台詞いろいろ
地の文は少しずつ追加

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【アゼチェイリスの友情】
●第一部隊で大きな仕事をして、その際にアゼルとチェイニーが特に活躍した後の話とする。デレクとフィーノ存命時の話かどうかは検討中。
●かつて何度か同じ任務にあたったことのあるヒューゴ(先輩)からしつこく迫られているリィス。この話に厚みを持たせるため、ヒューゴは何度か登場させた方が良いかも。

プレフト内の廊下とか?でヒューゴに話しかけられるリィス、アゼルたちも一緒。

「よ、リィス」
「……お久しぶりです」
「後輩が第一部隊だなんてかつて教えた身として鼻が高いよ。食事、また行かない?」
リィスの腕に手を伸ばすヒューゴ、リィスはすんでのところでその手を躱す。
「第一部隊に来てから忙しくて。すみません」

目が笑っていない笑顔で対応するリィス。
ヒューゴが立ち去った後リィスに聞くチェイニー。

「お前、飯行ったって言ってたけどヒューゴさんと仲良かったっけ?」
「あれはあっちが強引に誘ったのよ。だいぶ前に一緒の任務だった時、あたしが自分の背後にいた敵を焼き払ったんだけど、それより微妙ーに遅いタイミングでヒューゴさんがその敵を斬ったのよね」

「ほんとに微妙なタイミングの差だったから、本人は自分の剣で助けてやったと思ってるんだろうけど……それで恩売られて一回だけ一緒にご飯に行ったの。そしたらそれからしょっちゅう食事に誘ってきて嫌んなっちゃう」

「しかも何が鼻が高いよ、一緒の任務になった時に一方的に戦術の話してきただけじゃない! あの人が強いのは認めるけどあたしの方が強い自信あるし、あいつから教わったことなんて一個もないわよ!!」
「うむ……リィス、荒れているな……」
「よっぽどヒューゴさんのこと嫌いなんだな」


●また日を変えて何度か食事の誘いを受けた後、ついにヒューゴにプレフトの空き部屋?人気のない廊下?に呼び出される。たまたま近くを通りがかったアゼルとチェイニーが聞き耳を立てる。

「……全然誘いに乗ってくれないからはっきり言うよ。俺、リィスのこと好きなんだ。付き合ってよ」
「……前もお伝えしたと思うんですけど、私、今はそれどころじゃなくて」

このへんリィスとヒューゴで押し問答

「……やっぱりチェイニーか? それともアゼルって奴か? やけにあいつらと仲良いもんな、お前」
「二人はそんなんじゃないです。大事な仲間なので」
「仲間にしては常に一緒にいるだろ。何度も飯食ってるところ見たぞ」
「幼馴染なんです。会ってない期間はありましたけどだいぶ長いあいだ一緒に過ごしてたんで、それで他の人より仲が良いだけですよ。ていうか、ご飯くらい同じ隊なら一緒に食べません?」
「そうか? 俺、そんなに行ったことないけど」
(それはあんたが周りに嫌われてるからじゃない)

また押し問答。アゼルとチェイニーをバカにされてリィスブチギレ。

「ふざけないで!!」

「あいつらの剣と弓が、今までどれだけの人を救ったと思ってるの? あたしたちを何度助けてくれたと思ってるの? 知りもしないで勝手なこと言わないで!」

「あいつらが毎日どれだけの覚悟で命を懸けて、世界を救おうとしてるか知らないでしょ? あの二人がいかに第一部隊としての誇りを持ってるかちゃんとわかってから言いなさいよ!!」

「あたしの大事な仲間を馬鹿にする奴なんかと付き合うわけないでしょ」
「あたしは、あたし自身のことだけじゃなくて、あたしの仲間のことも大切にしてくれる人に好きになってほしい」
ブチギレたあと、放心するヒューゴに対してひとつ息を吐いて背を向けるリィス
「……失礼しました。もう任務以外で私に話しかけないでください。あと……私のことは二度と誘わないで」

