「なんじゃもんじゃ江戸や亭」落語浪曲会 | みつ梅の古今東西かべ新聞

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浪曲、歌舞伎を中心に観劇の感想を書かせて頂いております。
拙い文で恐縮ですが、よろしくお願い申しあげます。


「なんじゃもんじゃ江戸や亭」
~第一回~
◎2019年9月8日(日)・12時50分開演。
●於、神崎町・旧江戸屋

『町内の若い衆』
福の家さいくる
『豆屋』
福の家伝助
『真田小僧(上)』
鶯春亭梅八
『千両みかん』
墨亭右柳
~仲入り~
『船徳』
たちばな家半志楼
『真柄のお秀』 
国本はる乃、曲師…澤順子


「実家に寄席を作ったから遊びにおいでよ!」
かねてより親交のある鶯春亭梅八師匠からお誘いを頂き、下総神崎まで出掛けました。
鶯春亭梅八師匠は茨城、千葉を拠点に活動をされている江戸文字の名手であり、セミプロの落語家としても知られています。
梅八師匠の人柄と噺に魅せられ、幾度となく高座に足を運んでいますが、その梅八師匠からのお誘いとあれば、平手造酒よろしく馳せ参じました。


子供の頃から鉄道が好きで、時刻表とにらめっこをしていますが、千葉方面にはこれまで縁がなく、成田線を成田から先に行くのは初めてで、知らない所を訪れるワクワク感で童心に返りました。
神崎町は江戸時代には利根川の水運で栄え、良質な米の産地であることや地下水が醸造に適した水質であるため、江戸時代から300年以上続く日本酒や味噌などの醸造業が盛んな地域であり、近年は発酵食品で町起こしを行っていることでも知られています。
梅八師匠のご実家の江戸屋さんも明治からの歴史があるそうで、寄席として新たな命を吹き込まれました。
本当に懐かしい場所を訪れたようで、親戚の家に遊びに来たような気がしました。


会場に着きますと、ご近所の方が集まって来ておられ、開演が近づくに連れて近在各所はもちろん、東京からもファンを訪れ、開口一番の福の家さいくるさんが高座に上がる頃には、満員となりました。



梅八師匠が率いる福の家一門より、さいくるさんと伝助さんが出演されましたが、丁寧に噺を勤められ、落語への愛情と思いの伝わる良い高座でした。


続いて席亭である梅八師匠が登場、小噺で十分に客席の心を掴んでから、十八番の『真田小僧』へと入って行かれ、知恵者の倅が巧みに親父からお金を巻き上げる所は、大きな笑いを巻き起こしました。梅八師匠の幼なじみやご近所さんも訪れているので、その名前をくすぐりに入れ込み、やんやの大受けでした。


梅八師匠の噺の一番の魅力は、古風な香りがあることで、昔の良き時代の雰囲気があることです。何とも言えない味わいがあり、この味を求めて僕はどこへでも出掛けて参ります。


中トリは東京からの助っ人、墨亭右柳さんで『千両みかん』を掛けられました。
この季節にぴったりのネタです。今では旬に関係なくいつでも食べられるため、食べ物に対する有り難みが薄れている気がすると思いながら、この噺を聴きました。
忠義者の番頭さんが目先の欲にかられて出来心を起こし、みかん三袋を持ってドロンしてしまうサゲに一抹の悲哀を感じました。


仲入りを挟み梅八師匠の盟友であるたちばな家半志楼さんが出演、『船徳』をたっぷりと聴かせてもらいました。
客が若旦那があまり腕の良くない船頭と徐々に気づいて行く過程がおもしろく、近所の人が一人で船を漕ぐ若旦那に心配の声を掛け、恐怖心を煽る所は大笑いをしました。
江戸の風情や船宿の様子も伝わり、江戸を散歩した気分になりました。


トリは梅八師匠の愛娘で、今売り出し中の若手浪曲師、国本はる乃さんが登場。得意の『真柄のお秀』で、客席を魅了しました。
客席には、はる乃さんを子供の頃から知っている方もおられ、浪曲師として成長をした姿を見て感激をされている方もおられました。
お秀の素直で真っ直ぐな人柄が節と啖呵で表され、じわじわと感動が客席を包み込みました。浪曲を初めて聴くというお若い方も感動をされているのがわかり、良い浪曲は万人の心を打つと改めて感じました。
三味線は浪曲師としても活躍をされている澤順子師匠。
先にも書きましたが、神崎町は発酵の里として知られておりますので、はる乃さんにも芸を熟成させて頂き、益々の活躍を期待します。


江戸や亭はかつての船着場に続く商店街の中に位置しており、商店街の活性化にもなると思います。定期的に落語や浪曲の会を持たれるとのことですので、またフラりとお邪魔をさせて頂きたいです。