45年余りを過ごした地を離れたのが、6年前のこと。
夫を亡くして7年、一人暮らしをしていましたが
息子達の住む場所とずいぶん遠いので、
意を決して、今の地に転居してきました。
その時70歳、
夫と共に建てた家を手放すことは悩みましたが、
転居するなら今しかない!と決断したわけです。
もともと、成長の過程で、父の仕事のために
あちこちを転々として暮らした習性が身にしみつき
それが私の性格に大きな影響を与えていたのでしょう。
前地には私の方の親族は皆無で、夫の親族に囲まれて暮らしていました。
友人たちの中には、「あなた、ご主人が建てた家を手放すの。
それってご主人に対する裏切りじゃあないの」と非難する友も居ました。
彼女の言うことはもっともで、一人暮らしになった私を
心から支えてくれた人でしたので、返す言葉がありませんでした。
結婚する時は、若かったからでしょうが、遠く故郷を離れて
夫の実家そばに住むことに、不安はほぼありませんでした。
ただ60代で夫と別れることになるとは、思ってもみなかったのです。
頑強な身体で、57歳で倒れるまでは、風邪ひとつひかなかった人でした。
一軒家にため込んだ物の半分以上処分しました。
知人や友人にもらってもらった物もありますが、
子供たちのおもちゃや、通学カバンなど、夫がクラブ活動でもらった
多くの盾やトロフィなどに、食器類、布団類、家具類などは捨てました。
一旦断捨離しようと決めると、ほとんど迷うことなく捨てた私。
ドライで冷たい性格の人間だなぁ~と自分でもつくづく思ったものです。
今の地は私が中学の頃、2年間だけ住んだことのある地です。
息子たちは九州、沖縄在住でしたから
特に近くなったわけではなかったのですが
この地に気引き寄せられるように、まさに引き寄せられたという
表現がぴったり当てはまるように、移住しました。
この地に越して6年半、今や身体の半分はこの地の色に
染まっている気がします。
先日、以前いた但馬地方を訪れる機会があり、
夫が闘病中、夫と愛犬シロとよく散歩した公園に降り立った時
周りの緑や山々が、笑って迎えてくれたように感じました。
人は生きている途中、何か大きな決断をしなければならない時が
あると思います。
その決断の仕方は、人それぞれでしょう。
若い頃は、2つの道を前にしたとき、突き進むエネルギーがありました。
高齢になると、決断すること自体にエネルギーがいります。
ただ、私の場合に言えることは、
70歳にして決断したことは、私の今の生き方を、自然に受け入れられる
静けさを与えてくれたように感じます。