花 236 | 舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

腐女子向けのお話ブログです。

「………ごめんっ」
「しょーちゃん?」





オレンジくんから視線を感じたような気がした次の瞬間に、俺は謝っていた。オレンジくんに。


雅紀を離して頭を下げた。


オレンジくんに向かって下げた。


雅紀がどうしたの?って不思議そうな声で呼んでるけど、ごめんって何回も。





「こんな話、オレンジくんの前でする話じゃないよな⁉︎何やってんだ俺‼︎まじでごめん‼︎本当ごめん‼︎」
「しょーちゃん」
「………そりゃこんなやつ認められるわけないよな。全然小手先のことしかできないやつだもんな。やってないやつだもんな?声をかければ応えてくれるだろって………お前何様だよって話だよな」
「しょーちゃん、さっきから何の話してるの?」
「………え?あー………うん。俺が最低だって話」
「………は?何言ってんの?しょーちゃんは最低なんかじゃないけど」





あ。





やばい。





声のトーンとこの空気。冷気。


俺の発言によって出現したよ。雪女雅紀が。


ブリザードだよ、ハウスが。





いやいやいや。


違う違う違う。


いつものクセみたいになっている自己卑下ではなくて、反省だよ。これは。今のは。





だって、何で声かけをしようとしたかって、オレンジくんが聞いてるかもって思ったからなのに。


聞いて理解してるからかもって思ったから、積極的に声をかけていこうとしてるのに、オレンジくんが聞いて理解してるかもなのに、寿命とか2号くんとか。





理解してたらどうするんだよ。


イヤだろ、そんな話。


聞きたくないだろ。聞かせたらダメだろ。





結局本当のところオレンジくんが言葉を理解しているなんて思っていないってことが証明されたんだよ。今ので。俺が。


適当にそれっぽいことをしていればいいだろって、めちゃくちゃオレンジくんのこと舐めくさってるってことがさ。





本当に言葉を理解しているなら、何かしら応えてくれるだろ。


こっちは毎晩うなされながら声かけしてやってるんだよ。


応えてくれないなら理解してないってことだろ。


でも毎晩うなされながら声かけはしたんだ。


俺は精一杯やったよアピールになっただろ。





そんなこと、思っていたわけじゃない。


はっきりそんな風に思っていたわけじゃない。


っていうか思ってない。





けど。





実際どうよ。


実際はどうよ。





実際している言動と無意識での言動。


それが全然イコールじゃない。じゃないどころか逆。真逆。





そりゃ怒るよ。そりゃ悲しいよ。そりゃ嫌われるよ。こんな不誠実なやつ。こんな嘘つき。





オレは不思議そうにしている雅紀にその説明をした。


そしたら雅紀は………しょーちゃんって笑った。





「そんなこと言ったらオレだってそうじゃない?オレだって声はかけてるけど、聞いてるなんて思ってないよ」
「雅紀の場合育ての親だから、そもそもの立場が俺とは違うっていうのがあると思うし、聞いてると思ってないってことは見返りを求めてるわけじゃないってことだから。でも俺は口では聞いてるって言いながら心の奥底ではそんなこと思ってなくて、なのに見返りを求めてる。最低すぎだろ。そんなの」
「………しょーちゃん」





くすって、雅紀の吐息交じりの笑い声が聞こえたのと、ぴとってほっぺたに雅紀の手のぬくもりを感じたのがほぼ同時だった。





情けなさに伏せていた目を雅紀に向ければ、雅紀はそれはそれはお天使に笑みを浮かべていた。





「しょーちゃんって、ほんっと、クソがつくほどクソ真面目だよね」
「………ま、雅紀くん、アナタそんなかわいい顔でクソって」
「クソ真面目過ぎておバカ」
「………おバカ。………だな。まじで」
「ねー。おバカでおバカでおバカでおバカで………」
「ちょ………ま、雅紀くん?それはちょっと………」





いくら何でもひどくないですか?って言おうとしたら。





「………っ」





顔。





その顔。





その顔‼︎その顔反則‼︎


もう‼︎まじ雅紀くん⁉︎何なのその顔‼︎俺を見てるその顔‼︎





しょーがないんだからって言う雅紀の顔には、『しょーちゃん、大好き』って、しっかり、しっっっっっかり、書いてあった。





と、思う。思った。





って、そんな、俺ら超ラブラブじゃね?なことがあったその日。





「まーくん‼︎まーくん大変や‼︎宇宙人が‼︎宇宙人がそこで死んどる‼︎」
「え⁉︎」
「………っ⁉︎」





事件は起こった。