「………何かすっげぇキモいんだけど」
「は⁉︎またいきなり押しかけて来といて何それ‼︎」
「だって前より全然イチャってんじゃん」
「………へ？イチャ………？」
「見てるだけで虫歯になるっつーの」
「む………虫歯？」
色んなことが変わろうとし始めてから数日。
学校から帰ってしょーちゃんに『気』の『譲渡』っていうか、明日は休みだしえっちしよーって、すっかりえっちおバカな僕からしょーちゃんをお誘いして、さらにおバカになりそうなぐらいのえっちをたっぷりして、僕もしょーちゃんも大満足でツヤツヤになった今日。さっき。
じゃあ今日はちょっと二十世紀工房のお仕事しよっかなーなんて材料を出してたら、誰か来るよって『こより鳥』のぴーちゃんが教えてくれたから慌てて片付けたら潤だった。
その腕には涙いっぱいの和も。
どうやら和はまたしてもここ数日ずっとぐずぐずで、今日は特にギャン泣きだったらしく、前回同様もうお手上げで助けを求めて来たみたい。
玄関を開けた瞬間和が『まあああああ‼︎』って手を伸ばして来たのを見たのは、つい先日だったはず。
でもって今日は潤もものすごーくご機嫌斜めで、よく分かんないことを言ってるっていうね。
どういうこと？って首を傾げる僕に、しょーちゃんが『俺と雅紀がラブラブってことだろ』って教えてくれた。
えええええ⁉︎
しょーちゃんと僕がラブラブ⁉︎
人から見てそうならそれはすっごく嬉しいことだし、実際本当に前よりラブラブだし‼︎なんだけど、それより何よりしょーちゃんの口からラブラブって言葉が出るなんて‼︎
へへへーって潤たちを出迎えた玄関でしょーちゃんと笑ってたら、潤のチッて舌打ちが聞こえた。
もう‼︎潤のばか‼︎いい気分台無し‼︎
あ、そうそう、『こより鳥』のぴーちゃんっていうのは、僕が『召喚』した新しい『式』。
キレイな緑色のインコみたいな、でもスズメぐらいの小さな子。
っていうか、ぴーちゃんは『依り紙』で『召喚』した『式』じゃなくて、『こより』で『召喚』した『こより鳥』だから、本来なら長く持って半日ぐらいの使い捨ての『式』。
ほんの少しの『気』で鳥の姿になって、何かあると『気』でお知らせしてくれるから『術者』の間で人気が高まってるんだって。
僕は仕事に行ったことないから知らないし分かんないんだけど、色んな事情で現場や依頼主さんを見てなきゃいけないときがあるみたいで、そこで『式』を使っちゃうと、『式』が一番必要で一番肝心なときに『気』が足りなくなっちゃうなんてことが『術者』のあるあるらしい。
じゃあお手軽に見張り役ができる何か作れないか？ってことで、『札』の進化系の『こより』での『こより鳥』を二十世紀工房の坂本さんが発案して作ったって聞いた。
確かにそれは便利かも‼︎って、僕も『札』を作るときに誰かうちに来たら教えてねって『こより』で『こより鳥』を『召喚』したら、半日どころか１日経っても２日経っても何故か消えないっていうね。
何でだと思う？ってしょーちゃんに聞いたら、僕の『気』が膨大過ぎて、この子はもはや普通の『式』なんだって。
『雅紀ならその辺の紙でも『式』を『召喚』できるかもな』
緑のインコ風『こより鳥』のぴーちゃんを肩に乗せながら、しょーちゃんはすごいウケてた。
ハリネズミみたいな『式』ばかりだった僕に、インコ風な『こより鳥』だけど『式』のぴーちゃん。
僕たちに新しい仲間が増えた。
で、僕がお仕事道具を広げてさあってときに、ピリって『気』が揺れて、それが外でうちを見てたぴーちゃんからの合図で、慌てて片付けたら潤が和を抱っこしてやって来たっていうね。
ぴーちゃんってすごいよね‼︎後でいっぱい撫で撫でしてあげなきゃね‼︎
和はまー‼︎って僕に抱っこ。
潤はしょーちゃんと僕を見てご機嫌斜め。
まあ、またご飯を持って来てくれたからありがたいんだけど。
でも、この荷物の量ってことはつまり。
「もしかして、また父さんたち居ないの？」
「居ねぇよ。だから泊まる」
………やっぱりか。
………またなのか。
………そして泊まるのか。
泊まるのはいいけど、またって。
こんな短期間の間に。
「まー、ちちおー？」
ギャン泣きの涙が残るキラキラした目で僕を見上げる和がかわいすぎて、こんなかわいい和をほったらかして出掛けてるなんて‼︎って、僕は思わずかずぅーって和をむぎゅっと抱き締めた。
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