オレンジの木にコロサレル。
目の前にあるのは木。
たくさんのオレンジを実らせた木。
………見てる。木が俺を。実が俺を。
そんなはずないと思うのに、思うんだよ。見てる。見てるってより睨んでる。睨まれてる俺。
ザワ………
風もないのに木が揺れた。枝が揺れた。葉っぱが揺れた。音がした。ザワ………って。
やばい。
やばい気がする。めちゃくちゃやばい気がする。
全身に感じるのは危機感。やばい。わけもなく思う。やばいやばいやばい。
一歩、後退した。
続けてもう一歩。後退した。
背中を向けたらダメな気がする。アウト。終わり。一瞬で。
いやいや、クマじゃねぇんだよ。木だ。ただの木。オレンジの。
俺、まだ病んでんのか?こんな変な幻を見るぐらい。
幻だよな?現実じゃないよな?そうだろ?そうだよ。
だって俺病んでたから。前の職場で上司からパワハラ。からの鬱。
病んだわー。あれは自分でもびっくりするぐらい病んだ。
病みながら耐えてたけど、最終的に耐えきれず辞めた。
おかげで今じゃ病院通いもしなくて良くなった。
はずなんだよ。はずなんだって。違ったのか?まだダメなのか?
ザワ………
揺れる。
ザワ………
揺れる。揺れてる。木が。枝が。葉っぱが。
ほら。なあほら。
絶対見てる。睨んでる。俺睨まれてるってやっぱり。この木に。オレンジがたくさん実るこの木に。
幻だろって思う俺と、現実としか思えない俺。
一歩。また一歩。
俺はオレンジの木に顔と身体を向けたまま後退した。
どくどくとうるさい心臓。垂れる変な汗。込み上げる恐怖。感じる危機感。感じる………。
殺気。
やばい。
やばいやばいやばいやばいやばいって。
目の前がチカチカする。まじで絶対やばいって感じる。本能で。警告音が聞こえるレベル。
これ現実だ。絶対現実だ。幻じゃない。リアルすぎる何もかもが。
だってすげぇ。木からの圧。何だよこの木。何なんだ。教えてくれ。
ジリジリと後退して、そこから一気に逃げようとしたそのとき。
ザワッ………
木が一気に大きく揺れて、枝が。枝が………‼︎
「………くっ」
あり得ないことに、オレンジの木の枝が俺の身体に、首に、巻きついた。
プラスで葉っぱが俺の鼻と口を塞いだ。
今の今まで普通に取り込んでた酸素が、一瞬にして遮断された。
ウソだろ⁉︎ちょっと待てよ‼︎何で木が‼︎枝が‼︎
パニクる俺に明らかな『殺意』。俺に。俺へ。
ザワ………
猫が威嚇で毛を逆立てるように、オレンジの木の葉っぱが逆立ってる。
ぎりっ………
身体と首に巻きつく枝が徐々に締まる。俺を容赦なく締める。
ぎりっ………ぎりぎりっ………
徐々にどんどん締まる。締められる。身体に食い込んでくる。
「んんっ………‼︎んんんんんっ………‼︎」
痛い。そして苦しい。
もしこれが幻じゃなく、現実でもなく夢であるなら、そろそろ覚める頃。こんなピンチだ。
なのに覚めない。終わらない。ってことは。
痛い。やめろ。苦しい。やめてくれ。折れる。骨が。できない。息がっ………。
もがいた。
鼻と口を塞ぐ葉っぱを振り払おうと頭を振った。
首に絡む枝を外そうと爪を立てた。
汗が出る。涙が出る。鼻水が出る。
迫り来る恐怖に。迫り来る死に。
何でだ⁉︎こんなホラー映画みたいな。
ぎりぎりぎり………
みしみしみし………
鳴るのは枝。
鳴るのは骨。俺の。
シヌ。
シヌ。まじでシヌ。痛い。千切れる。折れる。締められてるところが。腕が足が身体が首が。苦しい。息が。できない。
ウソだろ。何でだよ。何で俺がこんな目に。オレンジの木に。
痛いのと苦しいので何も考えられなくなる。
あるのは恐怖と死。そのふたつ。
ぎりぎりぎりぎりっ………
みしっ………みしみしっ………
「んんんんんっ………‼︎んんんんんっ………‼︎」
やめてくれ‼︎助けてくれ‼︎誰か‼︎誰か誰か‼︎
ぶつ………
猛烈な苦しさに耐えきれず、俺の中で、俺の人生で一度も聞いたことがない変な音が聞こえた気がした。
シヌ。
オレンジの木に、俺は。
コロサレル。
最後、俺の耳に聞こえたのは。
骨が鳴って軋んで軋んで。
ぼきぃっ………
折れた、音。
✳︎詳細は後ほど💙❤️💚💛💜
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