二兎社『鴎外の怪談』 | みつ梅の古今東西かべ新聞

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浪曲、歌舞伎を中心に観劇の感想を書かせて頂いております。
拙い文で恐縮ですが、よろしくお願い申しあげます。

二兎社公演39『鴎外の怪談』
◎10月2日~26日
◎東京芸術劇場シアターウェスト

◎作・演出…永井愛
◎美術…大田創、◎照明…中川隆一、◎音響…市来邦比古、◎衣裳…竹原典子、他
◎出演…金田明夫、水崎綾女、内田朝陽、佐藤祐基、高柳絢子、大方斐紗子、若松武史

二兎社の『鴎外の怪談』を見ました。
永井愛さんの作品が好きなのと、『金八先生』で見て以来贔屓にしている金田明夫さんがお目当て。

大逆事件を主題に体制側と反体制側、嫁と姑の間に挟まれ苦悩する森鴎外の姿を描く力作。

笑いもあり娯楽作品となっていますが、今の世の中、明治の頃と何も変わっていないように思え、ずんと重いものが背中にのしかかって来ました。

劇中、自分のことだけしか考えていないように見える永井荷風が登場しますが、無関心という形で権力に抵抗しているように思えました。

今は考えることを許される時代にも拘わらず、考えることをせず何も行動をしていないことに後ろめたさを感じます。

権力という亡霊は今も存在し私たちの気づかない所に潜み脅かしていると思います。怪談と付けたことに納得した気がします。

金田さんが複雑な役を見事に演じきり、鴎外の苦悩を体現されていました。巨大な権力へ抵抗を決意する所は全身から気持ちが伝わりました。台詞の抑揚や間合いなど素晴らしかったです。

鴎外の妻の水崎綾女さんも好演で、眼に美しさを感じました。

二兎社の芝居は実力者が揃い、アンサンブルが効いていて隅々まで演出の目が行き届いています。永井愛さんの作品は間違いないです。