花 234 | 舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

腐女子向けのお話ブログです。

「Hey‼︎調子はどうだ⁉︎オレンジくん‼︎ Hey 上の方‼︎調子はどうだ⁉︎下の方‼︎調子はどうなんだ⁉︎オレンジの実諸君‼︎調子はどうだ⁉︎俺と雅紀は超絶絶好調の超だぜぃ‼︎」
「え、何言ってんの?しょーちゃん」
「………え?」
「大丈夫?寝不足でおかしくなっちゃった?」
「………え?」
「何かの真似?昨夜そんなの見たっけ?」
「………え?あ………う、うん。ちょっとね………。お、おかしいかな………はは………あはは………」





いや、俺は至って真面目にやったのだが。





オレンジくんに話しかけてみよう大作戦を始めて8日目の朝。





オレンジくんは約1週間で葉や実に変化が現れ始めるため、昨日オレンジくんから葉と実を頂き、雅紀とともに検証した。





結果は一週前とはまた違っていた。





びくびくしながらオレンジくんのところに顔を出していた時より、声をかけるようになった後の葉や実が赤っぽくなっていたのだ。


黒ずんだところに赤みが差すみたいな。





だからと言って元気になっているのとは違う。調子が上がって来ているのとは違う。


何と言うか。





………禍々しい感じがする。





それは実の方も同じで、一週前より赤みが増していて、種がどことなく尖って来ているような。





これ、イメージだけど、ただの。





赤って、怒ってるっぽくない?


尖ってるって、怒ってるっぽくない?





あくまでもイメージだけど。


イメージなんだけど。





雅紀に言ったら、『オレンジくんはオレンジの木だよ?感情があったらこわいじゃん。そんなのメルヘン通り越してホラーだよ』って言われた。





そうなんだよ。


雅紀の言う通りなんだよ。





オレンジくんはオレンジの木だ。


何度も言うが植物だ。


それは分かっている。





けどさ。





………けど、な。





先週と同じ声かけでは結果が変わらないかもしれないと、今週はこのコンサート的なノリでいってみようとやってみたのだが。





………雅紀の評判がすこぶる悪い。鬼のように悪い。





そうか。ダメか。


ならどうしようか。結局いつもと同じ?


いや、変化を知りたいから変化をつけたいのだが。





「………何で元気になってくれないんだろ。ねぇ、オレンジくん。きみは何で元気になってくれないの?」
「………雅紀」
「何も問題ないじゃん。全部正常値だよ。なのに何で?」
「雅紀」
「しょーちゃんが原因かもって、そんなことあるわけないじゃん。オレンジくんは木でしょ?」
「雅紀、どうした?ちょっと落ち着こう」
「もししょーちゃんが原因だって言うなら、しょーちゃんの何が原因だって言うの?しょーちゃんは毎晩毎晩うなされながら、それでもこうやって来て声をかけてくれてるんだよ。毎日毎日オレンジくんの心配をしてくれてるんだよ。毎日毎日、どうしたらオレンジくんが元気になってくれるかって考えてくれてるんだよ。なのに何で………」





急にオレンジくんに文句を言い出したから、どうしたんだと心配になったが。





………俺を心配してくれてるのか。この子は。俺を想ってくれているのか。このお天使は。





「オレはしょーちゃんと一緒にこの仕事がやりたい。しょーちゃんと一緒に色んなことをやっていきたい。なのに、何でオレが一番しょーちゃんと一緒にやりたいオレンジくんがこんななの?………もう、いい加減にしてよ」
「雅紀」





途中から、雅紀がオレンジくんの枝を握った。


そして最後、いい加減にしてよのところで、雅紀が、その枝を。





枝を握る雅紀の手に自分の手を重ねて、力ずくで折ろうとしていたのを止めた。





それはダメだ。


それは暴力だ。オレンジくんに、作物に、植物に対する。





「ありがとな」





その手を握ったまま、俺は雅紀を抱き締めた。後ろから。





ここ最近、俺はほぼ毎晩うなされている。


ということは、雅紀もまた寝不足なのだ。


寝不足な上にオレンジくんの心配。俺の心配。


見つからない突破口。解決策。





一時期いいところまで行っていただけに、どんどん悪くなるオレンジくんに、そりゃな、どうしていいか分からなくなるよな。


どんなに頭がよくたって、天才って言ったって、まだまだ若いしな。





「ありがとう、雅紀。俺を心配してくれて」
「………」
「でもってごめん。俺が関わったばっかりに、オレンジくんが不調で」
「しょーちゃんのせいじゃない‼︎」
「………うん。ありがと」
「………」





ありがとな。まじありがとう。





雅紀が強張らせていた身体から力をぬくまで、俺は雅紀を抱き締めて、雅紀にありがとうって言い続けた。










コンサート‼︎って思った方は🌾ください(笑)