若手社員の育成 | 深見東州(半田晴久)さんの本とその他私の好きなもの

若手社員の育成

まえがきから

「経営者は、絶対に会社を潰してはなりません。経営者には、それだけの大きな社会的責任があるのです。人に相談したいことは山ほどありますが、最終的な判断は、経営者自らが下さなければなりません。そして、毎月の資金繰りや従業員のことでは、常に神経を磨耗するばかり……。その重圧たるやいかばかりか。きっと皆様も、同じ思いでおられることでしょう。そう思うからこそ、筆に力が入り、心を尽くしてきたわけです。」

経営者よ気概を持て―成功する実践経営論/深見 東州
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若手社員の育成で悩んでいます

 これからの時代は、ハイテクノロジーが進んでいけばいくほど、人間のヒューマンなコンタクトであるハイタッチの重要性が高まってくると言えます。つまり、これからは、「ハイテク、ハイタッチ」の時代であり、天下をとっていくのは、「ハイテク、ハイタッチ」両方を兼ね備えた人間なのです。

 インターネットやパソコンといったハイテクは得意でも、ハイタッチの部分が未熟というのでは、これから先、会社を支えていくことはできません。どんなにハイテクが進んでも、やはり「企業は人なり」なのです。

 この大法則を決して忘れてはなりません。今後は、ハイタッチの部分に優れた人材をいかに育てていくかが、企業の死活を握るといっても過言ではないでしょう。

 今の若手社員がキレやすいのは、ゲームやインターネットの影響が多分にあると言われています。ご承知のように、パソコンの世界は日々バージョンアップを繰り返し、それにつれて反応が格段と早くなってきています。インターネットでもアナログ回線からISDN、さらには光ファイバー通信へと飛躍的に通信速度がスピードアップしつつあります。

 パソコンならバージョンアップをしたり、接続方法を変更すれば自分の思ったとおりに動いてくれるでしょうが、いったん高速化し続けるインターネットに慣れてしまうと、何かの事情でアナログ回線を経由したインターネット環境では反応が遅すぎると感じることでしょうし、だからこそ自分の思うようにスムーズ動いてくれることはありません。

 こうしたハイテクのスピードアップに慣らされた人間はどうなるでしょうか。自分の思ったような速さで反応しない人を見ると、ついイライラしてしまうものなのです。しかし、人間はコンピューターのようには簡単にバージョンアップしてくれませんし、キーボードを押すようには動いてくれません。心と言葉と理解と忍耐と行動がなければ動きません。

 時代の流れに遅れないように、ハイテクを追い求めるのは確かに必要なことですが、その反面、ハイテクばかりに目を向けている人は、肝心のハイタッチの部分が、ハイテクに反して劣化してしまうのです。パソコンやインターネットを駆使する若手社員がキレやすいというのも、実はここに原因があると言えます。ハイテクに凝った人間は、その日の気分や感情に左右されて、自分の思うように反応してくれない人に腹を立ててしまいがちです。こういう人間は、当然、人を動かすことなどできないでしょう。将来の幹部候補生としては不適格と言わざるを得ません。

 ですから、会社を将来背負っていく幹部候補社員として適性があるのは、ハイテクの専門技術に優れた人材よりも、人間の感情に訴え、人間の感情を動かすことのできる文学のある人材なのです。スペシャリストではなく、ジェネラリストでなければ会社の舵取りは任せられません。もちろん、先ほども申しましたように、ジェネラリスト兼スペシャリストであるに越したことはありません。しかし、よりどちらが大切かと言えば、繰り返し述べているとおり、ハイタッチのできるジェネラリスなのです。こうした人材を育てることこそが大切なのです。

 将来の幹部を育てようとお考えでしたら、ハイテクの教育を二割程度に抑えて、ハイタッチの教育を八割というようにお考えになられてはいかがでしょうか。

 こういう視点で若手社員を観察し、コミュニケーションを図っていけば、必ず逸材を掘り起こすことができます。逸材を見出すヒントは、高校、大学、社会で、クラブ活動、サークル活動の責任者だった人、生徒会、自治会の責任者だった人、大家族で長男、長女だった人、ボランティアなどで積極的に人のお世話をしていた人などです。

 なお、若手社員が人間関係でトラブルを起こしたり、お得意様からクレームをいただいたりした場合は、人間の心はキーボードを操作した時のように反応してはくれないものなのだということを、その都度、根気よく諭していくことも大切です。

 部下や従業員を動かすには、並大抵の忍耐力ではできません。自分の思うようには人は動いてくれないということを、きちんとわきまえた人でなければ、やはり、人の上には立てないものです。

 いったん人の上に立てば、どんなに鈍い人でも根気よく指導していかなけれけばなりません。ですから、「ハイテク二割、ハイタッチ八割」を心掛けて、素晴らしい人材をお育ていただきたいと思います。そうしていく中で、あなたご自身も人間的に成長していかれることでしょう。ぜひ、頑張ってください。

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