メインテナンス
今日は昼間に録音仕事のあとに、いつもお世話になっている、マエストロリュータイオ、ミキオの所に出かけました。(弦楽器職人ていう意味のイタリア語らしいです。)



日本名?中村幹雄さんですが、同じ苗字の製作者が横浜にもいるのでちょっと紛らわしいです。
「楽器の調整、最近どこに行ってるの?」という話題は弦楽器弾きの間ではとても普通の会話ですが「中村さんだよ。」と言うと
「横浜の?」とよく聞かれます。



ミキオさんのお店は高田馬場です。僕の新しいCDを聞かれた方はすぐピンときますよね、レコード芸術でも高く評価されたあのチェロをつくってくれた本人です。



技術はもちろんのこと、音に対する感性が素晴らしく、なろうと思えばすぐに日本で一番有名な製作者になれるのに忙しくなって、ひとつひとつの仕事の質が落ちるのがイヤで自分のペースでしか働きません。



普通このクラスになれば毎日通ってくる弟子の二人や三人、受付の女性くらい雇っているものですが、ひとりでコツコツやっています。



さして重要に思えない?電話にも丁寧すぎる日本語で応対。どうやら青春の大事な時期にイタリアでヴァイオリンに没頭していたため、普通の話し言葉の日本語のツボがわからないみたいです。日本語はとても丁寧にゆっくりめに話すのに、イタリア語で話しているときは早口で楽しそうで、イタリア歌曲でも歌いだしそうです。



僕たちプロの演奏家は楽器の調整やちょっとしたハガレがあったらすぐに直したいのですが、彼には通用しません。
「発表会シーズンで分数ヴァイオリンの毛替えが沢山入っているんです。」とか「中国製楽器のセットアップが…」等々こちらにはアタマが痛くなるような理由でやんわりと断られます。受けた仕事を順番にきちんとやる、間に合わせの仕事はやらないという姿勢は一貫していてエライです。ただし付き合うこちらはラクじゃありませんけどね。



今回は新しい駒を立ててもらうのですが、「ねぇ、駒作ってよ」と僕が言い出してからなんと半年経っているのですよ!でも彼が意地悪なわけでなく、トノーニはしばらく弾いていない状態だから弾き込んだ後がいいとか、良い駒材料がないとか、季節が、とか様々な正当な理由があったのです。
待ちに待った?駒交換、楽しみです。



せっかちなチェリストが半年待ち続けていられたのは、とにかく彼の仕事が素晴らしいからです。こんな現代日本にマジメに不骨にやっている人がいるのは素晴らしいことだし、なんだかクラシック音楽の存在意義にも近いものを感じますね。
生産性や効率では計れない大事な世界も世の中にはまだあるんです。