第一部隊室に向かうリィス。アゼルとチェイニー、リィスが立ち去ったあと壁に隠れたまま会話。

「……なぁアゼル。せんせいのとこにいた時さ」
「……たぶんオレも同じことを言おうとしてる」
「あ、やっぱり? ——昔も似たようなことあったよなって」
「ああ」

12歳の頃、同じ託児所の男子に告白されるも断るリィス。その男子にアゼルとチェイニーのことを悪く言われてブチギレるリィスの回想を入れる


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【16歳組のアゼルに対するイメージの違い】

自主練を終えて第一部隊室に戻ってくるアゼルとリュール。隊室にはチェイニー、リィス、サズの姿あり。

「アゼル、手合わせしてもらえて助かった。何か思うところがあれば意見をもらえないか」
「そうだな……後ろからの攻撃に対して少し反応が遅れてた。見えづらいとは思うが対応できるようにした方がいい。甲冑があるから多少は問題ないと思うが、もしそれが致命的な攻撃だったら一瞬で立てなくなる」
「やはりそうか……次の手合わせでは背後からの攻撃を中心にやってもらえるだろうか?」
「ああ、わかった。オレはどうだった?」
「うむ、相変わらず無駄のない美しい太刀筋だったぞ。……ひとつ言うなら、身体を捻りながら斬りつけるときに力があまり入っていなかった。おそらく体勢によって力の入りやすさが違うからだろうが、筋力を上げた方がいいな」
「今度付き合ってもらえるか」
「ああ。おれの筋トレはきついが効果は保証する」

アゼル、一度隊室を出る。

「アゼルはいいやつだな」

リュールの言葉にチェイニーは食べていた菓子を落とし、リィスはポットから注いでいた紅茶を呆然としながら注ぎ続けてこぼす。サズはにこやかにリュールに話しかける。

「ええ、アゼルくん、いい人ですよね」
「え……お前らマジで言ってる!?」
「アゼルがいいやつ? え、正気?」

リュールとサズの言葉にチェイニーとリィスは信じられないと言いたげな目。

「アゼルは優しいぞ。声をかければいつでも嫌な顔せず手合わせしてくれて、アドバイスも的確だ」
「僕、この前探していた魔道書があったんですけどなかなか見つけられなくて、その話をアゼルくんにしたら次の日に買ってきてくれたんですよ。最近たまたま道具屋で見かけたからと言っていたんですが、優しいですよねぇ」

「え、あたしたちが知ってるアゼルと全然違う……」
「あいつって全然悪人じゃねぇけどさ、なーんか性格悪いっつーか……態度が雑じゃね?」
「それはお前らがオレに対して雑だからだ」

戻ってきたアゼル、自分のいないところで好き放題言っているチェイニーとリィスにキレ。

「リュールとサズは誰にでも優しいがお前らは雑だろ。だから同じように接してるだけだ」
「んぐぐ……」
「うっ……悔しいけど言い返せないわね……」


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【物語後半、ヘルの中ボス的な敵との戦いで第一部隊ほぼ壊滅、サズは怪我をするも意識あり】

「あ……そん、な、」

「みんな……起きて、ください。アゼルくん……!!」

すぐ側に倒れているアゼルに回復魔法を施しながら揺するも反応なし。敵がアゼルとサズに近づいてくる。サズ、アゼルを庇うようにアゼルの前に跪き、敵を睨みつけながら攻撃魔法を手に集中させる。

「……近づかないでください!」
敵(口調は要検討)「……あんた人殺したことないでしょ。無理しない方がいいよ。手、震えてる」

「僕の役目は……僕のことを大切にしてくれたみんなを、僕に勇気をくれたみんなを守ることです」

「そのためなら自分の手を血濡(けが)しても、命を落としても構わない!!」

サズの攻撃魔法が敵の身体を掠めると同時に、起き上がったアゼルが敵を斬って殺す。握りしめたサズの手の上に自分の手を重ねるアゼル。

「お前だけは血濡れないでくれ」
「あ、アゼルく……」
「サズ、お前の手は命を繋ぐ手だ。——お前はオレの命を救ってくれた。オレの命を、オレたちの命を守り続けてきたお前の手は血濡れたらいけない」
「あ……」
「……頼む」
「……はい。……はいっ——……!」


