「風薫る」は初夏の季語で、特に5月の季節感を表すのに用いられる。
5月になると思い出すエピソードがある。
子どもの頃、実家の近所に小さな犬がいた。
ポメラニアンだったか、ヨークシャテリアだったか。
名前を聞いてみたら「クンプウちゃん」と言った。
当時実家でも犬を2匹飼っていた。
1匹はマルチーズで私が小学校に入学した頃、ある日突然母が連れて帰ってきた。
姉と一緒に名前は「トム」に決めた。
「マリー!」「ジミー!」と色んな名前を呼んでみて、「トム!」と呼んだらこっちを振り向いたからだったと思う。
ちなみにトムはオスだった。
もう1匹は私が小学4年生の時に拾ってきた犬で、名前は「コロ」。
コロは朝の通学の時に電車に乗ってきた子犬だった。
コロコロしていたから「コロ」。
私は乗り換え駅の駅長室にコロを預けて学校に行き、放課後電車で連れて帰った。
駅員さんはコロの首に白いビニール紐をつけてくれた。
今考えるとよく駅員さんが預かってくれたものだ。
家に帰ると両親に叱られたけれど、結局コロは数年近所に住んでいた祖父母に預けられた。
祖父母の躾がなってなかったせいか、コロは散歩中にグイグイ引っ張る犬になってしまったが。
コロは薄い茶色の毛をしていて、尻尾がクルンと丸まっていた。
動物図鑑で調べたら、柴犬っぽかった。
ただ毛の生え替わる時期がいつもズレていて、真夏なのに毛が詰まっていた。
他の柴犬よりも体が相当大きかった。
今思うと、コロは秋田県の雑種だったのではないだろうか。
ちなみにコロはメスだった
つまり何が言いたかったかと言うと、近所の犬の名前が「クンプウちゃん」であることに、私は驚いたのだ。
コロ、タロウ、ジロウなどのよくある名前ではない。
聞き慣れない不思議な音の名前。
すごく気になったから、名前の由来を聞いてみたら、5月生まれだからとのこと。
しかも「クンプウちゃん」には漢字もあるらしい。
トムにもコロにも漢字はない。
いや、そもそもどんな字をあてればいいのやら??
「トム=富」、「コロ=転」と言う具合だろうか。
とにかく色々びっくりして、そのことを両親に話したら、「あー、風薫る5月からやから、”薫風”って書くんやなぁ!」と言っていた。
とにかくそのエピソードをきっかけに、私の中に「風薫る5月」が強烈にインプットされたのだ。
「5月っぽいものを描きたいなぁ、、、」
iPadの上でApple Pencileを動かしていたら、ふわっと細い線が描けた。
目には見えない風を表現しよう。
そう!そう!薫風!薫風!
草の間を駆け抜ける風。
頬で感じる優しい風。
ヒュン、ヒュンと。
風薫る5月が始まった。
5月、6月は私にとって大きな節目になる。