名もない話 6 | 舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

腐女子向けのお話ブログです。

何で。




彼女とは高校が一緒だった。仲良しグループのひとりだった。



高校を卒業しても、連絡を取って時々会ってた。






ほんの、つい最近まで、何年か前まで、同窓会みたいにその仲良しグループで、1年に1度のペースで会っていた。






その時は、何も。



何も言ってなかった。何もしてなかった。






何で?






いつの間にか、そういえば連絡が来なくなってた。






私のスマホの中で彼女は笑ってた。キレイにキレイに笑ってた。






散歩の写真、イヤリングを作ってる写真、陳列棚、新作、仲良さげな家族、オシャレなカフェ。






キレイ、だった。



彼女も、彼女が撮る世界も書く世界も。






『ここは、やりたいことをやる人が住める世界でね、プラスの、陽のエネルギーを循環させないといけない世界なんだ』






ずきん。






痛む頭。



おでこからずきずきと激しく痛む頭に、声が聞こえた。






何の声?






聞きたくない。



聞きたくないのに、イヤなのに。






『なのにあなたにはその才能はない。まったくのゼロ。ゼロっていうかマイナス?』






イヤ。






『でもね、大丈夫。あなたには逆の、やりたくないことをやる才能がある』






イヤ。



イヤ。






聞きたくない。聞きたくない。聞きたくない聞きたくない。






ゴトンってスマホが床に落ちた。






あれ。彼女。あの子がそう。彼女からキラキラと溢れてるもの、あれがこの世界に必要とされてるもの。






イヤ。何言ってるの私。何思ってるの私。



何でそんなこと。知らない。私は何も知らない。声なんて聞こえない。






そうだ。起こさなきゃ。娘を。もう起こさないと夜寝られない。8時半までには寝かせないといけないのに。



ハンバーグ。まだ焼いてない。焼かなきゃ。ご飯も炊かなきゃ。6時が夕飯の時間。間に合わない。お風呂が遅くなる。洗濯も遅くなる。やらなきゃ。私。ちゃんと。ちゃんとちゃんと。











つん。











頭が真っ白で、何からしたらいいんだろうってうろうろとする私のおでこを、突かれる感触。指で。






背中がゾクってなって、一瞬ぎゅって目を瞑った。



ほんの一瞬。






開けたらそこに。






………‼︎






居た。






男。






さっき会った人。居た人。雑貨屋さんの駐輪場で。






地球。



地球の目を持つ、男の人が。






こわくて声も出なかった。ガタガタと身体が震えた。この人何この人何この人、この人この人この人。






彼は笑った。






にいぃぃぃいいいい。






唇だけで。気持ち悪く。






そして。






「バーン」






その指に、私は撃たれた。