大映
監督:三隅研次
出演:勝新太郎、伊藤雄之助、藤村有弘、財津一郎、遠藤辰雄
仏顔師(デスマスク職人)の「ガンメン」(勝新太郎)が、仲間たちと始めた葬儀屋の顛末。
原作・野坂昭如、脚本・藤本義一。
舞台は「人類の進歩と調和」70年万国博覧会に向けて盛り上がる大阪。
しかしガンメンが通うのは区役所の死亡届の窓口。
そこへ遺族がやってくると届出用紙に書かれた住所へ直行。
一方窓口の係長「ジャッカン」(「若干」が口癖。藤村有弘)は葬儀屋「清葬社」の社長(遠藤辰雄)に「入荷しましたで」と電話一本。
リベートを貰っているのだ。
ガンメンのあまりに荒っぽいデスマスク作成術や、遺族の前ではち合わせした葬儀屋同士の争い(遠藤辰雄VS財津一郎)の喧騒という出だしから快調。
ここは大阪弁を活かした脚本、藤本義一のダイアログがすばらしく、テンポがいい。
自分が理想とする葬儀、「真にホトケさんのための」葬儀を実現すべく、ガンメンは美容整形外科医の「センセイ」(伊藤雄之助、怪演!)やジャッカンらを巻き込んで葬儀屋を設立。
その名も「国際葬儀協会」略して「国葬」
センセイの死体美容術や、葬儀演出家(Funeral Directerこれまた略してFD!)を名乗るガンメンが企画した「水子百万体供養」がセンセーショナルな話題を呼び、国葬は当たりに当たる。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20210304/06/miya-sun-eiga/d1/a6/j/o0516029014905133440.jpg?caw=800)
ちなみに電話番号は307-4942(ミンナヨクシニ!)
ガンメンは言ってることとやってることがまるで正反対なのだが、勝新太郎の個性で違和感なく観ることができる。
ところが、酔ったガンメンがデスマスクのコレクションルーム(四方を囲む無数の死者の顔!)で我にかえるあたりから作品の雰囲気は暗く沈んでゆき、ついに驚天動地(文字通りなのだ!)の誰も予想できないラストへ。
開発中の広大な万博用地が念を押すように二度出てくるのは重要で、これは焼け跡派、野坂昭如・藤本義一、戦中派で過酷なシベリア抑留体験をもつ三隅研次がタッグを組んだ、「アンチ万博」映画。
過去を忘れ、高度経済成長を謳歌する戦後日本への怨念が色濃く出ている。
これは、あまりにも早すぎた凶暴な『おくりびと』
トンデモ映画か?
いや、大傑作でしょう。
撮影は宮川一夫。
万博開催用地での、世界の終わりのような夕焼けが作品のテーマを明確に示しています。