ある日、

家の前の斜面を山の方へ約200~300mくらい登っていくと、

辺りが開けて遠くの谷間の向こうにある山など見晴らしが良くなる。

その見晴らしの良い畑の横の道を、

家の方へ降りていこうとしたとき、

突然みつるの周りの景色が光輝き、

全てが温かい光に包まれた。

するとみつるは、

「え~、これが天国かぁ」

というような不思議な感覚の中で、

「何て気持ちいいんだろ」という思いが込み上げてきた。

しかし、

それはみつるには長く感じたが実際には数分くらいの出来事ではなかったかと思う。

それから数日が過ぎたある日、

同じような場所から、

遠くの山並みを眺めていた時の事。

遠くから飛行機の音が聞こえるが、

空を見上げても飛行機は飛んでいない。

それなのに音だけは近づいてくる。

というか、

みつるの右方向の山影から聞こえる。

すると、

遠くの下の方の山影から突然、

飛行機が現れて谷間に沿って熊本方面へ飛んでいった。

それを見たみつるは、

「えーっ!? なんであんなところを? 墜落かな?」

それまでみつるは、

空を飛ぶ飛行機を見上げるだけだったので、

まさか自分よりも低いところにある山間を飛行機が飛ぶなんて思ってもいなかった。

その不思議な眺め、

夢でもないのに、

何で自分よりも低い所を飛行機が飛んでいたぁ~?

しかしその後も、

飛行機が墜落する音も聞こえなかったし、

そのような話もニュースも無かったので、

長年、その事は不思議な出来事として心にしまっていた。

しかしその真実が後に明らかになるとは、

その日までみつるは知るよしも無かったのである。

それは、

10代後半になったみつるが、

佐世保の海上自衛隊から帰宅した日の事だった。

テレビニュースを観ていると、

「昨日、自衛隊の小型機が日田市で電線に引っ掛かり墜落、搭乗の二人は即死・・・」

というのがあり、驚くと同時に、

「何で電線に?」と不思議に思ったが、

自宅から近いこともあり、

現場へ行ってみると、

機体などは全て片付けられていたが、

焦げた草木や、折れた木の枝など、

事故の凄まじさを目前にして改めて驚いた。

そしてその現場から見上げると、

確かに上の方に高圧電線が山からや山へと張られているのが見えた。

そしてみつるは、

この事故がきっかけで、

小学生のときに見た、

山間を飛ぶ飛行機の真実が分かった。

つまり、

福岡方面から日田市を抜けて、

みつるの住んでいた田舎の山間を通り熊本へ抜けるのが、

自衛隊の飛行訓練コースになっていたのだ。

謎は解けたが、

このときみつるは、改めて飛行機事故の恐ろしさも感じたものである。

ーーーーーーーーー 続く ーーーーーーーーー