宇宙との対話
ウィンストン・チャーチルはかつて、リーダーシップとは「失敗を重ねても熱意を失わないことだ」と語った。
ビジョンさえ明確になれば、あとは「実行」の問題である、という素朴な見方ほど、創造のプロセスを傷つけるものはない。
実は、概念から実態に移ること、つまり「生み出すこと」こそが創造の核心である。
水源から海へと流れる川が曲がりくねっているように、その過程は一直線ではありえない。
創造とは、いわば直感と実験のダンスである。
この点を見事に表現しているのがトランス・パーソナル心理学者のクリストファー・ベーである。
教師が心を開き、出現するものの流れに身を任せた時、生徒と教師の間に何が起きるかを教えてくれる。
「授業では、学生に質問されたり、難解な概念をわかりやすく伝えるために適当な例を探したりしていて、考えが中断し、思考の連続性が絶たれることがあります。
こうした時こそ、直感を働かせてありきたりの授業を、生き生きとした即興のエクササイズに変えるチャンスをつかむかどうかの分かれ目になります」。
こうした瞬間に、「心の裏側に小さな扉があることに気づきました。
この扉は時々開いて、紙切れを差し出してくれます。
そこに書かれているのは、アイデアだったり、イメージだったりします。
自分がリスクを取って、この贈り物を活用すれば、魔法のようなことが起きると分かったのです。
魔法が起きた時、学生と私を隔てる壁は一時的に取り払われます。
・・・・・・学生も私もひとりひとりでは考えられないほどの創造性を発揮できます。
調子が良い日には、教室中に新しいアイディアが溢れ、授業が終わった後で、私が黒板を書き写すこともあります。
学生との対話のなかで、新しい概念を掘り下げたところに何があるかを垣間見ることができたからです・・・・・・
心の奥底から語られ知性によって巧みに表現された真実は、学問の場ですら消し去る事はできません。」
ベーの発言が示しているように、何が起きるかは、やってみて初めてわかることもある。
重要なのは、行動している時にも心を開いていることだ。
目の前の仕事に囚われ、急ぐあまり「小さな扉」が閉まることのないように。
ピーター・センゲ、C・オットー・シャーマー、ジョセフ・ジャウォースキー、ベティー・スー・フラワーズ「出現する未来」より一部引用
貫井投稿