みなさん、こんにちは。
三浦ピアノ 渋谷便りです
今回は、今話題のグランフィールの構造について書きます
弊社は、一般代理店として東京で一番早くから取り扱いを開始しているので、ずいぶん前からグランフィールの構造についてこのブログでもご紹介してきましたが、
発売より年数が経ち、モデルチェンジもされ、内部パーツもマイナーチェンジを重ねてきておりますので、記事を書き直したいと思います
というわけで参りましょう、たっぷりとお伝えいたします
………??“グランフィール”ってなぁに??………
グランフィールとは、
アップライトピアノにグランドピアノのタッチと響きを与えるべく発案された、
鹿児島県の藤井ピアノサービスさんの新案特許です
グランフィールってインターネットで調べてみると「グランドピアノみたいに連打ができる!」という点にスポットライトが当てられていますね。
実際に、グランドピアノとアップライトピアノでどのくらい連打性能が違うのかというと、
グランドピアノ…1秒間に14回の同音連打が可能
アップライトピアノ…1秒間に7回の同音連打が可能
グランフィールを搭載したアップライトピアノ…1秒間に13回の連打が可能
という具合に、グランドピアノの連打性能はアップライトピアノの2倍!
だいぶ違いがありますよね。
アップライトピアノにグランフィールを取り付けると、グランドピアノとほぼ同等の連打性能を得ることができます。
ですが、グランドピアノのタッチ=連打性が高いということだけではありません
立ち上がりのクリアな音色からとても弱い音色まで、ダイナミックな動きから細やかな動きまで…「表現力の幅」こそが最大の違いとなります。
連打性はそのうちの一つの要素でしかありません。
では、なぜその違いが生まれるのでしょうか?
具体的にアクションを見てみましょう!
グランドピアノのアクション(構造)模型
↑は、サイレント付きの模型なのでちょっとだけ余分なものも付いていますがお気になさらず…
グランドピアノには“レペティション”という機構があり、打鍵(鍵盤を弾いた)後、
鍵盤を三分の一戻すと次の打鍵ができます。
これは、ヤマハのG2型の実際のアクションです。鍵盤より奥側を拡大してみました。
グランドピアノは鍵盤を押した後、指の力を抜くと鍵盤の方から指を押し上げてくる感触があり、鍵盤を1/3の位置まで戻せば次の打鍵ができます
頑張って指を上げて鍵盤の位置を一番上までリセットする必要がなく、少し力を抜けば良いだけです。
そのため、余計な力を使うことなく、演奏者の指の動きが自然にハンマーに伝わり、アップライトピアノでは難しい細やかな動きや、繊細な音色の表現ができます
ところが、
アップライトピアノは打鍵後に鍵盤を一番上まで戻さないと次の打鍵ができません
鍵盤の方から押し上げてくる感覚はなく、指を持ち上げて鍵盤の位置をリセットしてから次の打鍵が開始されます。
速い動きをしたいときには、無意識の内に指先が忙しくなり、余分な力が入ってしまいます。
内部構造上、動きにロスが多いため、素早い連打やテヌート(音を保つ)の動き、ピアニッシモ以下の弱~~~~い音を出したいときなど、グランドピアノに比べて音抜けしやすく、思うように表現ができないのです
アップライトピアノのアクション(構造)模型
そこで!!
アップライトピアノでもグランドピアノのような、
指に吸い付いてくる感触と、
繊細なコントロール性と表現力を実現したのが
グランフィールです。
グランフィールが付くと、
今までのアップライトピアノでは難しかった動きが可能になるのです
それでは、いよいよグランフィールの登場です!
※この模型ではダンパーが省略されています
グランフィールには、
既存のアップライトピアノに、グランフィール機構を後から取り付け
(↑こちらの方が先の発売です)
予めグランフィールが搭載されている新品ピアノ(グランフィールピアノ)
の二通りがあります。
初代のグランフィールピアノは、2012年10月にGf01Wnという機種が発売されました
2018年4月にモデルチェンジし、
現在は、Gf01W(高さ121cm)とGf01S(高さ118cm)の2機種になりました。
弊社ではGf01Sと、
弊社で再生した中古ピアノにグランフィールをセットしたピアノを展示いたしております。
では、実際にどこがかわるのでしょうか・・・?
一般的なアップライトピアノとグランフィール取り付け後のアクションを見比べてみましょう!