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「アゼルお前さ、なんでシナリダ出てってから一つの街に定住しなかったんだよ?」
「……オレの視野は狭い。だから、いろいろなものを見たいと思った」
「ふーん、そっかぁ。……それもホントだと思うんだけど、なんとなく俺にはさ、自分のことを知ろうとしてたんじゃねぇかなって思ったんだよな。お前、記憶なくしたって言ってたじゃん」

「あとお前、俺とリィスのこと探してたんじゃねぇ?」
「……っ!」

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【リクくんが復讐者と知った時のプラム】
「お兄ちゃんもね、人を殺しちゃったことがあるの。それを聞いたとき、正直ね、ちょっとだけ怖いって思っちゃった」
「でも、お兄ちゃんはずっと優しいままだった。根っこの部分は昔となにも変わってなかったよ。……プラムはリクくんも同じだと思うの」
「人を殺すのはいけないこと。それはそうだと思う。でも、リクくんも殺したくてお兄ちゃんを殺した(手にかける前なら「殺したい」)わけじゃないんでしょう?」
「なら、大丈夫。リクくんはなにも変わらないよ」


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「デレクさーん、隊室で煙草吸わない方がいいですよー」
「は? いいだろ別に。ダメなんてルールねぇんだし。つかお前だって喫煙者だろフィーノ」
「私は良識ある喫煙者なんです〜」
「ああ? なんだそのオレは非常識みたいな言い方」
「リィスちゃんちょっと嫌がってますよー。てか、未成年組全員ぶっちゃけそんな好きじゃないっしょ?」
「ええ……」
「まぁ……」
「マジかよ……」
「デレクさん、あの、非常〜に言いづらいんですけどカイシさんやフィーノさんみたいに外で吸ってください。隊室がくさいの、すごく嫌です……」
「うわなんかリィスに言われるとショックだわ、ごめん」
「デレクさんさー、女の子から良く思われたいなら最低限のルール弁えた方がいいですよん」
「うるせぇ!! わーったよ、次からは一緒に外に吸いに行くって……」

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kostbar leven(独:尊い命)

「ただいまでーす。はー疲れた、お茶飲みません? 美味しい紅茶手に入ったんですよ〜」
「あ、私淹れますよ」
「リィスちゃんさすがー! ありがとーっ」

「フィーノ、お前珈琲派じゃなかったか? 珍しいな」
「そうなんですけど、この紅茶は前から好きなんですよねー」

「……これ、なんて茶葉だ」
「コストバールレーヴェンだよ。なに、アゼルくん知ってるの?」
「……知ってる味だ」
「そうなんだ? これ滅多に手に入らないんだよね。あんまり紅茶興味ないんだけど、これだけは見つけたら買っちゃうんだ」

「はー、おいし。仲間と一緒に飲むお茶ってさ、なーんかほっとするよね〜。生きてるーって感じ」
「あはは、何ですかそれ」




アゼル宅にて、チェイニーとリィスお邪魔する。帰り際にパールが紅茶を持ってくる。
「あ、そうだ。チェイニーくんとリィスちゃんは紅茶は好き? 珍しい茶葉が手に入ったから、よかったら隊の皆さんでどうかしら?」
「飲む飲む! サンキュー!」
「え、いいんですか? ありがとうございます!」



第一部隊室に戻る
「いただいたお茶、早速飲もっか」

「……これ」
「前にフィーノさんがくれた……」

「……ほっとするわね」
「生きてるって感じだな」
「あはは、ほんとね。……ほんとに……」


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【アゼルがプレフトに入るきっかけ。と思ったけど、もう少しチェイニーやリィスとの再会を劇的に書きたいので要検討…】

「いやーすごいな。見事見事」
「誰だあんた」
「プレフトの人間だよ。それだけ動けるのはなかなかいないな。プレフトに入らない? お前ならすぐ一番上の部隊に入れそうだ」
「興味はない」

