今日(7月13日)も私の変形菌・キノコ観察センターに行ってきました。新たに、ウツボホコリの子実体が出来はじめていました。午前中に見たときはみずみずしい白色の未熟子実体でしたが、夕方見に行くと小豆色に変わっていました。これは別途紹介することにして、

 

現地に細いツバキの木が2,3本立っていて、下に枯れ葉が落ちていました。枯れて黒くなった落ち葉のところどころが、黒変せずにベージュ色のパッチ状になって色が抜けていました。

 

よく見るとパッチ状の内側に黒い粒々があって、その大きさや形から星型とコーヒー豆型の2種類あることが分かります。以後、写真を示します。

 

 

 

 

(補足します)
星型とコーヒー豆型の菌はいずれも子嚢菌類です。いずれもその中に子嚢胞子が詰まっています。コーヒー豆型の菌では楕円形の長軸に沿ってスリットが存在します。 このスリットから胞子が噴出するのですが、星型の菌ではどこから胞子が出てくるのか分かりませんでした。
調べてみると意外なことが分かりました。これは私の拙い模型ですが、こういうイメージで真ん中から開いてきて胞子が出てきます。菌類の世界では知らないことって多いですね。

 

 

 

この現象について下記の浜松科学館のHPに興味深い解説が出ていましたので紹介します。

 

落ち葉で陣取り合戦:ツバキの葉を分解する菌類たち|浜松科学館 みらいーら (note.jp)

 

HPの解説を要約すると、次のようになります。

落ち葉を分解する腐生菌(カビ)は難分解性のリグニンを分解して、内部のセルロースやヘミセルロースを食べます(利用します)。苦労してリグニンを分解して、やっと美味しいセルロースやヘミセルロースにたどり着いても、他の腐生菌に横取りされてはかないません。そこで、ツバキの葉を分解する腐生菌は他の菌と出会うと、その境界に黒色のメラニン状の壁を築きます。いわば相互不可侵条約みたいなものです。

最初に書いた、2種類の黒い粒々は例えるならば、星型とコーヒー豆型です。Matsukura et al. (2017)によると、星型はCoccomyces属の一種、コーヒー豆型はLophodermium jiangnanenseという種のようです。そして、2種のコロニー間には黒色の菌類間の国境線がはっきりと築かれていました。互いに自身の陣地のリグニンを分解してツバキの葉に含まれるセルロース、ヘミセルロースを食べていた、もしくは食べ終わった状態だったのです。

Matsukura, K., Hirose, D., Kagami, M., Osono, T. & Yamaoka, Y. Geographical distributions of rhytismataceous fungi on Camellia japonica leaf litter in Japan. Fungal Ecol. 26, 37–44 (2017).