BORDER その後の大宮編 7 | 舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

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え?





それは突然。


夜の9時過ぎ。


電話が鳴った。スマホが。俺の。





え、誰。





いつものようにベッドの上でやっていたゲームを置いて、見る、スマホ。





え?





嘘でしょ。





画面が相手を告げてる。けど目を疑う。心臓がありえないスピードで脈々してる。どくどく。ちょっと、しんじゃうから、そんなハイスピード。





大野智





って、画面が告げてるんだけど、え、待って、何で?





スマホ持った。相手の確認もした。待ち人。会いたい人。声を聞きたい人。俺の心を奪ったただひとりの人。俺の好きな人。


の、大野智、だよね?





同姓同名の知り合いなんか居ないからそうだよ。でも。


ずっと電話なんかしてこなかったくせに、何?って。





もしかしたら、なかったことにしたいって思ってるのかな、とか。思うじゃん。下手すりゃ淫行罪でしょ?俺18才未満だもん。





調べたんだよ。俺の年を知りながら『行為』に及んだ場合、智さんがどうなるかって。


恋愛関係にあったって、それを主張したって、罪に問われる可能性の方が大らしいよ?


身柄拘束されて、実名報道されて、有罪なら前科がつく。





そんな面倒な相手よりさ、アノヒト、普段ふにゃふにゃしてるしてるけど、実際何て名前かは知らないけど、アノヒト、ゾンビバスターだよ?すんごいカッコいいんだよ?





まだ覚えてる。あの声。去ねって声。ゾンビを燃やす炎。俺を抱き上げた腕。





仕事復帰するんでしょ?あんなの誰かに、一般人に一般公開したら、俺みたいにハートに火がつく人が増殖するに決まってるじゃん。


こんなさ、何も18才未満の男子高校生じゃなくて、もっと。


アノヒトに、釣り合うよう、な。





「あ」





どうしても通話をスライドできなくて、人差し指を画面にくっつけることができなくて、できない間に電話は切れた。





「………何だよ。せっかち野郎」





まだ留守電に切り替わる前だったのに。もう切りやがって。





何?


何で電話なんか。急に。





気になるなら出れば良かったのに。折り返せばいいのに。


それができないのは。





こわい。





俺は最初から恋に落ちてた。


ゾンビから助けてもらったあの日に。


でもさ。智さんは?





俺の何かを好きになるような時間は、接点は、なかったよ。久しぶりに会って、少し話して、キスだけ。それで恋になんて。好きになんて、ならなくない?


俺がとんでもない美少女になったんならともかく。鼻垂れのガキから、絶世の。ならさ。





ずるずるずる。





ベッドの上。


壁に凭れて座ってたけど、落ちてく。ずるずる。





そして転がった。





いっそあっさりフラれた方が良かった。楽だった。


何でだよ。


何でアンタ。キスなんか。あんな、キスなんか。





持ったまま離せないでいたスマホが、今度はラインのメッセージ着信を告げた。





脈々。どくん。





思わず見ちゃった画面に、メッセージの表示。





『出てこい』





どくん。





どくん、どくん、どくんどくん。





寝転がってたベッドから起き上がって、窓からそっと、こっそり覗いた。外。下。





智さんが。





智さんが、立ってた。