1つの企業を、複数企業の集合体のように編成する組織の形や取り組みを言います。

 事業部体制による個々の事業部を、より自立性・独立性が高いカンパニーとみなすことによって、個々の事業を推進する権限や独立性を高めようとする考えです。

 英語のカンパニーが日本語で会社と訳されることからもわかるように、カンパニー制は内部組織にもかかわらず、あたかも独立した会社のように自立的な経営がなされることをねらった疑似分社型組織です。

 事業の責任者が、疑似的な企業の経営者や意思決定者となることによって、事業の自立による独立採算性の向上と、市場への適応スピードをアップすることが目的です。

各カンパニーは、本社から資本金を分与されて(社内資本金制度)、損益計算だけでなく貸借対照表にも責任を持ちます。

 日本では独禁法によって持ち株会社の下に子会社を置くことができなかったため、カンパニー制が採用されました。

 法制度上で規定された概念ではなく、運用実態は会社によって様々です。従来からの事業部制を単にカンパニー制と呼び換えただけという会社も中には見受けられます。

 カンパニー制という言葉は、ソニーが1994年の組織改編の際に用い、1999年に東芝、日立製作所、2000年にNEC、2001年には松下電器産業、その他にも、三菱化学、ダイエー、HOYAなどが相次いで類似の組織形態を導入したことで広く知られるようになりました。


 カンパニー制導入にあたっては、

(1)開発、製造、販売といったバリューチェーン機能の大部分をカンパニー内に取り込むことで、事業部制よりも組織としての自己完結性を高める、
(2)カンパニーのトップを「プレジデント」や「社長」などと称するとともに、今まで以上の決裁権限を付与する、
(3)カンパニーごとに資産負債を配分して貸借対照表を作成し、損益だけではなく、資産効率についても管理責任を持たせるように、組織の自立性・独立性を高めている、

というのが一般的です。


 カンパニー制により、

(1)事業部門の自己完結性をより高めることで、市場環境適応力を高めることができる、
(2)責任・権限の拡大、経営責任の一層の明確化により、カンパニートップの経営者マインドを高めることができる、

といった面では優れた組織形態といえます。


 1997年の独禁法改正によって、純粋な持ち株会社が認められたこと、カンパニー制を推進することで、本来全社的に共有したほうが望ましい経営資源が分散し、全社最適に向けた動きがとりづらくなるという弊害も見られ、近年では、日本電気(NEC)、富士ゼロックスのように、カンパニー制を廃止する企業も相次いでいます。2005年10月には、カンパニー制の先駆者であるソニーまでもがカンパニー制を廃止し、事業本部制に改組しました。


 これからは持ち株会社制へと移行するのが趨勢を思われます。