1965年
アメリカ
監督:オットー・プレミンジャー
出演:ローレンス・オリビエ、キャロル・リンレイ、ケア・デュリア
アメリカからイギリスへ引っ越したシングルマザー(キャロル・リンレイ)の娘バニーが行方不明になる。
警察が誘拐事件として捜査に乗り出すが…。
原作イブリン・パイパー、脚本ジョン&ペネロープ・モーティマー。
真っ黒な紙で被われた画面。
ヌッと現れた手が紙をビリビリちぎると下からクレジット・タイトルが出てくるという趣向。
タイトルデザインはソール・バス。
物語はキャロル・リンレイがイギリスに引っ越してきたばかりというのがポイントで、同じ言葉を喋るからこそという疎外感が緊迫感をよぶ。
頼れるのが兄(ケア・デュリア)だけという状況の中、捜査に乗り出した刑事(ローレンス・オリビエ)は次第に娘の存在自体を疑い始める。
すべてはリンレイの妄想ではないかというわけだ。
取り乱してエキセントリックに見えるリンレイをはじめとして、変態じみた大家(なんとノエル・カワード)、保育園の一室に隠棲して幼児の心理を研究し続ける保育園経営者など、怪しい人物が次々と出てきてサスペンスの醸成はなかなか。
一方ローレンス・オリビエ率いる捜査陣も、一歩一歩事実を固めていく。
残念ながらこの作品を結末まで語ることはできないが、近親相姦を匂わせるリンレイとデュリアの関係、場末のパブのテレビに登場するゾンビーズなど、神経を逆撫でするような表現と共にエスカレートする狂気が観る者を巻き込んでいく。
これは謎解きサスペンスだから、もちろん真実の行方は映画の興味のひとつではあるが、実は底が割れてからがこの作品の真骨頂といえよう。
長らくソフト化されず幻の作品だったがようやくDVD化された。
地味ながら雰囲気のある傑作。
ぜひ、ご覧下さい。