5~6年ほど前に「ハチドリのひとしづく」というお話の本が
ブームになったことがあります
もともとは南アメリカのアンデス地方の先住民族に伝わる民話です
わずか17行の短いお話ですが
覚えておられる方も多いと思いますし
また、このお話を知って
地球温暖化等の環境問題に
取り組むきっかけとなったという方もいらっしゃると思います
誠に勝手ながら
この民話をもとにしてアレンジしてみました。
あるところに緑豊かな森の自然に恵まれた
動物たちの楽園がありました。
ある年、雨が少なく
すっかり乾燥した森に強い風が吹き続け
その風で揺れた木々がこすれあい
摩擦熱で自然発火した山火事が発生しました。
なすすべもなく逃げ惑う森の動物たち・・・
我先にと逃げてゆく動物たちの中で
体長わずか10センチ程度の
一羽の小さなハチドリが
振り返り燃え盛る炎を見て悩みました
「大変だ、どうしよう、何とかしなきゃ・・・」
そう思ったハチドリは
みんなが逃げる方向とは違う湖に飛んでいきました
湖の水をその小さなくちばしに含むと
取って返して、炎をめがけて一滴の水を落としました
行ったり来たり
何度も何度も
くちばしで水のしずくを運んでは
一滴、また一滴と火の上に落としていきます
その様子を一羽のオウムが
じっと見ていました。
「そんなことをして、いったい何になるんだ、
焼け石に水だよ~
無駄なあがきはやめて、早くお逃げよ」
そう言われたハチドリは
こう答えました。
「無駄かもしれないけど、
それでも
私は、私にできることをしたい・・・」
オウムはしばらく考えていましたが、
やおら飛び上がると
湖めがけて飛び込みました。
湖に飛び込んだオウムは
身体を濡らしたまま
炎の上に舞い戻り
羽ばたいて数滴の水を撒きました
ハチドリとオウムは
それを幾度となく繰り返します
立ち止まってその様子をじっとみていた熊が
二羽の鳥に叫びます
「お前たちの気持ちはけなげだけど
この猛火はそんな滴じゃ消せないよ」
するとオウムはこう答えました。
「あんな小さなハチドリでさえ
こんなに頑張っているんだよ、
長年、棲家を与えてくれたこの森への恩を思うと
何もせずにはいられない、
私も、私のできることをしたいだけ」
黙って聞いていた熊は
やおらきびすを返し
まだ燃えていない炎の近くの木々を
その分厚い掌でなぎ倒し始めました
何本も何本も・・・・
この様子を見た象が駆け足で戻ってきました
象は大きな体で
黙って次々に木々をなぎ倒し始めました
火の手はそこでとどまり始めました
もうそれ以上燃え広がることはなさそうです。
遠巻きにその様子をうかがっていた他の動物たちも
我も我もとクマが象がなぎ倒した木々を
炎から遠ざけるように引きずり出しました
するとどうでしょう
先ほどまであんなに強く吹き荒れていた風がやんだかと思うと
大粒の雨が激しく降り出したのです。
このお話をお読みいただいて
何を感じていただけたでしょうか・・・