緊急レポート『僕と白血球』

三宅洋平

 

 

【前置き】

 

原発震災から6年と3ヶ月が経過。

 

8割は海へ、

2割が陸へ降り注ぎ、

陸のぶんだけでも広島型原爆100発に相当する放射性物質を拡散したと計算されている。

 

国や医学の常識がそれを原発事故由来だと認めるかどうかはさておいて、これまで「3人に1人」と言われていたガン死が「2人に1人」になった事実はすでにスタンダードと化した。

 

また、「クオリティ・オブ・ライフ」を低下させる小さな症状から大きな症状まで、多くの人が、不安を抱えながら生きているのが実態と言える。

 

こうした「被ばく」の懸念や、他の要因との対照と真摯に向き合う医療機関の少ないことも問題を複雑化させている。

 

直後から3年ほどは、40〜60代の心筋梗塞や脳疾患による急死が、身近でも多く聞かれた。ここ2年ほどは、20、30代のガンによる急死(末期で発覚、余命宣告を上回る速度で他界)、あるいは若年層のガンの発見が、身近でも複数件続いている。もちろん、ネット上ではこうした情報は一定数「デマ」だと云う批判を受ける。別に放射能との関連を断言しているわけではないが、検証する姿勢が社会に必要なのは確かだ。

 

上記はあくまで僕個人にまつわる事例だが、小児への影響も含めて、時間の経過とともに年齢層や症状が推移していくのが、チェルノブイリにも見られた被ばくの統計的な特徴のように思われる。(資料、グラフ、データなど、ネットにある情報だけでも整理してみたいところ。皆さんも手伝ってね。)

 

継続的に注意深い観察が、必要だ。

 

 

 

【3センチの結節】

 

「継続的に注意深い観察が、必要だ。」

 

なんだか分かったようなことを書いた僕本人も、読者の皆さんも、字面だけ理解して、実はこの「注意深い観察」を実行してきた人は少ないかもしれない。

 

僕自身は、震災発生から3日後の3/14に車で東京を脱して長野に行き、そこから大阪、そして沖縄へと移動したので、大きな放射能プルームの影響は比較的、回避している。

 

5月に福島県いわき市へ炊き出しやライブなどに行って、数日間、小名浜辺りまで簡易のガイガーカウンターを持参して倒壊した港の線量を計測したりした。東北道の移動中には、車中で1.0〜2.0μSv/hを超えるところもあった。

 

沖縄へ戻ると、足の裏に小さな浮腫がたくさんできて、これは半年から1年ほど続いたように記憶している。特に医療機関へ行くこともなく、それが吸気や食べ物による被ばくの影響なのか、むしろ沖縄という熱帯へ移住した環境変化からなのか、釈然としないまま、いつの間にか症状がなくなった。

 

低線量の放射線が常態化しているところに定住する人。

線量のより低いところとを、行ったり来たりする人。

線量のより低いところへ移住をして定住している人。

 

動き方によって、症状が良くなったり、好転的に悪くなったり、良くなったのがまた悪くなったり、あるいは特に変化を感じなくなったりと、それぞれの波形を描くので、一概に事故原発からの距離だけで語れないのも、やっかいだ。

 

他にも色々と気になる症状があって、写真に撮ったりもしているのだが、

今回は別に被ばくアピールをしたくて書いてるわけではないので、省く。

 

その中でも気になる症状の一つに、

左腕の付け根、脇の近くに3センチ大の「しこり」があった。

 

気づいたのは2013年秋、最初の参院選の直後だ。

 

炎症があって腫れた感じがして痛かったのだが、痛みはすぐになくなった。この放射能時代だから「ドキッ」としたのは確かだが、バタバタとした日常の中で「痛くない」シコリは常に優先事項の枠外だった。

 

2015年秋、ようやく血液検査だけは受けて、特に数値に目立った異常はないという事だったが、なぜかシコリのことはちゃんと相談しなかった。

 

その10月、福島の猪苗代でたまたま受けた簡易エコー検査で、このシコリが「35ミリ半径程度の石灰化した結節で、精密検査を受けた方が良い」というアドバイスを受けた。

 

