A side
伸ばされた手から、反射的に逃げてしまって。
しょーちゃんの顔が、すごい、悲しそうで。
まだ、言ってない。
あれから、自分の手が真っ黒に見える、なんて。
言えなくて。
しょーちゃんに触れたいのに。
しょーちゃんに触れられない。
気のせいだって、分かってる。
錯覚とか幻覚とか、そういうもので。
本当は普通の手なんだって。
でも。
何回見ても、どれだけ自分に言い聞かせてみても。
黒いものは黒くて。
気持ち、悪い。
「相葉アイビーちゃんのお世話の仕方、ちゃんと調べるんだぞ。枯らしたらお仕置きだから、な?」
「お仕置きって、何か、やらし」
「そう思うお前がやらしいわ」
何かに気づきながら、話をかえてくれたしょーちゃんにほっとして。
オレはアイビーの検索を始めた。
「しょーちゃん、うまく、でない」
「検索センスないな」
貸してみ?
しょーちゃんがオレのスマホをスッと取って、何か入力した。
「はい」
「もう、出た?」
「もう出た」
「おか、しいなぁ」
渡されたスマホを。
アイビーの説明を、ずっと読んでいく。
あ、水やりあんまりしなくてもいいんだ。
なんて、思っていたら。
花言葉。
「しょ、ちゃ………」
「うん?」
しょーちゃんが笑っている。
優しい優しい顔で。
オレの大好きな、優しい顔で。
「しょーちゃん」
これ。
「なに?」
とぼけてるけど、知ってるよね?
その顔は、絶対に、知ってて買ってきたんだよね?
葉っぱもハート型だもん。
確信犯だよね?
アイビーの花言葉。
永遠の愛。
「しょーちゃん」
「うん」
「大好き」
「うん………」