第一話 Ⅱ


「おい…中高生だけのはずなのにガキがいるぞ?」

明日香は周りがしゃべってる声を聞いた。そしてみんながみているほうを見てみると、風紀と同じくらいか風紀よりちょい下かと思うくらいの身長の子。

「あれって絶対小学生だよな?」

ひそひそと噂されているのが聞こえたのか少年はため息をついた。

「小学生の参加がいいなら風紀に頼めばよかった。」

ボソっと明日香がつぶやくと、少年ににらまれた?

すごい小声で言ったのに聞こえたのかと疑問に思っていると少年は口をひらいた。

「オレ、13歳の中1。」

何故、ほかはスルーだったのに明日香には何か言ってきたのか。

それにしても小学生にしかみえない見た目だ。1歳しか差がないとは思えない。

「そーえば、ここの審査あてにならないから帰ったほうがいいよ。大体抽選だから。」

抽選という言葉に明日香は反応した。抽選なら成績が悪い明日香でも審査員審査まで残って10000円もらえるかもしれない。

今日の星座占いで双子座は1位だったし。

「だったらお前も帰れよ、ガキ。」

遠くからこんな声が聞こえてきた。

少年は声のほうをみると笑った。

「オレは帰る必要ないから。馬ー鹿。」

口が悪いというか生意気というか……

自分より年上の人でも敬語を使ったりしないこの少年はおそらくここにいるほとんどの人に嫌われただろう。


「嘘……」

少しは期待していたものの、審査員の審査のとこまで残ってしまった。

そして、あの少年が言っていたことは本当らしく、ただ部屋で待っているだけで呼ばれた。

「もしかするとこのままグループに入ったりしちゃうのかなぁ?ないかぁ!」

少し笑いながら明日香は審査の部屋に入った。

そこには椅子と机と1人の少年。

高校生くらいと思われる人が審査員らしい。

審査員と思われるこの少年はすごいやる気がない。

机の上には大量のお菓子。少年はポッキーを食べている。

普通にかっこいい顔なのに甘いもの好きとは少し驚く。

「……?」

審査員の少年は明日香をみた。まさかばれたのかと、さっと目をそらした。

せっかくここまで来たのにここでばれたらお金がもらえない。

「ごめん!奏、忘れてた!」

その時、勢いよくドアが開いた。いたのはさっきぶつかった…輝?

「この子の紙持ったままだった!ずいぶん正直な子だからさぁ。この子の審査みたいな。」

輝は少年に紙を渡した。

「特技。」

少年は明日香をみて言った。特技を聞かれるとは思わなかったため少し考えた。

「えっと…お菓子作ることとか、運動系です。」

明日香は運動神経抜群だ。柔道、空手などなどがかなり得意。

「奏、この子合格じゃダメ?」

輝が少年に聞いた。

特技を言っただけであんな大勢いた中の1人にえらばれるなんてありえない。

ドッキリ企画かなにかなのか?

「………」

「八坂明日香さん、お金がほしいみたいだけどグループで働かない?10000円以上かせげるよ。」

輝が明日香のすぐそばに来て言った。

何故八坂明日香という名前を知っているのか。明日香は坂野明日としか名乗っていないし紙にも書いていない。

「ちなみに、僕に知らないことはほとんどないよ?応募用紙を出した全員の家まで知ってる。」

軽く怖い。

というか、ばれてしまっているならお金がもらえないんじゃないかと心配になった。

お金がもらえなかったらわざわざ男装までしてここに来た意味がない。

「坂野明日君をラヴァーズのボーカルにするよ。僕は社長の堂川輝。17歳。」

「社長!?」

なんか合格してしまった?

それも驚きだが輝が社長だったとは…

高校生なのに。

「メンバーは繰元奏、結城青葉、僕、そして坂野明日。」

笑顔で輝が言った。なんか色々勝手に決まっちゃっているような…

「でもわ…オレ、音痴で音楽の成績も…」

「君に拒否権はないよ?決定事項だから!」

かなり強引だ。こういう場合喜んでいいのか喜んじゃいけないのかわからない。

「でも選択肢はあげるよ、お金をあきらめて帰るか、グループに入ってお金をかせぐか。」

この二つをだされたら絶対後者を選ぶしかない。

「わ…わかりました!」

でも、グループに入ってお金をかせげるならあまりお金にならないバイトを繰り返すより絶対にいい。

「ちなみに、ここの会場にメンバー全員いたんだけどわかるかな?」

繰元奏と結城青葉という名前の人は知らない。

だけどここの審査員の少年、奏と呼ばれていたような…

明日香は審査員の少年をみた。

「ん、正解!メンバーの繰元奏だよ。16歳の高1。ギター担当!」

輝が紹介したが奏は興味なさそうにお菓子を食べ続けている。

「え、ごーかくしたの!?」

ドアのそばで声が聞こえた。聞いたことある声だ。

それは、小学生と思った子だった。

「結城…青葉?」

「そーだけど。キーボード担当。」

少し思ったことを聞いてみたが、やっぱりメンバーの1人だった。

「よ…よろしく。」

「オレ、女みたいな顔のやつと女が嫌いなの!だからお前なんか嫌いだ!」

すごい生意気だ。年下のくせに。

というか、この子だってかなりの女顔だ。童顔というか…

「…うるさいなぁ、チビ。」

売り言葉買い言葉でついつい思ったことをいうと、青葉はカチンときたのかあっかんべーした。

「馬ー鹿馬ー鹿!オレ頭の悪いやつも嫌いなんだよな!」

「なっ…年下に馬鹿とか言われたくない!」

「オレ8歳のとき東大卒業したけどオレに馬鹿っていえるほどお前は頭いいのか?」

笑いながら青葉が言った。ちなみに明日香は音楽以外の勉強の成績も悪い。

東大なんて嘘だと思いたい。輝に聞こうと輝をみると、

「今回の口喧嘩はアスの負けだね。」

笑って返された。本当らしい。


……こうして?明日香は男装のままラヴァーズというグループに入ることになった。

青葉という少年は東大卒?で生意気で腹立つ、奏という少年は無口だが甘いもの大好き?そして輝は明日香が男装している女だということが分かっている?

謎だらけのメンバーの中、明日香はお金のためだけにグループに入りやっていけるのか?


というか…メンバーの決め方適当だなっ!!


明日香はそう思いながらラヴァーズのボーカルになった……