アゼル、ヘルの刻印が書か描かれた紙を落とす。

「……この刻印」
「返せ」

紙を奪い取る。

「オレはヘルを追ってる。プレフトに縛られたってメリットは……」
「ヘルをプレフトが追ってると言ったら?」
「……なに」

「ロア様が総裁に就任されてから、大々的にプレフトでヘル、および魔竜討伐に力を入れることになった。もうすぐ組織改変をして魔竜討伐部隊ができるんだよ」
「……」
「プレフトに入れば組織で動くから情報収集もしやすい。一人で追うよりずっと有益だ」

「……次の入隊試験はいつだ」
「来月。締切は一週間後」
「……やってやるよ」

「お前、名前は?」
「アゼル」
「ラストネームは?」
「記憶がないから知らねぇ」
「そうか。ま、大丈夫だろ。この世界にワケアリの奴なんてたくさんいる」

「俺はカイシ・リゲイル。入隊できることを期待してるよ」


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「アゼルあんたね、チェイニーの挑発乗るのやめなさいよ。乗るってことは同レベルよ」
「わかってる、ただ……」
「ただ?」
「わかっててもあいつの挑発かなりムカつかないか……?」
「それは……うん、気持ちはすごーーくわかるわね……」


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「十年前に魔竜が来たでしょ。そこで私の街は壊滅して、弟と一緒に逃げてきた。四年前にヘルだけが来た時も私は敵わなくて、弟は行方不明になっちゃった。ずっと探してるんだけど……案外見つからないもんだね」


「フィーノさんの弟さんは、名前や見た目はどういう方なのですか?」
「フィーノさんのいない任務で私たちが見つけたら情報共有するんで、よかったら教えてもらえませんか?」
「ほんと? リュールくん、リィスちゃん、ありがとう! 名前はブラン、生きてれば君たちより一個上かな。髪と目の色は薄金色で、右半身にはところどころ火傷の痕があるの」
「髪と目、同じ色なんですね。珍しいから見たらすぐわかりそう」
「たぶん同じ見た目の人はほとんどいないと思うから、見かけたら私の弟と思ってくれていいんじゃないかな。壊れてなければ私と同じブレスレットを着けてるはずだよ」
「オッケー、フィーノさん。俺らも探すぜ!」
「チェイニーくん……みんな、本当にありがとね……」

「ね、十年前に魔竜の事件に巻き込まれたんでしょ。だったらアゼルくんの故郷って東寄りの中央か東方なんじゃないの? 探してみなよ」
「街の名前は覚えてない。それに全焼したんだ、仮に復興してたとしても当時の街の面影があるとは限らないだろ。だいたい家族が生きてるか、その街が今もあるかわからねぇよ」
「知るのが怖いの? アゼルくんって意外と臆病なんだね〜」
「おくっ……あんたなぁ!!」
「おいフィーノ、やめとけ」
「死んでたらもうしょうがないって思えるじゃん。宙ぶらりんな感じが一番嫌じゃない?」
「……オレは十年前に大切な人が目の前で傷つけられた記憶はあるし、四年前も大切な人を殺されてる。これで家族が本当に死んでるとわかったら、三度も人の死を経験した気がして、……踏み込み、たくない」
「それはアゼルくんの中で、でしょ。でも亡くなってないかもしれない。家族の何人かは亡くなったかもしれないけど、生きてる人だっているかもしれないよ? 生きてる人に会いたくはないの? 私は探してみる価値、あると思うけどな」
「…………」


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「なんかさーカイシさんって仲間助けることに執着するよねー」
「それっていいことじゃないですか?」
「うん、そうなんだけどさ。もう絶対助からないって人はバッサリ見捨てるんだよね。でも、明らかに助からない可能性の方が高いのに助かる確率が1%でもあればあの手この手尽くして、どんな手使ってでも治療に尽力するの。すごいことなんだけど、その執着心が逆に怖いんだよねぇ」


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「彼氏とか彼女できたら連れて来てよ。君たち仲良いけど絶対その中ではくっつかなさそうだもんねー」

 フィーノがにやにやと笑いながら指を差してくる。リィスはアゼルやチェイニーと幼馴染で仲が良いからか、二人のどちらかと付き合っているのかと周りに誤解されることが多いのだが、フィーノは決してそうではないと見抜いている。へらへらしていながらも相変わらずしっかり人を見ているところは、リィスにとって彼女を尊敬できる理由の一つだ。

