先日のこと。
ここ数日、プロモーション活動であちらこちらへと足を運んでいたのだが、そのうちの一か所が、かつて僕が通った大学だった。
複雑な気持ち半分、うれしい気持ち半分。素直に喜べないながらも、当時の気持ちを思い出すかのように、僕が学生の頃流行っていたブランド服やらスニーカーやらを引っ張り出し、鏡に映る自分に向って『よし!学生だ・・・』とつぶやきながら玄関を出て車に乗り込んだ。
懐かしい町並み。ちらりほらりと新しいアパートが見え隠れする中、それでもその町並みは、僕が、人生において一番重く、濃い4年間を過ごしたあのころのままで、先ほどの鏡に映った自分と照らし合わせては、『おれもまだまだイケるな・・・』と苦笑した。
それでも、あれから数年。
見慣れた町には、見慣れた友も、見慣れた先輩、後輩も、それから見慣れた自分自身も、そこには姿はなく、入れ替わった新しい世代がまた、かつての僕らのように笑顔で道路いっぱいに戯れているのである。
きっと僕は、変わらないものを見る事で、その時空っていう夢を現実とシンクロさせて、いざなおうとする日々の現実をその夢へと埋め込みたかっただけなのかもしれない。
そう考えれば、大嫌いな【思い出】すら、少しだけだけど、愛しく思えるような気がした。
ともあれ。考えてもみれば、僕が『音楽』という魔力に引き込まれたのも確かその頃のこと。それと同時に、その世界へ引き込まれれば引き込まれるだけ、僕は人間という存在をどんどん遠ざけるようにしていた。
それが例え、一番大切にすべき存在だったとしても、その魔法に狂ったようにのめりこんでいた僕にはもはや気付くすべはなく、毎日のように無断外泊、朝帰りを繰り返しては延々と、音楽の友とただひたすら、楽器に触れていた。
あれから数年。そんな今も僕は音楽をしている。
形は変われど、その根底にあるものっていうのは実は何も変わる事などなくて、むしろその先にあるものが何であるのかってのに固執するようになった。
人間は、形よりも結果を求める。求めれば求めるほどに『高い場所』というのがどんなものであるのかがわからなくなって、時には悶えて、時には飲めもしないアルコールを喉の奥に流し込んでは、その日常を今もなお現実から遠ざけようとしていた。
気がつけばスケジュールの山。
ひとつ片付けばまた新たな物が一つ積み重なっている事を、幸せな事だって思えていた価値観はいつしか消え、今では『幸せな時間は??』と聞かれたら、迷わず『布団にもぐっている時間』と答えるほどに、眠る時間がなくなった。
そんな昨日は仙台でのライブ。AM3時、打ち上げ終了。
AM4時、帰宅。結局1時間半程仮眠を取って、5時半、起床。
6時には、仕事先へと車を走らさなければならない。
眠ったのかどうかもわからぬまま、開き切らない目をこすりながら暗い茶の間へおりると、昨夜の夕飯の、おそらく僕の分であろう一人分の食事が食卓へと無造作に置かれていて、妙に家族へ申し訳ない気持ちで胸が詰まる。
そういえば、自宅暮しにもかかわらず、連日の夜の仕事、夜のリハーサル、ライブ、打ち上げ、仕事の繰り返しで、一月中盤も過ぎると、ほぼ毎日のような外泊、朝帰りで、家族と顔すら合わせる暇がない始末。
別に家族仲が悪いわけでもないのに自分からその家族を遠ざける事に、心から罪悪感を感じながら、今日という寝不足な一日は始まった。
おそらくそれでも、いつ、ふと帰り、『腹が減った』と騒ぎ出すかもわからぬ馬鹿息子な僕へ、我が家の母は、それでも毎日のようにしっかりと僕の分の夕飯も支度しては、翌朝、手付かずのそれをいったいどんな気持ちで残飯と共に捨てていたのだろう。
一ヶ月ぶりの母の味は、冷え切ったみそ汁と肉じゃがでさえも、コンビニの温めたおにぎりや、あるいはファミレスのカルボナーラよりもはるかに温かいのだから実に不思議だ。
ようやく明るくなりだした東の空が、オレンジ色に輝き出す。
静けさの中、再び動き出した町並み。
沢山の、人の温かさに触れていたのは数時間前。
仙台マカナというステージの上で、頭が真っ白になるくらいに騒いでいた自分など嘘のように、当たり前の日常へと溶け込んでいく自分に、ふと、疑問を抱いていた。
本当の自分とは、月数回の、僅かなステージ上の自分であり、日常の自分の大半は、きっと何かに常に気を使っていたり、何かに動かされていたりと、演じた自分だったのではないか?って。
だからこそ、そんな自分を引き出してくれる音楽に。その音楽を通して出会った人達に。
あらためて感謝の気持ちが沸き上がり、朝空が昨夜のオープニングの照明とシンクロする。
こうやって流れゆくように、止まらないように、何事もなかったかのように過ぎ行く毎日の中で、僕らは何度生まれ変わるのだろう?
その事すら気付かずに通りすぎるからこそ、紛れも無く『日常』であり、そんな『日常』だからこそ、僕らは生きてるって言えるのかもしれない。
そんな日常の中で、僕らはいつも『何か』を待っていて…
いくら待っていても、なにもない日常に待ちくたびれて、再び空を仰ぐ。
涙で滲んだ空の色が、気持ちをそっと映し出すようで、恐怖する。
それでも明日になれば、こんな気持ちでさえ…
いつも通りの日々へと、きっと溶け込んでいくんだ。
そんな事をずっと考えながら過ごした一日。
まだ暗いうちに自宅をでて…
再び空が暗くなった頃に帰る我が家。
久しぶりの、ごく一般的な活動時間に帰宅。
でも…
結局はすぐに布団にもぐり、またこんなおかしな時間に活動を始めている、そんな僕の、憂鬱で、素晴らしく素敵な日々。
それでも、最大限の感謝を父と母へ。
心から、どうもありがとう。

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