このころ僕は、緑の党を中心とした市民派グループに2度目の選挙に出る誘いを受けていたが、いろいろな要因があった中でも、身体のこととちゃんと向き合えないまま時間を過ごしてしまっている事も決断しきれない理由の一つとなって、半年以上の交渉を経て2016年3月にお断りさせていただいた。

 

が、結局は6月の土壇場に「改憲2/3議席・阻止」が野党共闘だけでは叶わない情勢を見て、ほとんど捨て身で「選挙フェス2」の一夜城を、

山本太郎参議と仲間たちと打ち立てたが、トンデモナイ騒ぎを起こしてこれまでの無投票層への呼びかけはある程度できたものの、与党圧勝の結果に差し障ることはできなかった。

 

その直後、衆院解散11月、と叫ばれていた中で、参院選後もそのままフラッグを降ろさずにイベントを打つなど進んでいたが、ずるずると遅れていく解散説の中で何ヶ月も臨戦態勢でいるのは難しく、1度、自分の稼業に立ち返る決心をする。

 

選挙で遅れていた「犬式再始動」に着手するにあたって、ここでようやく一区切り、もう1度改めて自分の体の状態を知ろうと動き出した。

 

ミュージック・アスリートに戻るために。

 

 

 

【被ばくを相談できるお医者さん】

 

昨年末から三宅商店の本社がある岡山に、東京から移住してきた内科医が開業している。

 

震災以後の移住者が多い岡山で「被ばくのことを相談できる先生」として知られている、その「三田医院」へ僕も行ってみることにした。

 

かねてから気になっていたシコリについては、エコー検査をして

「全身に転移や炎症が見られる様子はない」

「最終的には、全摘出して調べるのが一番、分かりやすいけどね。」

 

「古い腫瘤なので、取ってしまえば、とも思うけれど、

あまり手術とかしたくなさそうなタイプですね(笑)」

 

と言ったところで、被ばくのこともオープンに話せる外科の先生に紹介状を書いてもらった。

 

そして血液検査のために採血をして帰り、数日後に結果を聞きに再び、三田医院を訪れる。

 

 

 

 

【白血球が減っている】

 

三田先生が言うには、血液検査で重要なのは「以前の数値との変動」であるという。

 

その都度の数値が適正値であったとしても、適正値の範囲内で「適正でない」推移を示しているとしたら、それに気づく必要がある。

 

だからこそ「健康なとき」の数値が、後でモノを言う。

 

「血液検査なんか必要ない」と思っている時の数値ほど、何かの変化が起きた時に比べる指標になる。

 

僕の場合、2015年8月に採血した検査結果があった。今回の採血が2017年4月だったから、1年8ヶ月前。

 

細かいことを端折って、結論から言うと

 

・「白血球の数が25%減少している」7200→6300 /μL

 

そのほとんどが白血球の中の「好中球」(血液中の外敵の侵入に対処する役割)の減少に由来する。

 

・6:3くらいの割合で存在するのが適正な「好中球」と「リンパ球」の割合が、好中球の減少によって「4:5」にひっくり返っている。

 

*白血球は、好中球・好酸球・好塩基球・リンパ球・単球(・異形リンパ球)によって構成されている。

 

 

 

 

↑2015 8/27(37歳1ヶ月)

 

白血球 7200/μL

好中球 3456(48%)

リンパ球2880(40%)

 

 

↑2017 4/24(38歳9ヶ月)

 

白血球 6300/μL

好中球 2580(41%)

リンパ球2970(47%)


 

 

 

【首都圏に顕著な「好中球」の減少】

 

首都圏における小児の好中球減少は、震災直後から顕著に見られ、少し乱暴な言い方だが、2013年から2014年にかけて下げ止まった印象がある。

 

代わりに今度は、それまでは見られなかった成人の好中球減少が多く見られるようになった、と云う。

 

僕の場合、減っても白血球の全体数がまだしっかりとあることや、被ばくの程度から推察するに、すぐに血液の疾患を心配するものではないが、将来的に何があるかわからないので観察が必要となる。

 

「単純なグラフを描くと、次の1年8ヶ月後には50%減になっている可能性は?」

 

と云う不安もあるが、今回減ったから同じ割合で次も減るだろう、と云うわけではないらしい。

 