「あはは……そうですね、こいつらとは絶対ないですね……」
「そもそも仲良くねぇ」
「こっちにも選ぶ権利あるしな〜」
「あたしもあんたたちとは絶っっっっ対ヤだから!!」

 ほら仲良いじゃねーかとデレクが笑う。そうだ、と何かをひらめいた顔をしたかと思えばフィーノのような悪い笑顔を浮かべた。

「オレらのとこに彼氏彼女連れてきて、本人の前でどこが好きか言わせるのどーよ?」
「デレクさんそれめっちゃいいー! 好きなトコ百個挙げなきゃ帰さないの! 楽しそー!!」
「めんどくせぇな……」
「めんどくせーとは何だめんどくせーとは! ほんっとお前可愛げね〜な〜!」


デレクとフィーノの死後、アゼまどとハヤリスが付き合った後、墓前に連れてくる。

「おい。お望み通り連れてきたぞ」
「好きなトコ、百個でも千個でも挙げられます。だからいくらでも聞いてください。……聞いてくださいよ……約束したじゃないですか……」


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アゼルとデレクの会話の中で
最近昔の記憶のような夢を見るとアゼルがデレクに話した時のデレクの台詞
「今までは一人で旅してたんだろ? ここに入って、毎日いろんな人と会ってるから刺激が多いんじゃねぇか? だから頭が刺激されるんだよ」


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南方任務後、チェイニーに巻き込まれて冷水にぶち込まれて風邪引くアゼルと見舞いに行くデレクの話


「おはようございます。あれ、アゼルは?」
「昨日の冷水に浸かって風邪だってさ」
「え、大変ね、大丈夫かしら。ところで……なんでアゼルと一緒に水浸しになったチェイニーは元気なわけ?」
「いやーほら鍛え方が違うから! アゼルはほーんとヤワだよなー!」
「あれは風邪引かない方がおかしいと思うけど……」
「バカは風邪引かないってほんとなのね」




(……頭がぼーっとする)

コンコン、とドアノッカーを叩く音が聞こえた気がした。ベッドから上体を起こしてぼんやりしていると再度ノックの音がする。

「アゼル、起きてるか? デレクだ、見舞いに来た。体調悪いところ申し訳ねぇんだが、もし出られそうなら開けてくれねぇか?」

「おお、マジで体調悪そうだな……。悪いな、ちょっと上がらせてくれ。お前は寝てるだけでいいから」

「魔法は便利だけど、外傷しか治せないもんな。病気や風邪はどうにもならなくてつらいだろ」

「……手際がいいんだな」
「意外だろー? オレんとこ、親父が病弱でさ。お袋も早くに亡くなっちまって、兄弟もいねぇし昔からずっと看病してたんだ」


「あんたはなんでプレフトに入ったんだ?」
「金のため。親父、長くないんだ。それでも生きたがってるし、オレだって生きてほしい。だから延命のために薬代を稼ぎたい、それだけだ」

「最初は弓しか使えなかったんだよ、オレ。でも魔法覚えりゃ任務の幅が増えて、今よりもっと金を稼げると思って……プレフト目指し始めた辺りだったな、魔法も覚え始めた」
「……なのにあんなに魔法使えるのか」
「意外と努力したんだぜ、オレ」

「第一部隊の奴らは魔竜を倒したくて燃えてる奴らが多いし、そもそもプレフトは人助けしたい奴らばっかりなのに、オレだけ異端だよな」


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「はい、この前撮った写真」
「いらねぇ」
「なんでよ」
「物は増やさない主義だ」
「写真一枚だけじゃない、ほら、捨てちゃだめよ」

 アゼルの手を取って封筒を持たせるとリィスは背を向けすたすたと先へ進んでしまう。おい、と声をかけようとしたが、別の隊の者がリィスに話しかけてそのままどこかへ行ってしまった。はぁ、とため息をついて目線を下ろすと、どうしたらいいかわからない封筒が手の中に残っている。

「……勝手だ」


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「おっじゃましまーす!」
「お邪魔しまーすっ。すごーい、アゼルの家お洒落〜!」
「花すげーな。誰育ててんの?」
「妹」
「妹さん? すごい、こまめにお手入れしてるのねー」

