台詞いろいろからここに独立させる



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⬇️任務の数日前⬇️


プレフトの限られた人しか行けない階or棟の廊下を歩くデレクとフィーノ、前から歩いてくるエル。


「お。あれエレノア様じゃねぇか?」

「ほんとだ。エレノア様ーっ」


「エレノア様、こんにちは」

「デレクさん、フィーノさん。お久しぶりですね」

「どもども、おひさでーっす」

「お前エレノア様に向かってなんて口を……」

「ふふ、いいんですよ。フィーノさんみたいに気さくに話しかけてくださると私も嬉しいです。皆さんよそよそしいくらいなので……」


「荷物、多いですね。任務に向けての準備ですか?」

「そうですよー。場所も辺鄙だからすぐ街に戻れないし、入念に準備しないといけなくて」

「まだ準備期間はあるんで、しっかり準備していきますよ」

「第一部隊の任務は全部危険ですからね。どうかお気をつけ——」


会話をしているとデレクとフィーノの死に様が視えたエル、ガタガタと身体を震わせる。


「ま、待って……行かないで、その任務には行ってはいけません……」

「え、なんでですか?」

「……それは、」


死に様が視えたとは言えず口籠るエル


「何かよくないものでも感じました? ……たとえば、オレらが死ぬとか」

「——っ」

「それって私たちが任務に行かなかったらどうなるんですか?」

「……お二人は、もちろん無事です。ですが……」

「カイシさんレベルなら生き残るかもですけどー、任務に行ったメンバーは基本全滅ですよね。なんならもっと酷いことになってるかも? 敵が今以上に力をつけちゃうとか」

「……あの、それは、……それはっ——」


「教えてくれてありがとー、エレノア様っ。でも、私たちそれが使命なんで」

「死ぬかもしれないですけど、そんなん全員そうじゃないですか。……それにオレたち、いつも死ぬつもりないんで。たとえ死んだとしてもタダじゃ死なないですから、絶対に」




⬇️任務前⬇️


「今回の任務、二手に分かれたいんだよね。片方が洞窟の探索、もう片方がその付近の森の探索。洞窟は俺、フィーノ、アゼル。森をデレク、チェイニー、リィス、リュール、サズで行きたいと思ってるよ」

「森側の方が人数が多いのはなぜですか?」

「ああ、リュールいい質問。今回の洞窟は狭いから、大人数で行ったら逆に戦闘中動きにくくなるんだよ。だから小回りがきくフィーノとアゼルが必然的にこっちに入ることになるかな。そこに俺が行けば十馬力くらいにはなるし、魔法で辺りを照らせるでしょ」

「十どころか何百とか何千じゃね?」

「あはは、チェイニーくん言えてるー」


「デレクには森側のメンバーを率いてもらいたい」

「了解っス」



⬇️任務中、二手に分かれる前に不穏な空気を感じる第一部隊⬇️


「……なに? 今の気配」

「ンだこれ……顔も見てねぇのにヤベェのがわかるな」

「……俺が様子を見てきたいところだけど、もう潜入しないとまずいな……」

「カイシさん、そしたらオレが洞窟側に入りますよ。カイシさんには全然敵わねぇけど戦力的にはそれが一番でしょ、オレなら魔法も使えますし」

「……そうだね、デレク頼むよ。森側のメンバーは人数減って申し訳ないけど、一旦俺が一人で様子見に行くから何事もなければすぐ戻ってくるよ」







姉貴みたいなこと言うな



……姉?



