青空の下、キミのとなり 62 | 舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

腐女子向けのお話ブログです。

S side



乱れた服を整えて、雅紀が気怠げにソファに座っている。





冷蔵庫に入っていたミネラルウォーターを渡して、俺は隣に座った。


「大丈夫?」
「はい………。櫻井さんは?」
「俺は、全然」


こてん、と。
雅紀の頭が俺に寄りかかる。


「ごめんなさい、仕事中……なのに」


さっきまであんなに俺を煽っていたのに、耳まで真っ赤にして、俯いて。


あまりのギャップに、目眩すら感じる。


「そろそろ、戻ろう。立てる?」
「大丈夫」


手を取って立たせると、また雅紀が俺の肩に寄りかかった。


「雅紀?」
「もう1回だけ、キス、してください」


目眩。


俺は、雅紀に、煽られて。
煽られて。


これから一緒に仕事をしだしたら。
俺は一体どうなってしまうのか。


そっと重ねた唇は。
どうしたってそこで終わらず。


深く深く絡んでいく。


「ありがと………」
「何かあったら、連絡して」


不安、なのだろうと、思う。


相葉社長にすべてを話して、何を言われるのか、何を、されるのか。


頑なに一人で話すと言う雅紀に。
俺ができるのは、これぐらいで。


「何時でもいいから、連絡して」
「うん………」


はい、ではなく、うん。


その返事にさえ、顔が緩んでしまう。
また俯こうとする雅紀を手で制して、俺は、もう一度雅紀に、口づけた。






「あれ、翔さんと、雅紀?何やってんの?」


玄関の鍵をかけていたら隣の玄関が開き、潤が出てきて、俺はひどく焦った。


潤の部屋の、隣だったのか。


隣で雅紀がびくっとなったのが、見えた。


「相葉くんが寮を見たいって言うから連れてきただけだ。潤は今日は?」
「今から撮影だよ。もう迎えが来る」
「そうか。じゃあな」


雅紀の様子が気になって、早くその場を立ち去ろうとした。


…………が。


潤が機嫌良く笑って、雅紀の肩を抱き寄せ、顔を近づけた。


近すぎるその距離に、苛立ちを覚える。


「ここ住めばいいじゃん。俺の部屋と隣だし。飯作ってやるよ。こう見えて俺、結構うまいから。ねぇ?翔さん」
「あ、うん………。考えとく、ね」
「考えといて」


口の端だけをあげて笑う、潤の不適な笑み。


雅紀の不自然な笑み。


何か、あった?


「行こう、相葉くん」
「あ、はい」
「じゃあね、翔さん、雅紀」
「また、ね」


ヒラヒラと手を振る、潤。


何か、嫌な感じがする。


潤のあの笑い方は、あまり良くなかったような。


とにかく行こう。
そしてここはもう、きっと来ては、いけない。


足早に階段を降りて、俺たちは車に乗った。