「初めましてー、妹のプラムです。お兄ちゃんがいつもお世話になってますっ」
「プラムちゃん初めまして、リィスです。お花、プラムちゃんが育ててるんでしょ? すごく大事にお世話してるのねー」
「ふふ、ありがとうございますっ。おねーちゃんはすぐ来るんですけど、お母さんまだ仕事から戻ってこなくて……お茶入れるので、座って待っててください!」
「アゼルと全然似てねーな」
「ほっとけ」

「いらっしゃい、待ってたわー。姉のセリアよ、よろしくね」
「リィスです。今日はよろしくお願いします」
「ギャハハハハハ! お前ねーちゃんと顔そっくりじゃん!」
「うるせぇ」

 セリアが自分の顎に手を添え何かを考えながらチェイニーの顔を見上げ、さらに距離を近づけてくる。

「んんん〜〜?」
「へ、え、なに?」
「君どっかで会ったことない? なーんかこの顔見覚えあるのよねー」
「ええ、いつ会ったっけ? なんかの任務?」
「いや、そんな最近じゃなくて、たぶんもう十年以上前……でもそれにしては年齢が……」
「な、何の話?」

パール帰宅

「あ、お母さんおかえりなさい」
「ごめんなさい、仕事でちょっと遅くなっちゃったわ。アゼルのお友達ね、いらっしゃい。今日はゆっくり……」

 振り返ったチェイニーと目が合ったと思いきや、パールは抱えていた紙袋を落としすぐさま駆け寄ってきて肩を掴んだ。

「そんな……生きて、生きてらっしゃったんですか!?」
「はえ? うん、俺生きてるけど……」
「十八年前、ベルナロデアで助けていただいたハーベスターです。オールスターさんですよね?」
「お、俺はオールスターだけど十八年前は生まれてねーよ?」
「え……」
「……母さん、どういうことだ」



「チェイニーくん、さっきはごめんなさい。取り乱しちゃって……」
「や、全然いいんだけどさ、さっきのどういう意味?」
「そうね……だいぶ昔の話になるのだけれど」

「十八年前、わたしと父さんとセリアで南方のベルナロデアへ旅行に行っていたの。そこでボート体験があったから三人で乗ったのだけど……途中で急に波が高くなって、ボートが転覆してしまったのよ」
「あ、私それ覚えてるわ。誰か助けに来てくれたわよね?」
「そう。それがオールスター夫妻……あなたのご両親よ、チェイニーくん」
「え……」

「チェイニーくん、あまりにお父さんそっくりだったから気が動転しちゃって。びっくりさせちゃったわね」
「ああ、だから私も少し見覚えあったのね! 私三歳の頃だったし、そりゃそんなにはっきり覚えてるわけないか」
「そうね、セリアも小さかったものね」

「それがきっかけで仲良くなって、滞在中はすごく良くしてもらったわ。またお会いしたくて、アゼルとプラムが生まれてからもう一度に行ったの」
「そういえば行ったな。オレが四、五歳の時か」
「そう、あの時よ。でも……オールスターさんたちはお亡くなりになっていた。後悔したわ、もっと早く行けていれば良かったのにって……」

「……俺、全然父ちゃんと母ちゃんのこと知らなくて、自分にほんとの親がいたって実感がねぇんだ。だけどせんせいが俺の親代わりみたいなもんだったから、それでもいいかなって思ってた」

「でも、今日アゼルのかーちゃんから話聞けて良かった。……俺の父ちゃんと母ちゃんは、命懸けで人を助けたんだって知れてすげー嬉しい!」
「……ええ、そうよ、あなたの親御さんは本当にすごいことをしてくださったの。あのとき助けてもらわなかったら、わたしたちはみんなこの世にいなかった。アゼルとプラムだって生まれてなかったんだもの。尊い命をつないでくださったのよ」
「…………」
「チェイニーの親御さんがアゼルのお母さんたちを助けたから、あんたもアゼルと会えたのね。そのおかげであたしもアゼルに会えた。……せんせいの元であたしたちが出会えたのは、親御さんのおかげよ」


