読書/伊藤典夫、浅倉久志編「スペースシップ」 | みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道
新潮文庫

1985年に出た新潮文庫「宇宙SFコレクション」というアンソロジーの②で、内容は

「すべての夏をこの一日に」レイ・ブラッドベリ/「地球の緑の丘」ロバート・A・ハインライン/「クリプティック」ジャック・マクデビッド/「帰ってきた男」スティーブン・キング/「夜来たる」アイザック・アシモフ/「闇と夜明けの間」アルジス・バドリス/「楽園にて」R・A・ラファティ/「宇宙の影」フィリップ・ホセ・ファーマー/「夜のオデッセイ」ジェイムズ・イングリス/「ローマという名の島宇宙」バリー・M・マルツバーグ/「そして目覚めると私はこの肌寒い丘にいた」ジェイムズ・ティプトリーJr./「ブルー・シャンペン」ジョン・バーリー

私の「積本消化計画」第2弾です(笑)。

以前紹介した「スペースマン」同様、いやそれ以上にビッグネームが並んでます。

この中で私が一番感動したのはブラッドベリの「すべての夏をこの一日に」です。
雨が降り続ける金星植民地。
生まれて一度も太陽を見たことのない子供たちが、やがて近づく晴れ間を待ちわびる物語。
ごく短い短編ですが、繊細で美しい言葉が紡ぎ出す世界に心打たれました。

別な意味で印象に残ったのは、一人場違いな感じもするキングの「帰ってきた男」
帰還した宇宙飛行士の心身に不調が始まり、という物語で勘の良い読者は、古いB級SF映画の傑作「原子人間」なんかを思い出すのでは?
まったくその通りなのですが、そこはキング。
ラストの気色悪さはピカイチです。

あとは「ブルー・シャンペン」
ジョン・バーリーの作品は初めて読んだのですが、まず宇宙に浮かぶ巨大な水滴状のリゾート地「バブル」という設定に、クラクラします。
このリゾート地を舞台に、VRテープ(!)の女性大スターと、バブルで働く元オリンピック金メダリストの水中指導員との苦い恋を描いた中編。
ちょっとハーレクインロマンスっぽい物語ではありますが、VR、人体改造といったディテールに、サイバーパンクの萌芽が見えます。
これはカッコイい。

この本には「ブルー・シャンペン」の他にも、「性」を描いた作品がいくつか収録されているのも印象的です。
本好きの中に「SF=非人間的」と考える、少なからぬ人に向けたメッセージもあるのかなあと考えてみたり。

SF小説は、上下巻ガッツリ長編に浸るのも良いのですが、たまにはこういうアンソロジーも楽しいですね。