先日仕事の誇りというお話を
書かせていただきましたが
そのお仕事のお話で、
以前に聞いたお話を思い出しました。
アウトソーシングということで、
関連業務を子会社もしくは下請け業者さんに
委託される企業も多いと思います。
例えばオフィスビルの場合、
オフィスのごみ回収や
内外の窓拭き、
ワックス掛け等のフロア清掃、
トイレ掃除などです。
さて、大きなテナントビルの
ビル内の清掃業務を
一手に引き受けている、
メンテナンス会社さんのお話です。
委託料金が安いに越したことはありませんから
あるとき、競争入札にしようか、
という話が持ち上がりました。
そうなれば、当然ギリギリの料金設定も
考えなければならなくなりますし、
最悪の場合、
委託から外れるということもあり得ます。
メンテナンス会社としては一大事です。
メンテナンス会社の責任者は
テナントビルの管理窓口担当者に
引き続き受託を継続してもらえるよう
折衝陳情しました。
もちろん結論はすぐには出ませんし、
検討するということになりました。
そんな折、
テナントビルの管理担当者は
ふと、思い出したのです、トイレの花を。
そのビルに入居している
会社のオフィスでは、
来客用に、受付カウンターの上に
お花を飾っておられるところがいくつかあります。
その盛り花がしおれて古くなったものを
処分するのも
このメンテナンス会社の清掃係りの仕事です。
捨てるお花の中から
まだ使えそうな程度のいいお花を選んで
一輪挿しにさして
トイレに飾っていたのです。
お花のリサイクルなんて、
そんなことはもちろん、
清掃委託業務の中には含まれていませんし、
清掃係りの方の自発的・自主的な行為なんです。
誰に命令されたわけでもなく
清掃係りさんの気持ちなんですね。
ビル管理会社の担当責任者さんは
そのことを知っていたんです。
何とかしてあげたい、
そう思って本社に掛け合ってくれました。
その結果、今まで通りということになったのです。
トイレの一輪挿しのお花が
メンテナンス会社を救ったのですね。
マニュアル通りに指示命令されたことだけをやっていても
それでもいいかもしれません。
けど、十分ではなく、十二分な仕事というのは
清掃係りさんの、
こういう気持ちの中から
生まれてくるものなのでしょうね。
自分の仕事に誇りと愛着があれば
心遣いの差があらわれます。