タワーを眺めて | かなり昔の小細胞がん(子宮頸がん)の話

かなり昔の小細胞がん(子宮頸がん)の話

2004年に子宮頸がん小細胞がんになりました。
かなり珍しい種類のがんなので治療方法とかを書いてます。
今更かよ~役にたたないよ~と自分でも思いますが・・・
再発しても生きてる人はたくさんいます。
自分が納得した治療ができるといいなと思います。

私は緩和ケア病棟で

お茶を運ぶボランティアをしています

 

リリ「前の私の病室からはね

 東京タワーが見えたのよ」

都島「それ、すごいですね」

リリさんは最近、違う病院から転院してきた。

全ての病院に

緩和ケア病棟があるとは限らない。

 

リリ「それでね、看護師さんとか

 お掃除の人とか来るじゃない?

 あなたお仕事なんてしなくていいから

 ちょっとこの窓から

 東京タワーを眺めなさいよって

 いつも言ってたのよ」

都島「あははは」

 

リリ「みんな綺麗ね~って驚くのよ。

 あれ、いろんな色になるの知ってた?

 最近は電飾が変わって色が変わるのよね。

 私は知らなかったわ」

都島「そうみたいですね」

リリ「綺麗なのよ~

 毎晩眺めるのが楽しみだったの」

 

こちらの病院に移ったので

窓から東京タワーは見えなくなった。

 

リリ「長い間毎日見たから、もういいの。

 いい部屋に入れてもらっていたのよ。

 だって真正面に東京タワーが見えたの。

 でもみんな忙しいから 

 そんなにゆっくり

 眺められないのよね・・・」

日常の仕事をしながら

一緒にゆっくり

東京タワーを眺める時間はあまり無い。

 

ニャンチがあるから

リリさんは何回も眺めるように勧めたんだな。

リリさんはとても嬉しそうにその話をしてくれた。

ここからも東京タワーが見えたら良かった。

ちっさーくなら見えるけれど

リリさんにはわからないようだった。

 

都島「でも前のお部屋からは

 良く見えたんですよね!」

リリ「そうなのよ~真正面だったの」

都島「みんなビックリしましたね」

リリ「そうなのよ~

 お掃除の人にも

 仕事なんていいから見なさいよって

 いつも言ってたのよ」

 

本物のタワーは見えないけれど

ここでは

そのお話を

ゆっくり聴く事ができる

またお茶を飲みながらタワーの話をしましょう

 

リリさんがハッピーだと

リリさんの家族もハッピーになれる

痛みがしっかり取れれば

好きなコーヒーを飲む事もできる

 

緩和ケア病棟に入院するには

タイミングがある

なかなかそのタイミングは

見極めが難しい

でも

それを逃さないで欲しい

 

それは患者本人にとっても

家族にとっても

必要な時間

 

ゆっくりした時間を過ごす

ちゃんと薬のコントロールをする

在宅に移るなら、その準備をする

看病してくれた事にお礼を言う

看病させてくれた事にお礼を言う

 

 

これからの事を真剣に話す

はぐらかさないでちゃんと受け止める

揺れ動く心を

それでいいんだと

周りの人に言ってもらう

 

たくさん泣く

たくさん祈る

 

大切な時を

大切な人と過ごす

貴重な場所だと思います。