2017年、仕事の拠点を京都から東京へと移した三輪。当初は2人体制で事務所を営んでいましたが、2021年には個人で「三輪記子の法律事務所」を立ち上げます。独立開業に至るまでの心境の変化を聞きました。
●自分自身の発信に責任を持つ
――2017年、司法修習時代の同期と東京・表参道で事務所を立ち上げた経緯を教えてください。
当時はちょうど、コメンテーターの仕事で東京に行くことが増えていました。結婚後、樋口が京都に来てくれたのですが、もっと東京で仕事をして欲しいなという気持ちもありました。
その時期にちょうど、子育てに専念していた司法修習時代の同期から「復帰を考えている」という話を聞き、「それなら一緒に事務所をやろう」と、トントン拍子で話が進んでいきました。
――拠点を東京へと移したことで、それまで関西で培ってきた基盤がゼロになる不安はありませんでしたか。
東京に出てきて稼げるだろうか、という不安はもちろんありました。京都にいた時に担当していた案件は、東京に来ても責任を持って最後までやろうと思っていた。それで、事務所を立ち上げて2年ぐらいは東京から京都にも通っていて、行き来も大変でしたね。
――その後は、どうやって仕事を軌道に乗せていったのでしょうか。
まだまだ軌道に乗ったとは思っていないですし、特別なことはしていません。強いて言うならば、目の前の1件1件をちゃんとやることです。
テレビをはじめメディアへの露出はしていたので、番組を見て依頼したいと感じてくださった方が一定数いました。あとは知人や友人からの紹介もあり、得られた仕事をひたすらコツコツやっていった感じです。
――その約3年半後の2021年の3月、「三輪記子の法律事務所」を立ち上げられます。個人事務所として再スタートを切ったのは、どのような思いがあってのことですか。
「自由」と「責任」、この2つを大切にしたいという気持ちからです。
遡ること1年前の20年春、世の中で新型コロナウイルスの感染が拡大し、担当していた多くの案件もベンディングになりました。そこで時間ができ、自分自身を見つめ直す余裕が生まれたんです。
その際、世の中に向けて言葉を発信することへの責任も改めて自覚する部分がありました。自分自身の発言により責任を持つためには、独りになるべきだと思ったんです。
●先入観を排し、依頼者と向き合う
――テレビで三輪さんを見かけたことはあっても、普段の仕事についてご存じない方は多いと思います。24年6月現在では、どんな案件を手掛けられているのでしょうか。
色々な種類の案件を担当していますが、最も多いのは、離婚事件や不倫の慰謝料請求のご相談。
ほかに遺産分割案件や、中小企業・個人事業主の方からの法務案件(顧問業)もあります。
世代は20代から70代まで幅広く、孫の面倒を見ながら相談に来られる方もいます。性別でいうと女性が多いですが、男性からのご相談もありますね。
――20年にお話を伺った際には、スポーツ分野の法律問題にも関心を持たれているというお話がありました。現在の活動状況はいかがでしょうか。
日本スポーツ協会で、暴力行為等相談窓口の相談員を務めています。スポーツ選手のプライベートなお困りごとに関するご相談も受ける機会も増えました。自分自身も公に出る仕事をしていることもありますし、その点では多少の共通点があるというのも自分自身の強みかもしれません。
――幅広い世代の依頼者と信頼関係を構築するために、心がけていることがあれば教えてください。
「先入観を持たない」ということです。「50代女性はこんなパターンで離婚することが多い」など、自分の頭の中で考えていることを当てはめるのではなく、まずはその人が話したいことを話してもらうことを大切にしています。
一方、案件を進めていく上で必要になってくる情報もあります。ご本人が積極的に話したがってない部分であっても、信頼関係を構築しつつお聞きするようにしています。
――様々な離婚案件を担当される中で、感じていることはありますか。
色々ありますが、1つ挙げるならば、結婚は「資格」ではないということです。
とくに女性側からのお話を聞いていると、男性のなかには、結婚=「専属の家政婦を得た」という感覚なのかな、という方もいらっしゃる。でも結婚というのは単なる制度であり、婚姻関係というのも紙きれ上の関係に過ぎません。
ただ、そうした感覚はその人だけの問題と言い切れない部分もあります。「うちの夫がおかしい」「私の我慢が足りない」など、夫婦関係の問題はとかく個人の感覚に還元されがちですが、そこには世代や社会で共有している、古くさい固定観念だったり、社会政策の影響があります。個人を責めるのではなく、社会構造に目を向けること。また、社会構造は変えられると考えることが大事だと思っています。
●大きな決断につながるのは、日々の思考
――事務所設立の話に戻ると、環境を変えるのは誰にとってもエネルギーだと思いますが、三輪さんの場合、「決めたことはやる」というスタンスがはっきりされていますよね。素早く決断できるのはなぜですか。
決断の先を想像した上で、自分にとって「面白い」と思える道を選びたいと常に思っているんす。
人がなぜチャレンジをするのかというと、現状をより良くしていきたいからだと思うんです。挑戦の結果、たとえうまくいかなくなったとしても、何もしないよりはマシだと思っています。
行動しないと未来は変わりません。肝心なのは今の延長線上にある未来でいいと思えるかどうか、ではないでしょうか。
――開業や転職は大きな決断ですが、日々の生活の中でより小さな判断は誰しもが求められています。日々の決断力を上げるためには何が必要でしょうか。
「自分が何をしたいか」を知ることだと思います。1日の中でどの時間が好きかとか、この先どう生きていきたいか、とか。
そういったことを日頃から考えておけば、大きな決断もしやすくなってくるのではないでしょうか。
(続く)
【取材・構成=松岡瑛理】
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