今年も面白かったM-1。笑い飯の優勝で幕を閉じましたが、僕なりの総括でもしてみましょうか。


 最終決戦に残ったのは、スリムクラブ、笑い飯、パンクブーブー。


 この結果になんの疑いの余地もなかった。


 ただね、M-1の難しさをいうとすると、「連続出場」だと思うんです。


 みんな知っているんですよね、連続出場者が、どんな漫才をするか。M-1にはどこか「新しい」モノを求めているんです。


 だから、連続出場の芸人は戦いが厳しくなる。1回目の出場が、顔見せ程度ならまだしも、インパクトを残してしまうと、その後が難しくなる。期待もされるから。


 第1回目とスタイルをまるっきり変えたフットボールアワーとチュートリアルはともかくとして、、3回連続出場以上に、優勝コンビがこれまで出てこなかったのは、そうした影響がある。


 今回までの笑い飯がそう、ハリガネロックがそう、アメリカザリガニがそう、麒麟がそう、南海キャンディーズがそう、千鳥、ダイアン、ナイツ、モンスターエンジン、東京だいないまいと、ハライチだってそう。


 もう彼らのネタが分かっているから普通に面白いだけじゃ、物足りない。言いかえれば、ますだおかだも、フットも、チュートも、ブラマヨも、あそこで行き切れたから良かったけど、あそこで、違う力が働いていたなら、変わっていたでしょう。


 そうした意味では、今回の大会は興味深かった。まったく未知数のやつらと常連組がいたから。


 ジャルジャルのネタはコントっぽい。確かに。でも、スリムクラブも、あれは漫才じゃない。コントに近い。オードリーも漫才じゃないと思っていたけど、それ以上だと思う。でも、スリムクラブが評価されたのは、同じ変化球でありながら、コントの印象を強めてしまったジャルジャルの存在があったから、まだ、評価できた。


 個人的に、面白さ・新鮮さで言えば、ジャルジャルも結構、面白かったと思う。


 銀シャリのツッコミは新鮮だった。大したことないボケを、あそこまで広げられるのは彼しかいないと思う。そして、最後のボケ、YMCAを小文字にしたボケは、最高だった。


 しかし、その前のスリムクラブのインパクトが強すぎた分、思った以上に点数が伸びなかった。


 ナイツ・ハライチは、完全に連続出場の壁にぶち当たった。彼らのスタイルは誰もが知っている。その中でできることは、ネタをさらに面白くするか、変化を加えるかなんだけど、彼らに、変化はなかった。面白いのは面白いんだけど、変化がないから、同じネタを見せられたような感覚になってしまい、面白くない印象がぬぐえないのだ。


 笑い飯は、去年のネタにかぶせてきた上に、クオリティーの高さを見せてきた。しかも、ボケ勝負じゃなく、ボケの前の、唄で笑いを取って来た、「変化」が今年の武器になった。


パンクブーブーは、ボケがボケるときにどや顔をするので、それが僕には受け付けなかったが、今年はそれが抑えられていた。しかも、去年とはちょっと違ったスタイルがつぼにはまった。面白い漫才をした。


 「新しさ」を見せつけたスリムクラブ、去年より切れの増した変化球と配球を見せた、笑い飯、去年より低目のコントロールにさえを見せたパンクブーブーが、かくして、最終決戦に進出したのだ。


 最終決戦のネタは、「民主党」で、最大のボケを見せたスリムクラブが一番面白かったと言っていい。続いて、笑い飯、パンクブーブー。パンクブーブーは、1本目のネタとパターンが一緒だったために、何の変化もな感じられず、さっきと同じネタを見たような感覚にさせられてしまったから、良くなかった。


 では、なぜ、優勝が笑い飯になったのか…。


 一つは、スリムクラブのネタを漫才と見るのかどうか。審査員の評価を見れば、そこは問題にならなかったようだが、僕個人には、漫才と取るのは難しいかなと見た。「民主党」のボケが最高だったが…


 二つめは、9回連続出場去年のインパクトを踏襲した笑い飯への敬意。普通、これだけ、彼らの漫才を見せられ、パターンが同じなら、飽きられる。爆笑はなかったが、普通に笑えた。これは、評価していいという、プラスアルファが働いた。


 3つめ、今回のM-1が最後だった。笑い飯も最後の挑戦だった。僕は第3回の優勝は笑い飯だったと今でも思っている。フットの2本目は笑い飯より、面白くなかった。遡れば、第2回の優勝も、ますだおかだではなく、フットだった。


 そう。第3回目の優勝に、笑い飯を持ってきていいのかどうか。この得体の知れていないコンビがチャンピオンになっていいのかという疑いと彼らにはまだ来年以降があるというのが、彼らを優勝にさせなかった。


 これと、今回のスリムクラブは似ている。


 最後の優勝者となった時に、これでいいのか?となる。これまでM-1を盛り上げてきた笑い飯の方が、総合的に見ても良いのではないのかという見方になっても、おかしくないのだ。


 3回以上連続出場がかなわなかったこれまでのM-1.波に乗った時期に出てきたやつらが優勝してきた。第2回で流れをつかんだフットボールアワーの第3回の優勝。第3回の敗者復活でM-1をジャックした第4回を獲ったアンタッチャブル、第5回で、初見参の勢いのままに正統派漫才で制したブラマヨ、第5回で絶妙な顔見せのあと、第6回を制したチュート、第7回はどのコンビもネタが不作な中に、奇妙な雰囲気でM-1をジャックして、そのまま制したサンドウイッチマン、オードリーのネタをどう評価するかで割れ、勢いだけで優勝したノンスタイル、変化球ネタのコンビしか揃わなかった大会で正統派漫才の安定感抜群で制していったパンクブーブー。


 つまり、笑い飯が3回以上連続出場の中で、初めて栄冠をつかんだわけだが、彼らの漫才を振り返ると、3回のモデルチェンジをしているから、真のチャンピオンなんじゃないかなと、そういう気がしますね。


 最初のWボケで3回目までは良かったが、4回目で受け入れられず。5回目からは、モンローで新境地も、翌年、ロボットで失敗。翌年も元に戻したが、大会自体が寒く、笑い飯に過度な期待がかかり、本来の面白さよりも、イメージで受けなかった。前回にやっと、「鳥人」というネタで、さらにモデルチェンジに成功し、「チンポジ」で失敗したとはいえ、「笑い飯ここにあり」の存在感は見せつけた。


 ただ、「鳥人」が奇跡的なネタだったから、これを超えるのは難しいだろうという不安も付きまとった。あのネタを基準にされたら、評価は落ちるだろう。それが普通だった。


 しかし、1本目で笑い飯は去年と、そう変わらないクオリティーを見せた。去年の印象がありながら、落ちなかったということは、かなり、面白かったということである。


 それにしもて、笑い飯にとっては長かったM-1である。第3回で優勝していたはずだが、でも、彼らは、ここでかなり成長したと思う。全出場コンビの中で、一番、成長度があったのは、笑い飯だろう。


 だから、彼らが最後の優勝だった。


 M-1が育てた一番のコンビなのだから、ふさわしい二人だろう。


 遷都1300年の年に、奈良市内の高校出身の彼らが優勝する。奈良市内にある奈良育英出身の楢崎正剛が今年はJリーグMVPになった。春日・大仏マラソンからバージョンアップした、「奈良マラソン」も大成功。


 奈良市民としては嬉しい限りだ。