映画/『妻は告白する』 | みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道
1961年10月29日公開
大映
監督:増村保造
出演:若尾文子、川口浩、小沢栄太郎、根上順、高松英郎

槍ヶ岳で滑落事故が起き、薬学部教授(小沢栄太郎)が死亡する。
パーティーは薬学部教授とその妻(若尾文子)、そして製薬会社社員(川口浩)。
落石によって教授と妻が宙吊りとなり、妻がザイルを切ったのだ。
教授に多額の保険金が掛けられていたことから、警察は妻を逮捕し、真相の解明は法廷へ。
原作は円山雅也、脚本は井手雅人。

推理小説マニアでもある若尾文子自身、自らのワン・オブ・ベストとしている一作。

この作品の若尾文子は変幻自在、女の様々な顔を見せる。

最初は忍従の女。
戦災孤児となり、薬学部に入るも貧しくて貧血になるような境遇に耐えかね、つい年の離れた小沢栄太郎と結婚してしまう。
しかし夫は家庭を顧みず、妻を侮辱し続ける。
小沢栄太郎の憎々しさ、いやらしさが素晴らしい。
夫には夫なりの屈託があるのだが、それを一方的に妻に叩きつけている。
やがて夫婦は憎み合うようになる。

そんな時、夫が薬品開発に関わっている製薬会社の社員(川口浩)が現れる。
誠実な社員は妻の境遇に同情して、なにくれとなく面倒を見るが、これが夫の邪推を呼ぶ。
川口浩と話す時の若尾文子は少女のように明るく、無邪気だ。
ここで若尾文子は、恋する女の顔を見せる。

裁判では「可哀想な女」として、無罪を主張する妻だが、その合間に見せる様々な表情に観る者は幻惑される。
しかし、実は作品のテーマはそこにはなく、彼女が無罪を勝ち取った先にある。

裁判の間に社員と妻の間柄は進行し、ふたりは真の愛情を育んだかに見える。
しかし…。

雨の日、ずぶ濡れになって会社を訪れる若尾文子は凄艶。
ここは恐ろしく、肌が粟立つほど。
誰が最も罪深いのか。
誰もが観終わった後、そこに思いを寄せるだろう。

ラストシーン、若尾文子のシルエットが画竜点睛


傑作です。


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