また「好中球とリンパ球の比率がひっくり返っている」ことに違和感があるのは事実で、実はこの現象が、ここ数年、首都圏の成人に増えている印象があるのだそうだ。

 

「今、関東の成人に非常に顕著な例ですね」と。

 

「私は、福島のことは分からない。福島のことまで把握する余裕が全くなかった。もう、東京、首都圏、そして移住者たちでいっぱい、いっぱい。」

 

震災以降、東京そして岡山で、3000人以上は診てきた経験値から

「症状も血液データも、福島よりも首都圏の方が悪いのではないか」

「しかし、人々はその現実を許容できていないのではないか」

と懸念されていたことが、印象に残っている。

 

ここに、三田先生と僕のメールのやり取りを掲載しておきたい。

三田先生には承諾を頂いている。

 

 

 

TO:三田先生 FROM:三宅洋平

 

お忙しい中、失礼いたします。

お久しぶりです。

 

4月に診てもらった三宅洋平です。

 

 

先日、採血結果を伺う際に忘れて行ってしまった、

以前の採血結果との比較です

 

2015 8/27

 

白血球 7200

好中球 3456(48%)

リンパ球2880(40%)

 

2017 4/24

 

白血球 6300

好中球 2580(41%)

リンパ球2970(47%)

 

 

1年8ヶ月前の採血データと比べて

白血球が25%減じています。

そのほとんどが、好中球の減少に由来するもので、

リンパ球との比率は、ほぼ入れ替わっています。

 

 

 

先生は、

好中6:3リンパ、が正常とおっしゃっていましたから、

ほぼほぼ4:5という現状を、どのように捉えたらよいのか、

お聞きしたくて

メールしました。

 

というのは、こうした現状を

一般に説明するにあたって、

どの程度の危機感で語ればよいものか、と。

 

単純にグラフが推移すると、

1年半後にはさらに25%の好中球を減じているという予測になるわけですが、

それが何を意味するのか、

どこからが白血病なのか、とか

そこらへんをどう表現したらよいものか、迷っています。

 

 

 

 

 

TO:三宅洋平 FROM:三田先生

 

いろんな解釈があり得るのですが

 

 

好中球が減ったのは間違いないです

今回減ったから同じ割合で次回も減るだろう、という訳ではなくて

ずっとみていかないと将来的にどうなるかはわからないです

 

 

小児の好中球減少は2011年からハッキリと観察できました

雑な言い方ですが、2013~2014頃に下げ止まった印象です

かわりにそれまではほとんど見られなかった成人の好中球減少が最近増えてきたという印象です

これも際限なく減り続ける訳ではなくどこかで底を打つのではないかと思います

 

 

私達の程度の内部被曝では、骨髄抑制のために白血球減少が起きたとは考えにくく、もっと複雑なメカニズムによるように思います

自己免疫、ホルモン異常などが考え易いでしょうか

ですから、この現象が白血病等の血液疾患に直結するということではないと思います

地域の人口の全体的傾向として、被曝の影響(全身的)を示す指標のひとつですね

個個人の数値だけでなく、移住によって劇的に改善する例、しない例、

白血病というよりも今後長期に渡るいろいろな疾病や生活の低下、その確率が高くなった集団=ヒバクシャ、というようにとらえています

 

 

明らかな病名が付く状態までは行っていない人が多いのでかえって厄介です

意識化できていない人達、拒絶する人達に注意して説得するのは、私にはできませんでした

症状も血液データも、福島よりもむしろ首都圏の方が悪いのではないか、しかし首都圏(在住)の人達はその現実を許容できない

気がつき始めた人達、疑問を感じている人達には分かる話でしょう

 

 

三宅さんの白血球は、数はそんなに少なくないし、血液疾患を特に心配する程でもないでしょうね

ただ、好中球とリンパ球が逆転するのは違和感があるし、最近そういう人が多いので心配しています

定期的に皆で自分たちの数値を観察することで、現象の発生を早めに知ることが大事なのだと思っています

 

 

 

 

【「定期的な」血液検査のすすめ】

 

今、つくづく思うのは震災以前の白血球の総数とか、2011年直後あたりのデータがあれば比較できたのに、と云うことだ。

 

