演劇/大人計画「ウェルカム・トゥ・ニッポン」 | みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道

2012/3/29下北沢本多劇場にて
作・演出:松尾スズキ
出演:阿部サダヲ、平岩紙、アナンダ・ジェイコブズ、荒川良々、宮藤官九郎、皆川猿時、村杉蝉之助

9.11テロのさなか、日本人教師牛頭(ごず、少路勇介)に命を助けられたエイドリアン(アナンダ・ジェイコブズ)。

メールを通じて牛頭との愛を深めたと信じる彼女だったが3.11東日本大震災から牛頭との連絡が途絶える。
思い余ったエイドリアンは牛頭を訪ねて東京はワダチ区にやってくるが…。

エイドリアンがワダチ区でまず出会うのはタクシー運転手蒲生(宮藤官九郎、スモークの中からバーナード・ハーマンの音楽に乗って現れるタクシーに笑ったのは劇場で私だけショック!)。
彼を筆頭に、八百長で角界を追放されたヤクザの運慶(皆川猿時)やその弟弟子で今はホストクラブ経営の快慶(荒川良々)、女子生徒と関係している高校教師(阿部サダヲ)など、どうしようもない連中ばかり。
その中で害虫害獣駆除専門の謎の老人バルさん(「なぜか」ドイツ語が話せる。村杉蝉之介)が不気味な笑いをふりまいて、際立った個性を見せる。

いつものように、時事ネタあり、下ネタあり、黒い笑いがみっちり詰まっており、個性的すぎる登場人物が絡み合い、物語は錯綜する。

しかし、笑いつつ見ているうちにあるキーワードがクッキリと浮かび上がってくる。

それは「狭間」

埼玉と東京の狭間(埼玉から狸が越境してくるにひひ) ワダチ区。
そして9.11と3.11の狭間。
更に駄目押しのように前の戦争と「次の戦争」の狭間。

そういった狭間で薄く生ぬるい生を営む、醜くしょうもない日本人に向けられる松尾スズキの視線は辛辣であるとともに限りなく優しい。

1945年4月15日のベルリンと2012年のワダチ区がつながるスケールの大きいクライマックス、エイドリアンが歌う「牛頭さん」(God's Sunということか) に、これまでの松尾作品とは少し違う手触りを感じた。

「戦争からも放射能からも逃れて年金もらって、日本のいいとこ丸取りにしてヌクヌクと生きてきたあんた達から絞れるだけ絞り取ってやるんだビックリマーク
観客席に向かって吠える女子高生の平岩紙がかっこ良かったですラブラブ!