星野源(以下、星野):今回の『劇場版 SPY×FAMILY』を拝見して、旅をテーマに曲を書いてみたいと思ったんです。
ただ、僕はあまり旅をしたことがなくて。
それでちょうど行きたいと思っていた金沢に歌詞を書く旅をしてきました。
鈴木大拙館で禅の考え方に浸ったり、いろいろな景色を見ているなかで、たくさんのものを得て帰ってきて。
そのときにはもうサウンドは全部できていたから、早速歌詞を書こうと思ったんですけど、当時は非常に落ち込んでいる時期だったんです。
もう、すべてにおいて前向きな気持ちになれなくて、何を書いても、どうしても違和感のあるものになってしまう。
タイアップ的な、物語のキーワードから派生させていくようなやり方が全然できなくなってしまいました。
とにかく全く作業が進まなくて、精神的にもかなり追い詰められて。そこまでいったのは人生でも初めての経験でしたね。
そこでとりあえずタイアップのことは一旦忘れて、今の気持ちをそのまま出してみようと思って書いた歌詞がAメロの部分だったんです。
どうせ人間はみんな死ぬわけだし、人類は長い目で見たらいつかは絶滅する。
だから、自分が何を残そうが努力しようが、いずれ知覚できる者など誰もいなくなってしまうんだと思ったとき、何もかもが無駄に思えてきて。
そんななかで金沢に旅行に行ったときに見た夕日の美しさ、雨の街の木々や水たまりの波紋の美しさを思い出して、どうせ死ぬのになぜ自分は感動していたのか、考えてみたんです。
そうすると、不思議と歌詞が書けていって。
なぜ生きるのか、なぜ旅をして思い出を残そうとするのか、なぜ他人同士が惹かれ合い笑い合うのか。
そういうところから『劇場版 SPY×FAMILY』とのつながりが生まれてきて、一気に歌詞ができていきました。
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2023.12.28 の記事です。
光の跡
歌詞一部引用
人はやがて
消え去るの
すべてを残さずに
綺麗にいなくなり
愛も傷も
海の砂に混ざり
きらきら波間に反射する
今のうちに
旅をしよう 僕らは
悲しみにひらひらと手を振る
窓を開けて 風に笑み
意味なく生きては
陽射しを浴びている
シャンタンさんが金沢でゆるゆる瞑想のワークショップを開催した際、参加者のみなさんと鈴木大拙館を訪ねました。
鈴木大拙さんのことはシャンタンさんから教わるまで恥ずかしながら知りませんでした。
貫井投稿