about 鎌仲ひとみ監督(ドキュメンタリー映画『ヒバクシャ』『六ヶ所村ラプソディ』『ミツバチの羽音と地球の回転』)

~1999年、NHKに勤務していた鎌仲氏は、白血病やその他の類似するガンにかかったイラクの子どもたちが、病院で治療も受けられずに亡くなっていることを初めて耳にした。その報告に大きな衝撃を受けた鎌仲氏は自ら状況を見にいかなければならないと決意する。こうしてイラク入りした彼女は、国連の科した経済制裁による医療品不足で子どもたちが命を落としていくのを目の当たりにした。
ある医師は彼女に、ガンで死亡する子どもたちの数がイラクで異常に多いのは、湾岸戦争中に米軍が用いた劣化ウラン弾によって低レベルの放射線被曝を受けたためだと話した。鎌仲氏はそこで、自分の力でできることは何でもしなければならないという思いに駆られる。つまり、イラクの子どもたちの実情を世界に伝えることだ。
しかし、日本に戻ってすぐにぶつかった問題は、周りのテレビプロデューサーがそのテーマは大きな物議を醸すとして、放送を拒んだことだった。そこで彼女は自分で撮影を行い、自主制作映画にしようと決意する。それが『 ヒバクシャ 世界の終わりに』だ。
鎌仲氏は紛争の両者、つまりイラクと米国の双方で被曝した人たち、それにプルトニウム製造施設の風下に住んでいた農民を映像におさめ、取材を行った。
この映画を製作している間、鎌仲氏は日本の一般の人たちに原子力に大きく依存している現実について警告を発したいと願い、実際にそうするうちに、彼女の映画を観た多くの人が現在の状況では希望が持てないと感じるようになった。
これらの経験を通して鎌仲氏は「ヒバクシャ」という日本語が、広島と長崎における被曝生存者という元々の意味を超えて、放射線被曝で苦しんでいるすべての人々を指すように広げなければいけないと思うようになる。
日本に戻っても、原子力問題をめぐる旅は終わらなかった。劣化ウランが原子力発電の廃棄物であることを知り、さらなる活動を始めずにはいられなくなったのだ。原子力発電所の数では日本が世界第3位であるからには、日本における自らの電力消費が、まさに自分が救いたいと思っているイラクの子どもたちにつながっていると感じたのである。
彼女は問題の根源、つまり原子力の生産と消費という問題に至る旅を続けずにはいられなかった。

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