そして、次の血液検査までに、例えば自分の身体や精神にどんなストレスを与えているのかを見つめ直したり改善を図ることで、数値がどう変わるのかが、楽しみになった。(ストレスが白血球の増減と関連するかどうかは、定かではないが。)

 

酒量にも気を使うようになり、ここ2、3ヶ月は以前の半分以下に減っている。「認識」し「意識」することで、自己治癒のメカニズムが発動する。

 

甲状腺エコーと共に、血液検査を受けたことのある人はそれなりにいると思うが、ぜひ「今」の数値を測って比較してほしい。

 

この時代、半年に1度は、血液検査をしておいた方が良さそうだ。血液検査を「受ける」のではない。自分で比較・判断するためのデータを「取り」に行くのだ。

 

そしてその数値を共有したり観察することで、社会単位での統計的な「現象」の発生を早く察知することもできる。

 

検査に行って、過去のデータと比較してグラフを書いて結果をお伝えいただけると、僕ら周辺の傾向だけでもつかめるかもしれない。ご協力いただける方は、三宅洋平メルマガ『感覚と科学』編集部までメールください。

⇒ magmag@miyake-yohei.com

 

「継続的な注意深い観察」を、実行しよう。

 

 

2015年と2017年の推移をグラフにするとこうなる

 

上の写真は、三田先生が作成して広めている白血球数の推移をわかりやすく把握できるグラフです。ここにPDFリンクを貼っておきます。ご自由にお使いください。

 

⇒ https://www.dropbox.com/s/6cux4lyllnt683w/検査結果グラフ.PDF?dl=0

 

 

追記

 

「被曝を評価するのに適切な方法はなかなか良いのがなくて、私達放射線取り扱いをする者に義務つけられている白血球検査(電離放射線検診)が客観的に良いと思っています」(三田医師)

 

【それから】

 

・バンド

・レーベル代表

・三宅商店代表

・政治団体NAU代表

・イベントオーガナイズ

・政治活動

・音楽活動

・暮らし

・その他

 

人生、やりたいこともやらねばならぬことも背負うものも沢山あるけれど、身は一つ。

 

ここ4、5年、いやここ6年、と云うか「原発反対」とか言い出してから、この10年。随分と突っ走ってきた中で、無理もたくさんしてきた。

 

ヤーマンに、なるべくルーズに、意識してきたのは、実際、忙しかったからだ。

 

そしてここらで、増えすぎた肩書きに一回、整理をつけて、自分とか、身体とかと向き合う時間を作る必要を感じている。

 

間も無く39歳になる身体を、より逞しく、しなやかな状態に持っていきたいと強く思うのは、8年ぶりに再開した犬式という表現が、そうさせるから。音楽も政治もスピリチュアルもアニマルも全てを内包できるのが、やはりこれだから。更新したい自分がいるから。

 

メルマガを始めたのは、ブログやSNSに書き散らかしてきた膨大な時間に、整理をつけてみたいから。

 

今回わかった、「白血球が25%減っている」という事実は、改めて「人間、いつまでも生きているわけじゃない」という実感に結びついて、死生観を深めてくれている。そもそも生きてるって、そういう毎日の連続だ。

 

20代、30代の友人が突然、ガンで亡くなる話が身の回りで続いている。

 

僕はこの現象と福島原発事故の因果をちゃんと検証したい(もちろん、複合的な環境汚染も検証したい)。「そうであるか、ないか」の対立的な議論じゃなくて、社会が全力でこの事を検証し、対応する風土とシステムを作りたい。

 

そういう時代。

 

「明日は我が身」という感覚があるからこそ、1回1回のライブの時間がとめどもなく愛おしい。刹那が輝く。永遠の一瞬が連続する。それは爆音であり、静寂。

 

幸い、僕は背負ってきたものを分かち合ってくれる仲間に恵まれている。

 

商店やNAU、レーベルの組織編成についても、新たな進展をお知らせしていくことになるだろう。

 

 

 

暦の上でも小暑を過ぎて、いよいよ梅雨が明ける。

虫たちも今生一過の唄を振り絞る。

 

皆さま、健康に"氣"をつけて、ぜひ良い夏を。!

 

 

 

(了)