一人のセールスマンがいました
彼は優秀な販売成績を挙げるために
他の誰にも負けない多数軒訪問をしました
自分のスキルをアップしようと
商品知識のみならず
関連するいろんな知識の習得にも
努めました。
より多くの成果を挙げるために
高額商品の販売を目指しました。
高額商品を販売するためには
大手企業が得策と考え
社員数が50人・100人という
企業を繰り返し訪問しました。
しかしなかなか大きな成果に結びつきません。
焦る自分を奮い立たせるために
いろいろ工夫もし
試行錯誤を繰り返しましたが
それでも決して「成績優秀なセールスマン」には
なれませんでした。
あるときふと立ち寄った本屋で
何気なく手に取った本の言葉が
目に飛び込んできました。
碁の名人の指南書だったのですが
「勝つ手を打つな、
負けない手を打て」
という一言だったのです。
この一言が
彼を迷いから吹っ切らせました
勝つ手ばかりを考えていると
つい大きな手ばかり打ちたくなる
大きな手というのは
それだけ危険を伴う
負けない手を考えれば大勝はしないまでも
しぶとい碁になる。
そんなことが書いてありました。
彼は今までの自分の営業を反省しました。
大企業はそれなりに設備も整っていますし
福利厚生制度もすでに充実していますし
顧問税理士との連携も強く
コンサルタントもついているかもしれません。
すでに信頼できる業者との
取引が構築されているかもしれません。
そんな大企業に新たな取引を提案して
商談を成功させるのは
並大抵のことではありません
しかし、まだ創業してそんなに年数の経っていない
比較的社歴の浅い中小企業なら
設備も社内制度も
決して充分とは言えない状況のところも多いはずです
「売ろうとするな、
断られないようにしろ」
彼は、そう置き換えたのです。
それからの彼は、
それまでの大企業から
中小企業への訪問に
より一層重きを置いたのです
するとどうでしょう
決定権者である経営者への面談率は格段に高くなり
それに比例して
提案件数も増大したのです。
彼はこうしてトップセールスマンの座を獲得したのです
「彼とは、うちの会社が
まだ社員4~5人の
零細企業だったころからの付き合いでね。
彼はそのころからずっと変わらず親身になって
うちの世話をしてくれているんだよ
おかげで今では株式一部上場の会社になったけど
彼との取引を他へ変えるつもりはないね」
ある大企業の社長に
こんな風に言ってもらえるまでになった・・・
今では、それが彼の
何よりの誇りとなりました。