忘却とは忘れ去ることなり。
2月の終わりの日曜の夜のことだった。 珍しく家電が鳴る。家電にかけてくるのは 妹か、前地の友人である。 電話にでると、高校の同級生からだった。 厳密に言うと、彼女とは高校、大学の同級。 ただ、私は高校を3回転校したため、高校の同級生の 記憶はほぼないに等しい。 たまたま同じ大学に進学したため、学部は違っていたが 卒業後も結婚してからも、親しくしていた。 彼女はご主人のお仕事の関係で、もう長く東京暮らし。 一方。私は夫の実家そばの但馬暮らし。 会うことはめったになかったが、手紙のやりとりや たまに一緒に旅行したこともあった。 東京には、「萩高会」なるものがあるそう。 卒業生の中には、社会的に出世した同級生が、ちらほらいるとか。 その日は、気の合った同級生が集まって一杯やっていたのだ。 彼女とはなしているうち、「〇〇君がね、貴女の事、初恋の人だと 言ってるから、ちょっと電話かわるわね。」 〇〇君?一年あまりしか在籍していなかった私にとって 男生徒の記憶はほとんどなかった。 高校での途中転校で、クラスに慣れることで精いっぱいだった。 反対にクラスの生徒にとって、転校生は記憶にのこる存在であったのかも。 お酒が入っていたので、その人はそんな大胆なことを口にしたのだろう。 その人の古い実家がまだ萩にあり、その管理に時々帰郷しているそう。 奥様は病気で亡くなられたと言うのは友人から聞いた。 私は電話口で「萩に帰郷される時には、途中広島に世ってくださいね」と言うのが 精一杯だった。 お互い80才を目の前にして、残された時間が限られているから 会いたいと思う人には会っておきたいのですと、その人。 ただ、ただ。。。。その後の顛末は。 ひそかに連絡を待っていなかったと言えば嘘になるだろう。 その後、何の音沙汰もなし。(涙) 最近、老いるということをネガティブに考えることは少なくなった。 老いて人間が丸くなったわけでも、様々な経験が日常の暮らしに 役立っているわけでもない。 しかし、心が満たされるような幸せな経験も、辛い経験も そのすべてが、私の皮膚の一部になっているようで 自分に優しくなれているのかもしれない。