それはたぶん、予感だったのかもしれない。

 きっと、恋に堕ちるって。











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 友達に誘われていった合コンの帰り道。

 一緒だった子達は、それぞれ気のあった男の子たちと抜けてっちゃって、私は一人で地下鉄を目指して歩いていた。


 今日はなんだか疲れちゃったな…。


 隣に座った男の子は、私にはよくわからない話で一人盛り上がっちゃってつまんなかった。

 てか、いいなって思う男の子はいなかった。


 私、椎名みく。17歳。

 もともと色素が薄いおかげで、手を加えずともアッシュブラウン系な髪色で、ろくに話さない内から「ギャル」とハンコを押されちゃう見た目があんまり好きじゃない。

 事情を知る友達には「カラー代かかんなくってうらやましい」といわれてから、見た目を気にするのはやめたけど。

 でも、最初から「遊んでるっぽい」と勘違いされるのだけは我慢できない。

 そんなのに反発したせいか、結局「気の強い女」になってしまった。

 本当は、恋もしたこともない奥手女子なんだけどね…。


 初合コンが外れって、なんかむなしい…。

 由真も沙織も抜け駆けしちゃうし。

 どこかお店に入るのも、ひとりじゃな~。


 ひとりでも入れるようなお店を頭に思い浮かべてみても、そこに入る自分を想像して、さらにむなしさが増す。


 やっぱり帰ろっかな。


 自分でも引くくらい大きなため息が出て、キオスクでなにか買って帰ろうと決めたとたん、履きなれてなかったパンプスのヒールが何かに引っかかった。

「ぅわっ」

 女らしくない声の後、ものすごい激痛がひざと手のひらに走る。

「っ、痛ぁ……」

 恥ずかしいやら痛いやらで、完全にパニック状態のまますぐに立ち上がってみたものの、ひざからは大量の血。

 手のひらはズル剥け。

 手に持ってたお気に入りのバッグは、私の手から離れて、先に駅の入り口近くまで行ってしまってた。


 もう~~~~~、サイテーっ!


 ずきずき痛む足は、なかなかいうことを聞いてくれず、バッグが遠い。


 もうヤダ、早く帰りたい。

 でも痛くて動けない。


 泣きそうになりながらバッグまでもう少しのところで、誰かがバッグを拾い上げてしまう。

「あ、それ私のっ」

 この声に振り返った親切な人が、私を見てびっくりした顔をする。


 な、なに?

 転んだできた傷のひどさにドン引きした?

 それとも厄介事に首突っ込んだとか、思っちゃった?


 ちょっとイケメンな彼は、じっと私を見つめてくる。

 切れ長の、意志の強そうな瞳。

 キリッとした眉。

 鼻も、少しふっくらしてそうな唇も、バランスよく配置されてて、まさにドストライク。


 こんな人がさっきの合コンにいたら、もうちょっとがんばったのにな…。


 そう思わされるくらい、彼は私の好みにぴったりの顔立ちで、こういう状況がとてつもなく恥ずかしかった。


 道端で転ぶドジ女って第一印象はナイわ…。


「スミマセン、それ、私のバッグで…」

 とりあえずバッグを返してもらいたくて、改めてバッグの所有者だということをアピールした。

「椎名?」

「え?」

「お前転んだの?」

 なれなれしく名前を呼ばれて、しかも「お前」とか言われた。


 てか、アンタ誰?

 こんなイケメン、知り合いにいないよ。

 いたら狙ってるし。


 記憶の中にある男子の顔を必死に思い出してみても、全然一致しない。

 ぽかんと彼の顔を見上げてると、呆れたようなため息が落ちてくる。

「まさか、クラスメイトの顔忘れたのかよ」


 は?クラスメイト???

 ますます分かんないっ!!!


「…須藤だよっ」

 イケメンはかなりご立腹のご様子。

 それでもかまわず、もう一度記憶を辿り「須藤」くんを探す。


 すどう、須藤?

 私の記憶が正しければ、一人しかいないんですけど。


 恐る恐る、答えがあってるかどうかを確かめる。

「もしかして、クラス委員長の…須藤くん?」

「他に誰かいるか?」

 明らかに怒ってる彼、須藤くんは、普段聞いたこともない声色で質問返しをした。


 だって、私の知ってる須藤くんは、クラス委員長で、頭がよくて、話し方も穏やかで、こんな夜遅くに出会うイメージもなくて、それに見た目だって黒ブチめがねだったし!

 あの黒ブチめがねで、こんなイケメンを隠してるなんて今の今まで知らなかったしっ!


 いろいろ文句みたいな言い訳が脳内を駆け巡ったけど、私の口から出てきた言葉は。

「…ご、ごめんなさいっ」

 須藤くんの顔がものすごく怖くて、泣きそうになりながら、まず謝った。


 委員長ってば、学校にいるときと全然イメージ違いすぎっ!

 いろんな意味で誰か助けてっ!!






【つづく】



presented by mitsuki sakuno