あ……


思い……出した



オレには、ねーさんが……




「魔物になりたくない、おねがい、ころして」

「できない……オレには、できな……」







デレクの首をチェイニーが、身体をリュールが支える、薬草で何とかしようとする

サズはデレクがもう助からないことを察知しアゼルに回復魔法

フィーノは仰向けの状態、リィスが回復魔法



「おしゃれなお店でご飯食べて、お酒飲めるようになったら一緒に飲んで、彼氏できたら惚気聞いてくれるって……」

「……うん」

「まだ、まだまだ私、フィーノさんとやりたいこといっぱい……っ!」



「ねぇリィスちゃん、笑って」

「笑えないです! こんな状況でっ……!!」



「私さ、にこにこ人の話聞いて、楽しそうに自分の話するリィスちゃんの笑顔、大好きなんだ」


「そんなリィスちゃんを好きな人、私以外にもいっぱいいる。ここにいるみんなだってそうだよ」

「っ私は、私にはその中にフィーノさんもいてほしいです……!」



「ね、笑って」

大粒の涙を浮かべながら微笑むリィス、穏やかに笑うフィーノ。

「……ふふっ、ありがとー……」




光を失った金青の瞳が雨空を仰ぎ見る。返り血が雨で流れ、頬を伝って地に落ちる。ひどく悲しいはずなのになぜか涙は出てこない。




⬇️自分に罰を下してくれと言うアゼル/情に流されるなと隊員に言うカイシ


「……罰を下してくれ」

「本来なら仲間を殺せば罰が下る。けど今回は、あの二人を放置すれば隊はほぼ壊滅してたうえに恐らく今後この世界にとって大きな脅威となった。……今回の死は正当だよ」

「仲間を殺したのに正当もクソもあるかよ!」


胸ぐらを掴む。


「お前の判断は正しかった。……ただ、しばらくのあいだは事情をよく知らないほかの隊の連中がお前を責めるだろうな」

「……ほかの隊の奴らに責められるのは構わない。オレが殺したのは事実だ。オレはただ……仲間を殺したというその事実だけが、つらい」

「少なくともこの隊のだれもお前を責めはしないよ」

「それでも……オレは」

「この隊のだれもお前を責めない。それは確かだよ。……ただ、アゼルもそうだけどまだお前らは甘い。そのままの心持ちでここでやっていけると思うなよ」


煙草を吹かす。


「ヒトゴロシをするたびに毎回思い悩むのか? 敵も、時には味方も殺さなければいけないのがこの仕事だ」


カイシがチェイニーたちを振り返る。その眼は恐ろしいほどに冷え切っていた。


「お前らも情に流されるなよ」





⬇️カイシを追いかけるリュール


「ま、待ってください」

「なに? リュール」


「自分は、悔しかったです。なにもできなかった。見ているだけで、文字通りなにもできなかったのが……いちばん悔しいです」


「カイシさんは部下を失って悲しいとか、悔しいとかはないのですか?」


「なかったよ」

「……っ」

「昔はね」

「え……」



⭐️リュールと別れた後のカイシの回想⭐️

プレフト横の誰もいない場所、いつもの喫煙場所にて


「ハァ……できない奴らの嫉妬は醜いね。悔しけりゃそれ相応の実力をつければいいのに」

「ほんとっすよねー。あ、火どぞ」

「ああ、いつもありがと。……デレク、俺も魔法使えるからいいんだよ、別に」

「いやいや、年上は敬うものっすよ」

「あ、デレクさん、私にも火」

「フィーノお前は少し年上を敬え」

「敬ってますよー。でもほら、目の前にライターいるのに自分の使うのもったいなくないですか?」

「てめぇ俺をライター呼ばわりすんなよ!!」


⭐️回想終了⭐️


他の隊長(カイシより年上)に第一部隊をけなされ言い返した後、イライラしながら早足でいつもの喫煙場所へ向かうカイシ


「チッ……事情を知らない弱者が口出しするなよ」


 煙草を薄い唇で咥える。いつもはそれで勝手に部下が火をつけてくれるがいつまで待ってもそのときは訪れない。


「デレク。火……」


 先ほどまで彼らの話をしていたというのに、今まで近くにいたのが当たり前すぎて今もまだ当然のように自分の後ろにいる気がする。らしくない。

 煙草を吸う仲間がいなくなってすこし気がふれただけだと、心の中で誰にも聞こえない言い訳をする。


「情に流されてるのはどこのどいつだ……」





⬇️デレクは絶対に助からないと判断し、アゼルに回復魔法を施したサズの苦悩


「僕、デレクさんがもう助からないと思って回復魔法をかけませんでした。あんなにお世話になったのに見捨てるなんて、僕も、僕も人殺しです……」





⬇️ヒトゴロシについて話すチェイニーとリィス


「……俺たちもいつかはだれかを殺さないといけないときが来るのかな」

「今までは魔物は倒してたけど、人間相手だと怪我させて動けなくさせることしかしてなかったわよね。殺さなきゃいけないほどのことがあったとしても、その後のことはだいたいフィーノさんたちがやってたから……」

「俺気づいたんだけどさ、弓って人の心臓を射抜いても俺の手にはなんの感触も残らないんだよな」

「……あんたの言いたいことわかっちゃった。魔法もさ、人を焼いてもあたしの手にはなにも残らないのよね」

「でも剣って目の前で人が死ぬし、血も浴びるし、内臓を抉ったり首を飛ばした感覚も生々しく手に残るんだろ」

「……うん」

「そんなん、気にするなってほうが無理だろ」