1)  2013~2014年に診断基準が変わって、今はGID(性同一性障害)と言いません。GD(性別違和)と言います。戸籍変更の特例の法律が初めて出来たのが、2004年で、その後名称の改正が行われていないので、いずれ法律用語も性別違和で統一されるでしょう。このニューズウイークの記事でも、「性同一性障害者」という言葉を使用せず、「トランスジェンダー」と言っているのはさすがです。性同一性障害=精神科の病気→性別違和=病気ではなくその人の個性・特性と捉えられています。

 

2)「性別違和の診断書」は、会社や学校にカミングアウトしたり、家族に説明したりする特に使う診断書です。一方「性別変更申立書」「他の性別としての身体適合状況表」は、戸籍変更の特例にもとずき家庭裁判所の書記官・裁判官に提出する書類です。重みが全く違い、当事者の人生を大きく変える重要書類で、社会に与える影響も大きく、法律的な責任も伴うため、注意が必要です。

 

3)2023年10月に日本の最高裁で判決が出て、性別適合手術を強制することは違法であるとの画期的な判決が出ました。この記事によると、2019年に同性婚が認められた台湾でも、日本より1か月早い2023年9月に同じ判断が下されており、台湾に続け!で、日本の最高裁判所・司法界も影響されたのかもしれません。最高裁判事15名の全員一致で判決が下りた重みを再認識しました。 いずれにせよ、精神科の病気と考えられていたのが、病気ではないと捉えられるようになり、身体改造して社会的・法律的な性別を変更するのは、個人の自由である、手術を強制するのは人権侵害であるという考え方に変わってきています。

 

4)ただし、MTFの場合は、虚偽の申し立てをして、ふつうの女性の人たちの安全・生存権を脅かす恐れがあって、保守派の人たちから強い批判を受けています。当院では、FTMで子宮・卵巣を温存したまた性別変更に持ち込む人には、①性別再変更がないこと(女→男→女!)、②ホルモン治療を中断して分娩予定がないこと、を確認しています。 今後の法律整備に、悪影響が出ないよう、トランスジェンダーの当事者にも社会全体のことを考える心構えが必要です。

 

5)憲法違反の判決が出た一方で、戸籍変更の特例を定めた法律にMTFについては、女性らしい性器の外観を備えていることという制限があり、手術は強制しないが、家裁の審判で認めない・・・という状態になっていると今のところ推測しています。今後も紆余曲折を経ながら、個人の自由を拡大する方向で社会・法律は変化していくと考えていますが、世界は広い!国によっては、全く正反対、絶対にトランスジェンダーを認めないという所もあり、日本人に生まれた幸せを感じますが、当事者の人たちはいかがでしょうか?