A side
苦しい。
粘着質の何かがオレに絡んで。
沈む。
ああ、手だ。
黒い手が。
無数の黒い手が、絡んで。
堕ちて、堕ちて、堕ちて………
いいよ。
堕ちて、あげる。
何をしても許されないなら。
もう足掻くのをやめて。
いっそ委ねてしまえば。
苦しい。
苦しくて。
苦しくて。
苦しくて。
沈みきったその先に。
何があると言うんだろう。
揺れる。
ゆら、ゆら
揺れる。
ゆら、ゆら
揺れて。
あ……………………。
「雅紀……雅紀……?」
「あ、れ?」
目を開けると、真上にしょーちゃんが居て。
夢なのか現実なのか。
「大丈夫か?」
しょーちゃんが心配そうに眉をひそめて、オレのほっぺたに触れた。
これは、現実。
じゃあ、あれが。
夢。
しょーちゃんを待っていて、またソファで寝ちゃっていた、んだ。
しょーちゃんに、手を、伸ばす。
「あ…………」
「雅紀?」
手が。
オレの、手が。
「しょ、ちゃん」
声は、相変わらずだけど。
「どうした?」
「手が」
黒く、ない。
言った瞬間。
しょーちゃんに、思いきり。
抱き締められた。