僕が通う高校は、うちから徒歩10分ほどのところにある。
最初は自転車で通うつもりだったんだけど、高校入学目前の春休みに、偶然神社を経由できる裏道を発見したんだよね。
この裏道に、階段があったり舗装もされてなかったりだから、徒歩で通ってる。
裏道を見つけたのは偶然。
離れからなら表門じゃなくて裏門から出入りした方が早くない?って気づいて、裏門から出るとどこに出るのかなって探検したからなんだよね。
うちってほら、普通の家とは違うのもあってか、敷地が無駄にすっごい広いから。
僕は15才まではちゃんと母屋に住んでた。
だから裏門なんて、あることさえ知らなかったんだ。
そう。これでも15才までは、ひとつ年下の弟の潤と一緒に『術者』になるための教育を受けてて、その時までは一応僕が跡取りのポジションに居たんだ。一応ね。
何で15才までかって、15才までは『術者』の『術力』ってやつが変わる可能性があるって言われてるから。
僕は、すごく小さい頃から、小さいけど『式』を『召喚』できた。
だから、こんな小さいのにもうできるなんて‼︎的に一族の期待をすっごい背負ってた。
これなら、もしかしたら大きくなったらもはや伝説となってる人型の『式』を『召喚』できるんじゃないかって。
逆に年子の潤は全然で、僕たちはいつも比べられて、真逆の評価をされ続けてた。
って、それは周りがそうだっただけで、父さんと母さんはそんなことしてないし、あの人たちの言うことは気にしなくていいって言ってくれてたし、うちはね、家族仲は本当にすごくいいんだよ。
潤なんか、大丈夫?ってぐらい僕のこと大好きだし。
けどねぇ。
僕が11才、潤が10才だったある日、色んなことが色々変わった。
それまで全然だった潤の『術力』が、一気に開花したんだ。
潤は10才で、『式』の中でも上位クラスの『鵺』の『召喚』に成功した。
それからだね。
僕の転落人生が始まったのは。
なんて冗談でも言うと潤にも父さんにも母さんにも怒られるから言わないけど、あれを人生の転落と言わずに何て言うの?って思う。
いつまでもいつまでも、小さな手乗りサイズの『式』しか『召喚』できない僕と、大人でも難しい『鵺』を『召喚』して、自由自在に扱う潤。
それまでの立場とか評価が、一瞬でひっくり返った。
それでも一応、僕が15才になるまで待っててくれたけど、15才の誕生日に僕は、お偉い人たちから一族との断絶を言い渡された。
危うく遠い遠い遠い親戚の家に養子に出されそうになって、それを父さんと母さんが必死に止めてくれた。
でも、養子に出されることがなくなっただけで、一族の名簿から僕の名前は消され、母屋からは追い出され、『術者』が多く通う、僕も行く予定だった私立高校への進学もやめさせられた。
そして当たり前みたいに、一族に対しても、跡取りとなった潤に対しても、何もしない何も言わないことを『誓約』させられたんだよね。
『術』がかかった、特別な『誓約』を。
で、僕は中3の1月から離れで暮らすようになって、面倒くさいから一番近くの高校でいいやって一番近くの高校を受験して受かって、裏門を見つけて探検したって話。
葉桜な桜の下を通りながら思い出す。
色々あったけどさ、去年だよね。高2の時、僕は運命の出会いをしたんだ。
そうそうここでねーって、通りながらその時のことを思い出して、ちょっとニヤニヤしちゃった。
出会いはあんな風だったけど。
僕は制服の下に隠してある胸元のネックレスをぎゅっと握って、早く帰ろーってうちへと急いだ。
あれ、赤い式神さんが出てくるのを予定してたんだけど、出るまで行かなかった。←みやぎ安定の誤算。
このお話も長くなりそうだ
今日もコメントお待ちしてます✨