◎映画/『魔女見習いをさがして』 | みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道


2020/11/17TOHOシネマズ錦糸町楽天地
監督:佐藤順一、鎌谷悠
CV:森川葵、松井玲奈、百田夏菜子

往年の人気テレビアニメシリーズ『おジャ魔女どれみ』を通じて知り合った三人の女性たちの友情を描く。

『おジャ魔女どれみ』シリーズは1997~2003年まで4年間続いた。
東映アニメーション15年ぶりのオリジナル作品でもあったシリーズは、「魔女見習い」となった主人公どれみたちの小学3年生から6年生までを細かく描いた傑作。


私は当時すでにおっさんであったが毎週日曜の朝、早起きして、感心しながら、時に涙しながら見ていた。
そこでは不登校、両親の離婚、ジェンダー、肉体の変化など、子供たちが現実に抱える問題(それは決して魔法では解決できないというのがこのシリーズの大きなポイント)が扱われていた。
そして、そうした問題を大人目線で語るのではなく、あくまでも子供に寄り添って「一緒に考えてみよう」という製作の姿勢に、私は大変好感を持ったのだった。

シリーズ完結から二十年を記念して作られた本作だが、テレビシリーズの続編ではないのがまず、面白い。
これは『おジャ魔女どれみ』のファンで、今では大人になった女性たちの物語である。

登場するのは貿易商社に勤める27歳のOL(帰国子女)、教師を目指す22歳女子大生、フリーター19歳(だめんずウォーカー)。
三人の女性は各々、リアルな悩みを抱えていて、決して順風満帆とはいえない鬱屈した日常を送っている。
この世代の違う三人が偶然出逢い、いわゆる「聖地巡礼」の旅を通じ、喧嘩したり、助け合ったりしながら次第に互いの理解を深めてゆく。



三人の他人へのスタンスが今風ではなく、踏み込みすぎ、お節介なのも良い。
これはオリジナルシリーズの世界観、人間観を敷衍したもので、セリフもストレート。
生身の役者が口にすれば鼻白むところだが、そうならないのはアニメーションの強みでもある。


それから、本作は旅の映画でもある。
「聖地」へ向かう列車内の描写は鉄道マニアの方々も納得する細かさ。
旅先の風景の美しさ、すれ違う土地の人々の点景、ちょっとした恋模様。女性三人で盛り上がっていく酒宴の楽しさと切実さが、旅情をかきたてる。


こうしたふれあいを通じ、三人は人生の新たな目標を見つけ、共に歩き始める。
フィクション(虚構)が、現実に与える力について深く考えさせられる作品。
そして、登場人物に寄り添って現実の問題を考えるという製作スタッフの姿勢が、オリジナルシリーズから一貫している点に感動した。

観るとちょっとだけ肩の荷が軽くなる映画。
オススメです。