Your Eyes 32 | 舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

腐女子向けのお話ブログです。

S side



母さんから着信があったのは分かっていた。


でも。
それを無視して仕事を終わらせた。


今は、話したくない。


雅紀に連絡をしようとスマホを取り出して、母さんからの着信がたくさんあることを知る。


何かあったのか。


大きく息を吐き出して。


俺は、母さんに電話をした。


『翔!?』
「うん、何?いっぱい着信あったけど」
『今ちょっと話せる?他に誰も居ない?』
「大丈夫だよ」
『今朝ね……相葉くんが来たんだけど、あなた何か聞いてる?』
「え………?」


母さんの突然の言葉に、頭が真っ白になる。


雅紀が、うちへ?


『母さん、あなたと相葉くんとのこと、お父さんに聞いたんだけど…………』
「そのことは……もうほっといてくれって」


次に来る言葉を聞きたくなくて、つい言い方がきつくなってしまう。


母さんがついた溜め息が、聞こえる。


もういい。
切ろう。


そう思った時。


『相葉くんね、すべてを捨てても、しょーちゃんと離れませんって、お父さんに』
「え?」
『お父さんに、そう言ったの。入院してたんでしょう?調子が悪そうで、お父さんも、早く帰って休んだ方がいいんじゃないかって言ったんだけど……』


雅紀、また、過呼吸が。


大丈夫なのだろうか。
今、雅紀はどこで、何をしているのだろうか。


『しょーちゃんが好きですって。離れませんって、言いに来ましたって』
「…………………」
『お父さんのことだから、きっときつい事を言ったんでしょう?でもね、相葉くんが帰ってから、お父さん言ったの』
「何、を」
『翔を、嫁にやった気分だなあって』
「え?」
『今すぐには無理かもしれないけど、分かってくれるんじゃない?仕事の時のように』


親父。
どうして。

あんなに。
あんなにヒドイ言葉で雅紀を傷つけたのに。


『相葉くん。潔くて、格好良かった。あんな風に言われたら、お父さんだって言い返したりできないわ』


くすくすって、母さんが、笑っている。


何がなんだか分からなくて。


「母さんは、反対しないの?」
『そうねぇ…………』
「………………」
『あなた、幸せ?』
「……………うん」
『なら、いいじゃない』
「母さん…………」
『相葉くんも言ってた。分かっていますって。全部、分かっていますって。それは、あなたもでしょう?』
「……………うん」
『なら、何も言うことはないでしょう?』
「母さん…………」
『いつか、二人でうちにいらっしゃい』
「うん…………ありがとう、母さん」


電話は、そこで終わった。


雅紀。


いつだってお前は、びっくりするようなミラクルを起こして、俺を驚かせて。


ラインアプリをタップする。


今から行く


俺は短く、雅紀に送った。