「そうだわ。チェイニーくん、ご両親のお写真があるの。よかったらもらってくれないかしら?」
「え……いいの?」
「ええ。あなたが持っているのが一番ご両親も喜んでくださるわ」


「この人が……俺の、父ちゃんと母ちゃん……」

 細めた空色の目は愛おしいものを眺めるようにやさしい。

「……感動してるとこ悪いんだけど、ちょっと一言いい?」

 リィスが言うとアゼルも何か言いたげに一瞬リィスの顔を見て、二人が再度チェイニーの両親が写った写真を覗き込む。二人はそろってジト目で写真とチェイニーを見比べた。

「あんたお父さんそっくりね。そのまま小さくしたのが産まれたって感じ」
「マトリョーシカみたいだな」


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「え〜〜〜このバングルかわい〜〜〜!!」
「ありがとうございます〜。こちら魔力を上げる宝石がついてまして、1.5倍とか、人によっては2倍にもなるんですよぉ〜」
「2倍!?」
「使える回数が少なくてお値段もお高いんですけど、効果は保証しますよ〜」
「買います!!」

 すぐさまアゼルがリィスの肩を掴んで動きを止め、その隙にチェイニーがバングルを奪い取る。流れるような、非常に息の合った動きだ。

「やめろ街一つ消し飛ばす気か」
「ねーちゃんごめんこれ返すわ。あいつ破壊神だからさー」
「あらそうですか〜? またのご来店をお待ちしてま〜す!」
「ほら行くぞ」
「ああ〜可愛いバングルが……」


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ゾンビみたいな顔で第一部隊室に入るチェイニー

「なぁ……前同じ隊だった女子たちからアゼルと飯行きたいから声かけてくれって言われたんだけどよォ……なんでお前ばっかり〜!! ずりぃ〜!!!」
「行かねぇって伝えてくれ」
「はぁ!? お前正気か!?」

 デレクの大きな声にリィスは耳を塞ぎながら顔をしかめ、すぐに理解に及ばないといった困惑した表情になる。

「え、なんでデレクさんがキレてるんですか?」
「お前行けよせっかくなんだから!!」
「顔も知らねぇ奴と飯食って何が楽しいんだ」
「あ、あたしも前の隊の子からおんなじことアゼルに伝えてって言われたわよ。どうする?」
「行かねぇ」
「マジかよお前……」
「あはは、アゼルくんほんとこういうの行かないよねー」

 ケラケラと笑うフィーノを横に、デレクはぐぬぬという声が聞こえそうなほど歯を食いしばっている。

「なんで行かないんだ? オレがお前の顔面だったら人並み以上に女遊びしてーなって思うんだが?」
「不特定多数と付き合うことになんのメリットがあるんだよ」
「正論言うのやめてくれ心にクる」

 がっくりを肩を落としていたデレクがアゼルをちらちらと見たあと、目を逸らしながら尋ねる。

「……お前、付き合ったことはあるのか」
「ない」
「勝った! オレは何人もの女子と付き合ったことあるぞ!! どうだフィーノ!!」
「デレクさーん、たぶんアゼルくん入隊してからデレクさんの交際人数の三倍くらいの子からモテてますよー」
「あんたにとっては付き合った人数がステータスなんだな」
「やめろ……やめろ……これ以上オレをいじめるのはやめてくれ……」
「あっはっはっ、ほんとデレクさんいじるの楽しー!」



「アゼルくん、すごいですねぇ」
「見た目もだが、入隊してすぐに第一部隊所属だからな、余計に目立つんだろう。……それとサズ、お前も実は結構似たようなことを言われているぞ」
「ええっ、そうなんですか!?」
「声をかけたくてもおどおどしてしまうから、なかなか誘えないんだそうだ」


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「条件を……出しても、いいですか」
「何かな?」
「ウィールの復興を、最優先でお願いします」
「わかった。約束じゃ。儂もまたあの美しい光の祭典を見たいからの」


