雅紀は、俺が………俺には分からないが、顔色悪く黙ったことを、鳥がシんでいて、それをカラスが食べるということにショックを受けていると思ったらしい。
実際は違う。実際は、オレンジくんだ。
山で野生動物が生きてシんでいくことは、自然の摂理であり食物連鎖。
だから、あの鳥が普通にお亡くなりになり、カラスに食べられるということに、口もきけないほどショックを受けることはさすがに。大人なので俺も。
でも、だからと言って顔色悪く黙った本当の理由を、何も知らないだろう雅紀に説明するわけにはいかない。まだ。物事には順序というものがあると思う。
相手は奇跡の木なのだ。
もし本当にオレンジくんに意思があり思考し話すことができるのなら、奇跡以上の奇跡なのだ。
ここは慎重に慎重を重ねていかねば。
ということで、今は雅紀の勘違いのままにしておくことにした。
いずれは話さないといけない。
それが今ではないってだけだ。
今はとりあえず、森田さんに連絡を。
ソイ御殿に戻って手を洗ってからリビングに行き、テーブルの上に置きっぱなしだったスマホを持った時だった。
まるでタイミングを見計らったかのように、スマホがブルブルっと振動で着信を告げた。
「………っ」
ガタガタっ………
「しょーちゃん?」
落とした。スマホを。
あまりのタイミングでびっくりしたのと。
ドッドッドッドッドッ………
ドッドッドッドッドッ………
恐怖。
じわじわと、恐怖がやって来る。俺のところに。心に。
テーブルに、そこからさらに床に落ちたのに、スマホを。
拾えなかった。拾うことができなかった。
「どうしたの?しょーちゃん」
キッチンの方で何かをしていた雅紀がこっちに来て、俺が落としたスマホを拾ってくれた。
そして、画面を見て。
「………また?」
背中がひゅっとなる、冷たい声。
画面には、『非通知設定』の文字があった。
ドッドッドッドッドッ………
ドッドッドッドッドッ………
さっきの今過ぎて、俺はもうパニック。
オレンジくんじゃ、ないよな?
疑念。
え、これもまさか?
って、そんなことあるはずないだろ。
オレンジの木だぞ?
木が電話なんて。
けど、タイミングがタイミングで。
ドッドッドッドッドッ………
ドッドッドッドッドッ………
手紙やイタ電、タイヤのパンクは、あの人だと思っていた。
かつての上司。パワハラ上司。
あの人に恨まれるのは、道理としておかしいけど、理解はできる。
っていうか、他に思い当たらないし。
え、違う?
パワハラ上司じゃ、ない?
まさか全部、本当にすべてが………オレンジくん?
ドッドッドッドッドッ………
ドッドッドッドッドッ………
そんなバカなって思うのに。
そんなバカなって、思い切れなくて。
「しょーちゃん、座ろ」
雅紀が、さっきの声とは正反対の声で言いながら、俺をソファーに座らせた。
雅紀も一緒に座って、そのまま抱き締められる。
そして、ゴソゴソゴソゴソゴソゴソ。
からの。
「あ、もしもし森田さん?相葉です」
恐怖とパニックで動けない俺の代わりに、雅紀が森田さんに電話をかけてくれた。
え、オレンジくん電話までかけられるの⁉︎って方は米下さい🌾
今週はここでおしまい💚
みやぎの鬼‼︎って方も米下さい🌾(笑)