コロナの予後がすっきりしない。

とはいえ発症して3週間なので、後遺症と言うにはまだ期間が短いが、動けばすぐ疲れるし、背中や腰が重怠くなってしまう。


コブタの訪問歯科診療、どうしよう。

診療所に電話して、付き添いなしで対応してもらうことは不可能ではない。

ギリギリまで迷ったが、姉からのLINEを見てやはり行くことにした。


精神科の主治医の見立てと姉の観察によると、コブタの病状はそれなりに進んでいて、今まで中等度だったのが既に重度になってきているそう。

主治医曰く、道具の使い方もかなりわからなくなっているので、長谷川式スケールの点数も重度の範囲に入っているはずで、本人も困ることが多くなっているに違いなく、大好きな散歩に出かけたら帰って来られないのではないかと心配されていた。


午前中の空模様は出かける気力を奪う風雨だったが、昼前に雨は小降りになり、実家の最寄駅に着いてカフェで小腹を満たすうちに、初秋を思わせる涼やかな風が吹いてきた。


今年は蝉が少ないけれど、周囲に雑木林が広がる実家近くは期待を裏切らず蝉時雨。

実家に到着し、いつも通りインターホンを鳴らす。

暫く待つと、ここでもやはり期待通り、警戒心丸出しのコブタの尖った声が「どちらさまですか‼️プンプン


「ミサトよーーんぶちゅー

「…あら爆笑


ドアを開けてくれたコブタはいつもと同じ。

「元気?」

「うん、元気よ」


良かった。まだ末娘を忘れていない照れ


これから歯科診療なので、早速歯を磨いてもらう。

洗面所へ向かうコブタを横目に私は荷物を置きにリビングへ。

すると何やらブツブツ言っているコブタの声。


「どうしたの?大丈夫?」

「ううん、大丈夫じゃない。よくわからないんだもん」


そうか。歯の磨き方を忘れちゃったかな。


「…うん、それでいいのよ。歯ブラシに歯磨き粉を付けるの。蓋を開けて。ここに少ーし付けて。そう、そのくらいね。蓋をしてここに置いてね」

「これでいいの?」

「うん、大丈夫ニコニコ


かくして歯を磨き始めるコブタ。

磨きながらも何かもぐもぐ言ってる。

なんだかホントに小動物(大動物⁉️笑)みたい笑い泣き


「何か困ってる?」

「うん、わかんないの」

「こっちの、右の上のところをよーく磨いてね。いつも歯医者さんにお薬入れていただいてるからね」

「うん」


水を出そうと考えているっぽいので手伝う。歯ブラシを洗いうがいをする。

コップを差し出せばちゃんとうがいすることはできる。歯ブラシも何度もしっかり洗って仕舞えた。

姉がわかりやすいように整理してくれているので、動作のきっかけは掴めている。


ちゃんと磨けたかは知らないけど笑い泣きとりあえずは歯を磨いたように見えて準備完了。

「あーーやれやれ‼︎」

とソファにドサッと座るコブタ。いっぱい考えてわからなくて不安になるから、一つ一つの動作が余計に疲れるのね。


髪を流行りのショートカットにしてもらっていて

可愛いから一緒に写真を撮る爆笑

スマホを構えると


「よく見えない。なんなの?」

「ここがカメラのレンズ。ここを見るのよ」

「これがアタシ?」(娘の私を指差す)

「それはアタシよ!!

「ええええーー‼︎こっちの方が可愛いのにいい‼️」

「アナタのムスメよ、可愛くて良かったねー」

「残念だわーショボーン

話を聞けってば…笑い泣き


何枚か撮ると

「見せて見せて爆笑ラブラブ

と言うので、拡大して一緒に見る。

するとやはり

「うーーーん。こっち(娘)が良かったえー


ホントにコブタ、可笑しすぎる笑い泣き

「大丈夫。こっち(アタクシ)も30年後にはこう(コブタ)なるからゲラゲラ

「そうなのかしらーー」

「そうよ。でも私はお父さんに似てるからちょっと違うかな」

「あっ、お父さん!あの人どこ行ったのよ?」

「何年か前に死んじゃったわよ」

「そうかーー。死んじゃったのかあ。残念だわー」

「生きてたら楽しかったのにね」

「早く死にすぎだプンプン

「そうでもない。平均寿命真顔


まさか父も、自分の妻と娘がこんな会話をするようになるとは思わなかったであろう。


そんな他愛のない会話をしながら歯医者さんの来訪を待ち、その後無事に楽しく?歯科診療を終えた。


今日は診療中にうがいも問題なく出来たし先生のお話しも理解できていた。帰り際、私だけ外に出て先生と助手さんにコブタの病状の進行を伝える。

先生も助手さんもまだお若いのに申し訳ないと思いつつ、こういう場面に頻繁に居あわせる人はそういう宿命なんだろうなと思う。

同じように生きていても、生き死にに関係することにはあまり縁がなく人の面倒をそれほど見ずに済む人もたくさんいる。

どちらがどうではなく、これはきっとその人に課された宿題なのだと思う。


家に入り、ピアノを開けて童謡を弾く。

大喜びで歌うコブタ照れ

歌、上手くなってない⁉️びっくり

すごく伸び伸びした声…

認知症の進行により思い切り良く息を吐けるようになったのか⁉️(エビデンスはない)

難しいことを考えなくなり、つかえが取れたのか?

いや逆か。いつもわからなくて不安でいっぱいだから、懐かしい音楽が流れて自然に歌えて不安を忘れるのかも。

それほど歌うことがコブタの気持ちを解放してるのか。歌、すごいぞ。

歌詞はよく覚えてるし思い出せるし歌える。大したもんだゲラゲラゲラゲラゲラゲラ


せっかくノッてきたのに、今日はあまり時間がない。

バスの時間まで20分ほど。

もっと一緒に歌っていたいけど、今日は義母に頼まれたパンや食べられそうなおかず等を、夕方6時までには買って帰らなければならない。

ああ身体が二つ欲しい。


帰るね、とコブタに言うと

「え⁉️もう?」

「ごめんね、バスの時間。また来るね」

「そうかあ。寂しいなあ。せっかく楽しかったのにショボーン


私も寂しい。

いつも以上にぎうぎうハグして玄関を出る。

「家の前の道路、車がたくさん通るようになって危ないから、今日はもう外に出ないでね。ピアノ弾いたり高校野球観たりしておうちにいてね、私が出たらすぐに鍵かけてね」

「うん、わかった‼︎爆笑


そして今日は私の言う通り、すぐに鍵をかけた。今までのように玄関の外まで出て、見えなくなるまで手を振り見送ってくれることはなく。


病気の進行は初めからわかっていることで、覚悟はできている。でも、間違いなく残りの時間が減っていることを示されるのは辛い。


でも、自宅に帰れば(たぶん)私を待ってくれている義母がいる。へこたれている場合ではないのだ。

義母の好きそうなものを買って帰ろう。


あっちもこっちも。これが私の宿題なんだろうな。

夏休みの宿題、いつもテキトーにやっていた罰だ笑い泣き


化粧なし、髪ボサボサの母娘爆笑