🍀


「サズ、こっち治療頼む」

「アゼルくん、は……今回の任務で何回目ですか?」
「二回目」
「それであんなにテキパキ動けるんですか? すごいです……僕なんて二回目の現場では怖くて全然体が動かなくて、散々で……今回第一線に転属になったと思ったら緊張して、うまく動けない自分が情けないです。皆さんはすぐに慣れてかっこよく戦っているのに、僕は慌ててばかりで……これからお役に立てるのか、わからないです……」
「? お前はこの隊の重要なポジションだろ」
「え……」
「他の奴らが怪我しても弓も剣も魔法もこの隊には代わりがいるが、お前ほど回復魔法使えるやつはいない。あのリィスですらな。それにこの隊の仕事が危険だから専属で医療チームの人間をわざわざ引き抜いてきたんだろ。そこに選抜されたんだからもう少し自信持っていいんじゃないか」


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デレクの死後、謝罪しに病弱なデレク父に会いに行く。歳をとってからできた子ども。母は他界、一人っ子

デレク父危篤
「頼む、死ぬな……死なないでくれ……あんたが死んだら、オレは誰に死を償えばいいんだ……」
「知るか、一度人を殺したお前が今更償いだなんて、虫のいい話をするんじゃねぇ……」
「一生プレフトに囚われてろ。それがお前にできる償いだ」
デレク父死


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……長めにお休みもらったら? こんな事情だもん、きっと許可してくれるわよ。休んでもいいし、できる限りご家族の情報集めに行くのもいいと思う
……そうだな


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「ねぇおかあさん。あの人、来週高いところから落ちちゃうの?」
「おとうさん。あのおじさん、海に落ちちゃうのかな」
予知能力のあるエル。魔竜の気配がわかるからと、ロア就任決定後にエルはプレフトへ。


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「俺の血筋の人間は全員クズしかいなかったよ。俺の親も、きっと親戚も」

 言って、煙草を吹かすカイシの顔に家族に対する愛情など感じられなかった。



「リィスのお父様ですね。初めまして、隊長のカイシ・リゲイルと申します」
「初めまして、ディアス・アステリアです。娘がいつもお世話になっております。…………」
「……どうされましたか?」
「いえ、何も」



「どうしたの、お父さん?」
「いやあのカイシさん……どこかで会ったことがある気がするんだが」
「え、どこで? 旅の途中で会ったのかしら」
「いや、もっと前に……」



数ヶ月?後

「カイシさん。ヒース・シュヴァンという方をご存知ですかな?」

 ディアスに聞かれて固まるカイシ、頭に疑問符を浮かべるアゼルチェイニーリィス

「え、せんせいがどしたん?」
「もしかしてカイシさんも、あたしたちと同じでせんせいの教え子ですか?」
「……叔父です」
「え!?」

「ヒース先生にはリィスが大変お世話になりましてね。あるとき写真を撮らせていただいたんですよ。……こちらを」

 手渡された写真を見るカイシ

「ああ、叔父だ……」

「……ヒース先生はとても素晴らしい方でした。子を何よりの宝だと言い、教育に尽力されていた。私はあの方以上の人格者を知りません」

「いつだったか、私にこんな話をしたことがありました。自分には甥がいたと。しかしとてもひどい環境にいたから、助けたくて助けたくて、引き取りたいと兄に直談判したそうですが取り合ってもらえなかった。無理矢理にでも、と思って兄に戦いを挑んだが情けないことに敵わなかったと。そんな生活が一年ほど続いたある日、街を訪れたら街ごとなくなってしまっていて、甥の行方もわからなくなったと言っていました」

「大事な血縁である甥を助けられなかったことが、この世で一番後悔していることだとおっしゃっていましたよ」

頭の中にヒースが父に戦いを挑んでいた記憶がカイシの脳内を駆け巡る。

「そうか……俺の血筋も、捨てたものじゃなかったのか……」


🍀


「エルちゃんはつらかったと思うけど、でもあなたがプレフトにいてくれたお陰でアゼルの行方が掴めたの。本当に、本当にありがとう」


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魔竜を倒した後、デレクとフィーノの墓前に立つアゼル
「あんたたちのお陰だ。……デレクさん、フィーノさん、オレ達をここまで導いてくれて、ありがとうございました」


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