グランフィールは、従来のアップライトピアノに新たに2種類のバネが取付されます。
そして、とある部品の形状が従来の物とは異なり、その形に部品を加工する必要があります。実は、その加工こそがグランフィールの一番の要なのですが、
詳細は企業秘密で記事に載せられない為ぜひご来店ください
店頭でご案内させていただきます!
この記事では、2種類のバネについてご紹介いたします
●レペティションスプリング●
上記に記載した部品への加工と合わさって、グランドピアノのような細やかな表現を可能にするバネです
1秒間13回の同音連打を可能にする操作性の高さは、テンポの速い曲でも音抜けが少なく、指の動きがそのままハンマーに直結するような一体感を得られます
そのため、今までのアップライトピアノでは難しかった、弱い音を保持したままの細やかな動きや、ピアニシシシモ(pppp)などの極めて繊細な“表現”もグランドピアノに近い感覚でコントロールすることができます
≪静止時≫
左が一般的なアップライトピアノ、右がグランフィール取り付け後です。
青線で囲った“ジャック”というパーツにレペティションスプリングが取り付けされています。
このジャックというパーツがハンマーを押し上げて、ハンマーが弦を打つ仕組みです
≪鍵盤を弾いた時≫
先ほどの写真よりも、ジャックが手前に動いているのがわかりますでしょうか?
アップライトピアノはハンマーが弦を打った後、ジャックが元の位置(静止時の写真の位置)に戻らないと次の打鍵ができません。
鍵盤を一番上まで戻すのは、このジャックを元の位置に戻すためなのです
グランフィールは、グランドピアノと同じように鍵盤を1/3の位置まで戻せば、ジャックが元の位置に戻るので、ちょっとだけ指の力を抜くだけで自然に次の打鍵ができるのです
その鍵盤の戻りの自然さが、今までのアップライトピアノでは指にかけざるを得なかった余分な力みを取り除き、素早い動きを必要とする連打をはじめ、様々な動きを演奏者のイメージしたとおりに指から鍵盤、そしてハンマーへと伝えていくことを可能にしてくれるのです
●ショット&ドロップスプリング●
肉眼では判断できないレベルですが、
グランドピアノとアップライトピアノでは「ハンマーが弦に触れている(摩擦が起きている)時間」が異なります。
ハンマーが弦を打つ時、下から上にハンマーが動くグランドピアノに比べ、
手前から奥へハンマーが動くアップライトピアノは、重力の関係で弦に触れている時間が長くなり、弦の振動を阻害してしまいます
それを解消するためのバネが、このショット&ドロップスプリングです
≪静止時≫
左が一般的なアップライトピアノ、右がグランフィール取り付け後です。
青丸で囲んだ部分が、ショット&ドロップスプリングです。
≪鍵盤を弾いた時≫
右のグランフィール取り付け後の写真では、
弦を打つ時にハンマーの柄にスプリングが当たります
ハンマーが弦を打つ瞬間に、ハンマーの柄の部分にこのバネを接触させることにより、
ハンマーの柄の部分がしなって打弦速度が速くなります。
弦に触れている時間が短くなるため、一般的なアップライトピアノのように弦の振動を阻害しません。
そのおかげで倍音の発生を妨げることもなくなり、響きが豊かになります
また、音の立ち上がりも良くなり、音の粒がそろった印象になります。
グランフィールは操作性の向上だけでなく、音の響きにも良い効果が得られるのです
長くなりましたが、最後にだいじなことを・・・
グランフィールは、さまざまなピアノに取り付けできます。
お手持ちのピアノにも、もちろんお取り付けできます
取り付けたことによって、全く別物になってしまうのではなく、元のピアノの良さをそのままに、今までできなかったことができるようになる、とても画期的なシステムです。
その画期的なシステムは、海外でも特許を取得するほどになり、
発売開始より年数も経ち、多くの調律師からの支持を得て取付技術者も増えてきましたが、実物を試弾できるお店はまだ多くありません
その影響か、インターネット上には実体験を基にした確かな情報もあまり出ていないので、
ぜひご来店の上、客様ご自身で体感していただきたいと思います。
お気軽に、実物をご試弾にいらしてください
皆様のご来店をお待ちいたしております
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※グランフィールカスタムのピアノは都度異なります。上記は2019年2月時点のピアノです。