄した場合は廃棄簿に記載することが公文書管理法など法令で定められています。そこで私は12月4日、質問主意書で、”「廃棄簿」には、2013年から2017年の「桜を見る会」招待者名簿を廃棄した年月日はいつと記載されているのか”と質問しました。

 

 これに対し、安倍内閣は12月17日、「御指摘の平成二十五年から平成二十九年までに開催された各「桜を見る会」の招待者名簿を含む各「桜を見る会」の招待状発送業務に関連する文書については、紙媒体及び電磁的記録のいずれも廃棄されているが、各文書の具体的な廃棄日等は不明である」との答弁書を決定しました。

 

 廃棄簿に記載していれば、廃棄の日時がわからないはずがありません。答弁書をうけて、内閣府担当者に確認すると、廃棄簿への記載がないという、趣旨の説明です。驚いて、公文書管理課にもすぐに確認しましたが、公文書を廃棄したのに廃棄簿に記載しないのは明白な行政文書管理ガイドライン違反です。

 

 12月30日、毎日新聞の、一面トップに、「桜名簿 廃棄記録なし、 13〜17年度 管理指針に違反」の見出しが踊りました。年明けてから、メディアは、菅官房長官への記者会見で、廃棄簿への記載、管理簿への記載、法令違反を追及。桜を見る会追及本部でも1月9日のヒアリングで、大きな議題となり、政府は、行政文書ファイル管理簿に記載したかどうかわからないという説明をしました。私は、行政文書ファイル管理簿に意図的に記載しなかったのか、それとも記載したものを削除したのか、どちらかではないのかと指摘し、さらに、一度、記載したものを削除できるのか調べてほしい旨発言しました。

 

 そして、1月10日、菅官房長官は、2013年から2017年の桜を見る会の招待者名簿をめぐり、公文書管理法違反を認めました。

 

 問題は、なぜ、こうした公文書管理法違反がおこなわれたのか、という点です。

 

 菅官房長官は、「事務的な記載漏れ」であり、公文書管理への職員の意識が原因とし説明します。

 

 しかし、5年間の間にいろんな人がかかわったであろうに、5年も続けて「事務的な記載漏れ」がおこるのかという点には大きな疑問があります。実際、同時期に、同じ内閣府人事課(記録・調査係)がとりまとめた名簿でも「東日本大震災追悼式参列者名簿」は行政文書ファイル管理簿に記載があります。「事務的な記載漏れ」ではなく、意図的な未記載だったのではないのか。公文書管理法を無視してでも、これは記載してはならないということが5年間引き継がれたのではないのか。

 

 公文書を国民の共通財産にし、国民の監視のもとにおくために、行政文書ファイル管理簿はインターネット上で国民に公開されています。はっきりしていることは、行政文書ファイル管理簿にも記載せず、したがって廃棄簿にも記載しないようにすれば、招待者名簿の存在自体を国民の目から見えないようにし、文書を恣意的に破棄することが可能になるということです。

 

 さらに、この問題を考える上で、第二次安倍政権になってから、桜を見る会の招待者名簿の決裁をとらなくなったことも、合わせて見ることが大事です。

 

 私が確認した、国立公文書館に移管された、2006年桜を見る会では、当時の招待者名簿の最高決裁は、小泉総理大臣。当時の安倍官房長官の決裁印もあります。ところが、過去には総理大臣決裁をおこなっていた、桜を見る会招待者名簿が、第二次安倍政権になって、決裁簿に記載がありません。政府によると決裁簿で最後に確認できるのは2010年、民主党政権のときに招待者名簿の決裁をおこなっているのが最後で、2011年、2012年は桜を見る会は中止になっており、第二次安倍政権が誕生して以降の2013年以降は、決裁が確認できないとのことです。2019年も決裁をおこなっていないとの説明です。

 

 第二次安倍政権から招待者名簿の決裁をとらなくなった理由について、当時の担当者はよくわからないといっているにもかかわらず、内閣府は「事務の簡素化」のためだったんだろうと説明しています。推論を述べるだけで、決裁手続き変更の当時の議論等をしめす文書の提出もありません。

 

 決裁をおこなわなければ、決裁簿に記載されることもありません。この点でも、国民の目から桜を見る会の招待者名簿の存在を隠し、恣意的に破棄できる道をひらいたといえます。

 

 第二次安倍政権になってから、桜を見る会の招待者名簿の扱いがまったく変わったということが、はっきりみえてきました。

 

 公文書管理法違反がおこなわれたのは、安倍政権が桜を見る会の私物化をおこない、招待者を拡大した実態を隠すために、桜を見る会の招待者名簿等の廃棄を恣意的におこないやすくするためだったのではないのか。あるいは、官僚がとても、公にできない名簿だと忖度して、決裁処理をやめ、未記載にしたのではないか。どこに真実があるのか究明しなければなりません。

 

 いずれにしても、安倍内閣が桜を見る会を私物化するなかでの公文書管理法違反であり、安倍政権の責任は重大だと言わなければなりません。

 

 

※公文書管理法(法の施行は、2011年4月1日から)

 

第七条 行政機関の長は、行政文書ファイル等の管理を適切に行うため、政令で定めるところにより、行政文書ファイル等の分類、名称、保存期間、保存期間の満了する日、保存期間が満了したときの措置及び保存場所その他の必要な事項(行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号。以下「行政機関情報公開法」という。)第五条に規定する不開示情報に該当するものを除く。)を帳簿(以下「行政文書ファイル管理簿」という。)に記載しなければならない。ただし、政令で定める期間未満の保存期間が設定された行政文書ファイル等については、この限りでない。

第八条 2 行政機関(会計検査院を除く。以下この項、第四項、次条第三項、第十条第三項、第三十条及び第三十一条において同じ。)の長は、前項の規定により、保存期間が満了した行政文書ファイル等を廃棄しようとするときは、あらかじめ、内閣総理大臣に協議し、その同意を得なければならない。この場合において、内閣総理大臣の同意が得られないときは、当該行政機関の長は、当該行政文書ファイル等について、新たに保存期間及び保存期間の満了する日を設定しなければならない。