結婚式間近だというのに…
1979年(昭和54)6月、T夫が勤める学校の教員住宅で結婚生活を始めることになった
それに先だって荷物が届いた家に実家の母がやって来た
荷物の整理を手伝いつつ、娘が住むところを見に来たのだった
その晩は母と2人で寝ていたのだが夜中に隣で母が泣きはじめた
何となく日中の様子から此処が気に入らないのは分かっていたが…
「M~!お母さんもう世間体なんかいいから…」
「今からでも結婚やめていいよ」
母はこんな山奥だとは思わなかったらしい
家の窓からは空が見えない!
目の前が山、裏も山…
見上げないと空が見えない
だからと云って泣くことないじゃん
本当に気が滅入ってしまった
布団をかぶって無視しようとしたが、私は布団の中で泣いていた
悲しいのではない!
悔し涙だった
たぶん、明後日が結婚式だった筈
隣の部屋ではT夫が何も知らずに寝ていた
母さん、夜中に泣きながらクドクド言うの図
結婚式では父も母も仏頂面だった
父は熱が出て具合も悪かったらしい
写真を撮るとき
「前列の方は手をグーにして膝の上に置く」様に云われたのに
「そんなことする必要はない!」
と一人だけ頑なに手を開いていた
T夫のご両親には申し訳なかった
母は機嫌の悪さがもろに顔に出ていたし失礼な態度をとっていたと思う
そんな波乱に満ちた結婚式だったが…
五年後T夫は約束通り海を超えて岩手に来てくれた
母は晩年
「最近MよりT夫さんのほうが話しやすい」
と叔母に言ってたそうだ
メデタシメデタシ