いま、新潟市は桜が見頃だ。

先月から始めたジョギング。

関屋分水の桜の並木道を桜が満開の頃に走りたいとの思いから、片道6㎞、往復12㎞の距離を走れるように、毎週少しずつ距離を延ばして走ってきた。

おかげで無事に12㎞完走し、関屋分水の桜並木を走ることができた。

と、言いたいところだが、正直にいうと関屋分水の桜並木はiPhoneで写真ばかり撮っていて、走ってはいない。

最初は、川沿いの桜並木を走るって気持ちいいだろうなと桜並木を走っている自分を想像して、とにかく関屋分水まで辿り着くことだけを考えていた。

ところが、いざ関屋分水に着いて美しい桜を目の前にすると、この美しい桜を写真に収めたいという欲望にかられてしまう。

ジョギングの格好をして、写真ばかり撮っている人は私だけだった。

普段から関屋分水をジョギングされている方は桜よりもジョギングにウェイトを置いているのだろう。

ジョギングを1ヶ月ちょっと続けてみたが、まだランナーズハイにはならない。

沿道を走っていると、鳥のさえずりが聞こえたり、海からの潮風を肌で感じ、防風林の中にひっそりと咲いている野花を見つけ、錆び付いたフェンスや砂漠のような砂丘越しに見える海を眺めたり、それなりに楽しいこともある。

しかし、まだ心から楽しいと感じたことがない。

音楽なしで沿道を走るよりは、音楽を聴きながら走った方が楽しいし、これからの季節、暑くなってきて日に焼けるから嫌だな、などと思ったりしている。

ゆっくり走るので1時間45分くらいかかる。

往路は関屋分水に辿り着くことだけを考えて走っているが、復路は気持ちに余裕ができる為、様々なことを考えながら走る。

沿道に防風林がある為、緑色の草木をたくさん目にする。

ふと、染織作家の志村ふくみさんの本に書かれてあったことを思い出す。

緑は草木染めでは染められない色なのだそうだ。

緑の葉っぱを白い糸に染めようとしても緑の色は数時間で消えてしまうという。

見えているものは、見えていないものにさわっている。

聞こえているものは、聞こえていないものにさわっている。

感じられるものは、感じられないものにさわっている。

おそらく、考えられるものは、考えられないものにさわっているだろう。

この言葉を思い出しながら、いま見えている青い海や空は、実際に触れると透明な海水であったり透明な空気だったりするのだが、なぜ青く見えるだろうか、と考えてしまう。

朝食を食べていないので、次第にお腹が空いてくる。

そうすると今度は食べ物について考える。

先月仕込んだレモンの塩漬け。

レモンの塩漬けは西アフリカの調味料らしいが、イワシのぬたと一緒にいただいたり、鍋ものに入れたりと和食にも合う。

しかし、だんだん活用方法がワンパターンになってきて、お決まりの調理方法から脱却すべく、レモンの塩漬けをどんな料理に用いてみようか、加熱調理の場合にはどのタイミングで入れたら良いかなど頭の中でシュミレーションをする。

そんな中、スタイリスト岡尾美代子さんの本で、旬のフルーツにスパイスやハーブを合わせたフレーバーが特徴の「London Borough of Jam」のリリーさんがジャム作りについて語られていたことを思い出す。

「素材のコンビネーションの良さは経験からわかる。」

「作る前から味は想像できている。」

この言葉を思い出しながら、”母の味”も同じだなと思った。

母親に美味しかったおかずのレシピを聞いても、適当という言葉しか返ってこなかったという知人を沢山知っている。

私の母もそうだ。

調味料は計らなくてもどれくらい入れたら良いかわかる。

一部の材料がなかったとしても、代用できる材料がすぐ浮かぶ。

母親も経験から素材のコンビネーションの良さをわかっている。

わたしも、よく食べている食材についてはコンビネーションや味は想像できる。

しかし、スパイスやハーブについては、いまだによくわからない。

スパイスやハーブについて興味はあるが、レシピに載っていた通りに使うだけで、まだ応用はできない。

ずっと引き出しの中で眠ったままのスパイスもたくさんある。

急に、そう言えばSugar COATのホワイトペッパーを使ったメレンゲ、美味しかったなと思い出す。

食べ物のことばかり考えていたので、ますますお腹が空いてくる。

朝食は朝起きた時から、手作りの八朔のマーマレードにお菓子作りで余った無塩バターをのせたトーストと、昨晩の残りの人参のコンフィと決めていた。

マーマレードは、柑橘を丸ごと茹でてアク抜きしてから作っている。

今回はトロミ加減がゆるすぎず固すぎず、上手くいった。

人参は昨年父が作ったもので、冬の間、土の中に埋めて保存していたもの。

父が作る人参は、形は不恰好だが甘みがあり、子供のころ苦手だった人参独特のクセがある。

しかし、コンフィにすると人参独特のクセがなくなり、甘みだけが増す。

父の人参を食べる時に好きな調理方法だ。

あー、早く帰って朝食を食べたい。

ゆっくり走っていたのに、急にピッチが早くなる。

どこにそんな力が残っていたのだろうか。

食べ物の力は偉大だ。

 

八朔のマーマレードと人参のコンフィ。
ローズマリー。
桜の刺繍。
桜カラー。