映画/『縮みゆく人間』 | みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道

1957年
アメリカ
監督:ジャック・アーノルド
出演:グラント・ウィリアムズ、ランディ・スチュアート

放射能と農薬の複合作用で突然身体が縮み始めた男に襲いかかる恐怖の数々。
原作・脚本リチャード・マシスン。

これまでLDしか出てなかったSF映画史上の名作がついにDVDに!
というわけで手に入れて早速観ましたが、いやーさすがはリチャード・マシスン。
予想を遙かに上回る作品でした。

主人公スコット・ケアリー(グラント・ウィリアムズ)は放射能の灰を浴びたため、身体が小さくなり始めます。
最初は服のサイズが合わなくなり身長が縮み、体重が減り始め…。
妻との幸福な日常をジワジワと恐怖が侵し始める冒頭は不気味で緊迫感があります。

病院で精密検査を受けたスコットは、身体全体が縮み続けているという事実を知らされます。
現代医学がいまだかつて直面したことのない奇怪な現象に、医師たちはなす術もありません。

ついに身長が90センチまで縮んでしまったスコットは全米の好奇の的となり、妻との平凡で幸福な日々も失われつつあります。
自暴自棄となって外へ飛び出したスコットは、見世物小屋の小人の女性(この人は生まれつきこの身体で、それ以上縮んだりはしない)と出会い、「どんな人間の上にも空は青い」という明るい一言に勇気づけられます。

しかし、縮み続けたスコットはついにドールハウスに住まわざるを得なくなります。
絶望的な日々をおくるスコットは、飼猫に襲われ地下室に転落。
飼猫がスコットを食べたと勘違いした妻は悲嘆にくれ、家を出ます。

何でもない日常が、身体が縮小するという設定を加える事で一転してまるで違う世界になってしまう。
これぞSFの醍醐味でしょう。

地下室に取り残されたスコットはひとりぼっちでサバイバル生活をせざるを得なくなります。
敵は地下室に棲みついている蜘蛛。
スコットは針の剣で蜘蛛を倒します。

ここからの展開は圧倒的。
身体は限りなく小さくなり続けますが、この先どんなことが待ち受けていようと生き続けることを決意して終わります。
このひと味違うラストこそ作家マシスンの真骨頂といえるでしょう。

特撮は題材的にあまり目立ちませんが、巨大なセットと合成を使用して、異常な設定を巧みに見せます。
特に時代を考えると合成撮影の精度は高く、隙がありません。

1950年代を代表するSF映画の一本。
堂々たる傑作ですビックリマーク